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2005年10月23日 (日)

端正フェチ

人は見た目だ。

まったく初対面で、何の信頼もない場合、なおの事そうだ。

顔もそうだが、なぜその服を着ているのか、なぜそれを持っているのか、
そこにいちいち理由が必要となる。
それをチョイスするのはすべて自分だからだ。

いつだったか、とある書店に尋ねてきた、世界文化社の編集者らしき
男性の印象がものすごく強い。
一見地味で普通のスーツ姿なのだが、すべてが上質だった。
生地、仕立て、靴、コート、鞄、
しっとりと、その人の品性を語っていた。ように見えた。

仕事をはじめた頃、憧れ半分やっかみ半分だったデキる先輩(男性)
も、これまたおしゃれだった。

今、自分の仕事のスタンスを考える日々において、
そういう人々の姿が目に浮かんでは消える。

ということで、打ち合わせのついでに洋服屋に寄り、
5分で試着してスーツやらなんやらをざっくり買った。
あんなに似合う服が見つからなくて、いくら探しても欲しいものが
なかったのがウソのよう。
自分をどう見せたいかが分かる仕事服なぞ、その売り場の
もう、これしかないでしょう、とすぐ決まる。

と、

そこであるひとに釘付けになった。

それは、かつて息子とチャリでぶーらぶら帰る途中、
信号待ちで見愡れた端正な後ろ姿の女性、その人だった。

えー、似た人なんじゃないのう?わたしもそう思った。
が、あの肩のライン、髪、そしてピンクのベロアのバッグ、
間違いない。

どきどきしながらまわりこんで、ちらっとお顔を拝見。

きれいだ。
目に、力がある。ただものじゃない。
側には、姉か、友達か、これまたものすごく美しい方が。
ほほえみながらフロアをゆっくりと見て歩いている。

あああ、きれいな人だなあああ。

気づかれないようにすーっとついてゆく。

と!

彼女は丈の短いぴったりとしたインナーを着ていたのだが、
ローライズのジーンズ(若者はデニムという)との隙間の肌に、

タトゥ−がくっきりと見えるではないか!!

その柄はペルシャの壁画のようなエキゾチックな模様で、
濃い青紋が腰一面に広がっている。

にわかに、自分が清吉になったようで愕然とした。

谷崎潤一郎は、彫り物師である清吉に、うつくしいかかとをもつ
少女の背中に女郎蜘蛛を彫らせ、彫りあがり完成した魔性に、
自ら喰われる運命を負わせた。

喰われた・・・・

いくらスーツを新調しても、わたしにはあのオーラは出せない。


ま、出す必要もないのだが。

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コメント

先日、電車に乗った時のこと。

立っていると、目の前には綺麗な女性がウトウトとしている。

ちょっと口が開き気味だったのだけど、開いた口から光に反射するものが見えた。

飴かなとも思ったが、それは黒真珠の舌ピアスで目が釘付けになりますた。。。

何だか見てはならないものを見たようなフシギな気分。

投稿: ぬる | 2005年10月24日 (月) 午後 10時39分

舌ピアスってファッションなんですよね。
なんか見ていても痛そうなだけで綺麗に見えないのは私だけでしょうか・・・。

投稿: ジロー | 2005年10月27日 (木) 午後 06時20分

ぬるちゃんこんばんは。

舌ピ!
エロいな〜そりゃまた。
しかも黒真珠。渋!

お江戸にゃいろんな方がいらっしゃるので
楽しいねえ。

投稿: はなみ | 2005年10月31日 (月) 午前 12時33分

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