うちの夫婦は結婚7年目、
つきあっているときにも、結婚してからも
ほとんどケンカしたことがない。
たぶん、片手で足りる程だと思う。
それは仲がいいから、だけでなく
お互い思ったことをあんまり口にしないから
ケンカにならないんだと思う。
しかしそれは、いいようで悪いことだ。
その日々の不満が澱のように沈んで
心を曇らせる。
そして、今回のように爆発させるのだ。
それは、出張続きで忙しい日のことだった。
オットは休み、息子と1日家にいた。
わたしは炎天下、汗だくで1日中立ち尽くし
長距離運転してくたくただった。
帰ったら、お風呂に入ってごはんたべて、
もうすこーんと眠りたい。明日も早いし。
這うようにして帰宅、
おかえり〜とのんきな顔が2つ出迎える。
ただいま〜とほっとしたのも束の間、
リビングは長男と次男が1日遊び散らかしていて
目も当てられない惨状だった。
片付ける気力もないから、見ないようにして、
お風呂・・・お湯入ってないから入れつつ、
おなかすいたからごはん、と。
食卓の上には食べたまんまの残骸。
これをどけて・・と。テーブル拭いて・・と。
なんか異臭がする、
ごみがあふれてる・・・ので片付けて・・と。
カレーをつくっておいたのだった。
鍋に火をいれつつ、ごはんを・・・
!!!
炊飯器の蓋を開けて絶句。
ごはんが、たった一口分、そこにちんまりとあった。
どーして!!!??
どうしてついだときに全部とらない?
どうして一口分残す?
つーか、
わたしが帰ってきてごはん食べるの知ってて
どうしてご飯炊いといてくれなかったの?!?
疲労が一気に怒りに変わってゆくのが分かった。
サイフをつかみ、
「ごはん、買ってくる」
と言い残してバーンとドアを閉め、
家を飛び出した。
最初コンビニでごはん買ってくるつもりだったけど、
あの家でごはんたべるのが嫌になった。
でも、コンタクトも外し汗まみれでつっかけで
どこで食事するというあてもなく、
怒りに任せてがつがつ歩き、
モスバーガーに飛び込んだ。
ビールが死ぬほど飲みたかったが
仕方なくラッシーを飲んでナンタコスを食べた。
味なんかしなかった。
雑誌を数冊めくって出て、
コンビニで立ち読みした。
読むものがなくなったし、
そろそろお風呂も入ったころだし
家に戻った。
オットが「ごはんは?」
「食べてきた」
「・・・・・」
黙ったまま一人でお風呂に入る。
汗を流してさっぱりしたが、どうしてもすっきりしない。
このままじゃ寝られない。
この怒りをぶつける決意をしてオットをにらみつけ
「話しがある」
「うん、こっちも話しがある」。
ベッドに腰掛けて対峙する。
「疲れて帰ってきて、ごはんよそって出してくれとは
いわない、でもどうしてご飯炊いとくくらいの
思いやりがないの?」
「ご飯よそう時ちょびがぎゃーぎゃー泣いてて
そこまで気が回らなかったんだ、ごめん、
でも、飛び出してってなかなか帰ってこないから
夜の公園でひとり弁当食べてるんじゃないかとか
心配したじゃないか」
以下、犬も喰わない言い争いが続く。
息子はただならぬ気配に、
自分がなんとかしなければと必死で
「んもーかーちゃんダメ!パパちゃんダメ!」
と、ちっちゃい手で口を塞ごうとしたり
ふざけて抱きついたり、大声を上げたり
最後はとうとう泣き出してしまった。
炊飯器にごはん一口、
それだけが問題のすべてではない。
ここ数日、聞こえない「カチン」や
見えない「ムカッ」がお互いあって
それが解決しないままこの時を迎えたのだった。
わたしも相手に不満があったが、
相手もわたしに不満があった。
あのときこう思った、こうだった、だってあれは、
ここぞとばかりに数日分の気持ちを吐き出す。
どっちかが悪いんではなくて、
どっちも悪かったんだ
なんとなくお互いそう気づいて、
その晩はとりあえず、寝ることにした。
息子は泣きながら寝てしまった。
ケンカして改めて気がついたのは、
ああ、甘えてたな、思いやりがなかったな、
ずっとそばにいる人だから
大事にしないといけないのに
ケアを怠っていたな、ということだった。
たぶん、
オットも同じことを感じたんだろう。
翌朝、
どちらからともなく、
おはよう、ごめんね。
気持ちは穏やかだった。
息子は二人の間を行ったり来たりして
パパちゃん!かーちゃん!
うれしそうだった。
ケンカして擦りむいた傷から
新しい気持ちの芽が伸びた。
この人のことが大事だ、
大切にしよう、
好きだ、
そういう思いだ。
そして、言わないで仕舞っておく思いは
何も産まないと
その瞬間に解決しておかないと
後で取り返しのつかないことになると
改めて学んだ。
夫婦、いちばん近くて
だからこそいちばん考えなくてはいけない関係
それでこそ一緒にいる意味があるんだと思う。
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