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2005年10月31日 (月)

ことばがうまれる

息子ちょび、もうすぐ1さい9かげつ。
ここのところ、どんどん、ことばがうまれはじめた。

たぶんこっちが言ってることはもうずいぶんよく理解している。
自分のきもちがまだことばにできないから、
ときどき、爆発して荒れる。

でも、自分が発したことばが、相手に響いて反応があるということが、
たまらなくたのしいことだと、気がついたらしい。

「あ、ばふ!ばふら〜」
(息子は電車バスフェチ)
というのはずいぶん前からしゃべっていた。
最近では、その場面にふさわしいことばを、ふさわしい音色でしゃべるという高等技術を身につけた。

「おっちった」
(自分でわざと落とした場合にも使用)
「あーあ」
(主に母親がしくじったときに使用)
「あ、しゅげー!」
(何か誉めてほしい時にことさら自慢げに使用)

「あっち!」
とうとう、ことばには人を動かす力があることを発見した。

そしてさらに語彙を増やすべく、問う日々が続く。
「あ!」(と、ミニカーを差し出す)
「黄色いバスね」
「あ!」
「青いブーブー」
「あ!」
「きゅーきゅーしゃ」
「あ!」
「緑のブーブー」
「あ!」
「赤いバス」
「あ!」
「きゅーきゅーしゃ」
「あ!」
「青いブーブね」
「あ!」
(以下エンドレス)

そしてときどき
「・・・あか・・・」
「くーくーさ」
とつぶやいては、反復練習している。

先日テレビから「かーちゃん!」ときこえたとき、
ぱっと顔をあげ、わたしを指差した。
「そう、かーちゃんよ」
意味と、気持ちが火花のように通じ合って、
泣きそうになりながら笑った。ちょびも笑った。

毎日毎日が、毎日続く。
うっかりしてたけど、こんだけ育ってた。

写真を撮って、つくづく眺めると、もうあかちゃんじゃないなあ。
いつのまにか、こども、になっていた。

さあ、ことばが彼の中で爆発しますよ。
どーんとこい。
口数では負けませんよ、かーちゃんは。
あああ、楽しみだー。

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2005年10月23日 (日)

端正フェチ

人は見た目だ。

まったく初対面で、何の信頼もない場合、なおの事そうだ。

顔もそうだが、なぜその服を着ているのか、なぜそれを持っているのか、
そこにいちいち理由が必要となる。
それをチョイスするのはすべて自分だからだ。

いつだったか、とある書店に尋ねてきた、世界文化社の編集者らしき
男性の印象がものすごく強い。
一見地味で普通のスーツ姿なのだが、すべてが上質だった。
生地、仕立て、靴、コート、鞄、
しっとりと、その人の品性を語っていた。ように見えた。

仕事をはじめた頃、憧れ半分やっかみ半分だったデキる先輩(男性)
も、これまたおしゃれだった。

今、自分の仕事のスタンスを考える日々において、
そういう人々の姿が目に浮かんでは消える。

ということで、打ち合わせのついでに洋服屋に寄り、
5分で試着してスーツやらなんやらをざっくり買った。
あんなに似合う服が見つからなくて、いくら探しても欲しいものが
なかったのがウソのよう。
自分をどう見せたいかが分かる仕事服なぞ、その売り場の
もう、これしかないでしょう、とすぐ決まる。

と、

そこであるひとに釘付けになった。

それは、かつて息子とチャリでぶーらぶら帰る途中、
信号待ちで見愡れた端正な後ろ姿の女性、その人だった。

えー、似た人なんじゃないのう?わたしもそう思った。
が、あの肩のライン、髪、そしてピンクのベロアのバッグ、
間違いない。

どきどきしながらまわりこんで、ちらっとお顔を拝見。

きれいだ。
目に、力がある。ただものじゃない。
側には、姉か、友達か、これまたものすごく美しい方が。
ほほえみながらフロアをゆっくりと見て歩いている。

あああ、きれいな人だなあああ。

気づかれないようにすーっとついてゆく。

と!

彼女は丈の短いぴったりとしたインナーを着ていたのだが、
ローライズのジーンズ(若者はデニムという)との隙間の肌に、

タトゥ−がくっきりと見えるではないか!!

その柄はペルシャの壁画のようなエキゾチックな模様で、
濃い青紋が腰一面に広がっている。

にわかに、自分が清吉になったようで愕然とした。

谷崎潤一郎は、彫り物師である清吉に、うつくしいかかとをもつ
少女の背中に女郎蜘蛛を彫らせ、彫りあがり完成した魔性に、
自ら喰われる運命を負わせた。

喰われた・・・・

いくらスーツを新調しても、わたしにはあのオーラは出せない。


ま、出す必要もないのだが。

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2005年10月12日 (水)

へこんではずんで

いろんなことがめまぐるしくあった。

きりきりきりきり忙しくて荒んでオットとケンカした。
原因はササイなことだ。
謝る気もおきなくて、無言冷戦の日々が続いた。

帰宅後なきわめく息子に大声をあげた。
びっくりして引き付けたように泣く子どもを見て、
いったいわたしはなにをしてるんだろう、と思った。

なにはさておき、家族が一番、なんてわかったつもりでいたけど、
このザマだ。

このイライラの原因はなんだろう?
心に深くダイブして、感じるセンサーに耳を澄ます。

ああ、いやだったんだねえ。
悪口をいうひとが、狭い了見が、志の低さが、自分勝手が、
クオリティの低さが、さもしさが、独断が、
それを言い出せない自分が。

それを、家族に甘えて当たっていた、
そんな自分もいやだったんだねえ。

3連休、ほんとうにゆっくりした。
自宅のパソコンの電源ケーブルが断線し、つかえなくなった。
おかげさまで、自宅で一切仕事ができなかった。
スケジュールはおそろしいけど、めをつむる。

土曜日は、息子の運動会だった。
1さい8かげつの息子が、団体競技に、参加して走っているのである。
かーちゃんは猛烈に泣けてきた。
しらないうちに、こんなにおおきくなって、たくましくなって。
かーちゃんとは明後日の方向にダッシュしてったけど、
よいよい。よくできました。
息子に、やさしくしようとおもった。

日曜日は、新築のお宅におよばれ。
そこは豪邸ではなかったが、むしろ彼らは豪邸なぞ望んでおらず、
いかに自分たちが心地よく住まえるか、
それだけに心を砕いた傑作であった。
知らないということは依存を産む。
だから彼らは依存せず、全て知り選択し自分で手を動かし、
生活のすべてをととのえていくのである。

そこでいただいたごはんがまた、素晴らしかった。
「ほんの手抜き料理で」と彼女は謙遜するけれど、
どれもきちんとつくられていて、あたたかで、ほんとにうまかった。
作り方を聞いたけれども、再現できるんかな。
短時間でいかに品数と栄養を確保するかに腐心してきた
わたしの料理なんかとおおもとがちがう。
おいしいことが最重要課題なのだから。
きちんとつくることの大切さを改めて思った。

月曜日、祝日。きょうはオットと一緒の休みだ。
冷戦もすこし弛んできたので、家族でドライブに行くことにした。
かーちゃん昨日のお宅で受けた刺激でもって、お弁当をこさえた。
香茸の炊き込みごはんでおにぎり。
甘くてお酒のきいた出汁巻きたまご。
砂糖醤油に付け込んだお肉を網で焼いて、
えのきのベーコン巻きに、鶏の磯辺焼き、
あらら、うちの母の弁当そっくり。茶色くて砂漠のような弁当だ。
あわててミニトマトやら青菜で彩りを加えて完成。
うーん、料理3級レベルのわたしにしてはま、こんなもんでしょう。

その弁当を持って向かった先は、広島市森林公園。
温品バイパスの終点から登っていったところにある。車で約20分。
は?ドライブ??
しかし行ってみると案外山の上だし、程々に整備されて緑が美しく、
子連れで遊ぶのにはもってこいの場所だった。
息子は歓声をあげて少々の坂道もたかたかと走る。
木陰の芝生に敷物をしいて、お弁当をひろげる。
おいしいねー、すずしいねー、きもちいいねー。
気が付けばみんな笑顔だった。
これが、一番大事なことだった。
取り戻すことができて、ほんとうによかった。

休日を、こころゆくまで楽しんだ3日間。


するとどうだろう。新しい力が芽生えた。
もう、恐いものがなくなったのだ。
戦える。反論できる。却下できる。異義を唱えられる。
すると曇っていたわたしの心が晴れた。

ああ、ここから新しいものがうまれる。
そう予感できる瞬間があった。

すこしずつ、すこしずつ、叶えてゆく。
それは笑い飛ばす力が、叶えてくれるのだ。

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2005年10月 2日 (日)

日々

夜7時過すぎの保育園。
お兄ちゃんたちの輪の中で遊ぶ息子はおおあくびをしている。
ただいまーと声をかける。
「あ、ちょびくん、ママよー」の声にパッと顔をあげ、
くるっとこちらを向くと、ぱあああっと目を輝かして
両手をあげてダッシュしてくる。
ただいまーと、だきしめる。
手をのばして首に巻きついて、ぎゅうってする。
今日一日の様子を先生と話していると、
ほっぺやらくちに、むちゅ〜っとチューをしてくれる。
さー、くっく履いて帰ろう。

子載せチャリのハンドルのまん中の椅子に座らせて、
ちんたらこいで帰る。
いまは、夜風が心地いい。
さー、かえろーと言いながら走ると、
頭の中できりきり渦を巻いていた仕事のことが
ふーっとゆるんでいく。今日が、おわったんだなー。

「あ、ばふー!」
息子はバスと電車を愛している。
のばせるだけ腕をのばして指をさす。
バスに抜かれると機嫌がわるい。
なのでバスと弊走するときはかーちゃん必死でこぐ。

かーちゃんは道々の風俗を楽しむ。
夜の八丁堀、いろんな人とすれちがう。
信号待ちではおねえちゃんをチェックする。
後ろ姿が、惚れ惚れするくらいきれいな人がいた。
淡いピンク色のベロアの鞄がとても似合っている。
きゅっと束ねた髪が白い肩にすっとかかっていて、
端正な筋肉でできている美しい人だった。

家に帰りつけば、たちまちちょびは甘ったれちょびになる。
かーちゃん鞄を置くのも待てない!ちち!!
ということでまっ先にちちやり。
落ち着いた頃、ごはんを作る。
落ち着いたのはほんの一瞬で、もうハラ減って眠くて、
身悶えしながらえいえい言う。
まんまイスに座らせて、ごはんを食べさせる。
日中ロケット滑り台を死ぬほど滑って、
青い車に死ぬほど乗って、
その分のカロリーを補う勢いでよく食べる。
食後、宝箱をひっくりかえす。ミニカーの山を崩して遊ぶ。
お風呂が入ったらぼちゃぼちゃに入る。
機嫌がよい日にはボール遊びして、
機嫌が悪い日には押さえ付けながら、頭からお湯ぶっかける。
風呂から上がって、ふりちんで逃げ回って、
おさえつけて、オムツはかせて、歯磨きしようとして
逃げられて、ワンワンも磨くよ〜などとぬいぐるみも総動員して
なんとか歯を磨いて、麦茶のませて、
さー、ねんねしようねーと、ベッドに連れていく。
はい、ごろんして、ごろりん。
おっぱいちゅうちゅうしながら、げへへーと笑ったりする。
ちょーびは、いいこだね〜
ちょーびは、かわいいね〜
ちょーびは、すてきです〜
・・・・


眠りの神さまがそっとやってきて、ちょびは眠りに落ちる。

くわえたまんまのおっぱいをはずして、静かに部屋を出る。

オットがそっと帰ってくる。

二人分のごはんをつくって、ビールを飲む。

少しの果物やアイスクリームの甘味にくつろぎながら、
ミニカーの山を片付け、明日の保育園の準備をする。
オムツに名前をかいて、タオル、スタイ、連絡ノート・・・

横になって本をひらけば、そこはちょうどよい枕になって、
オットに揺り起こされて、ベッドに這ってゆく。

ちょびのぐずぐず泣く声で目がさめて、ちち。
明け方、セルフサービスで、ちち。

そして朝がきて、一日がまた始まる。

そんな日々だ。

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