ちょびの恋
ちょびが恋している。
さいしょのあいては、同じクラスのゆーかちゃんだった。
保育園では産まれた順に整列するのだが、
ゆーかちゃんは、となりの女の子だった。
朝、保育園に連れて行って教室にはいると
もうみんな自分のロッカーの前に座っていて、
ちょびもあわてて自分の椅子に座る。
と、同時にとなりのゆーかちゃんの手を、握る。
「あらちょびくん!いいわねー、なかよし!」
先生もかーちゃんも微笑ましく眺めていた。
それから月日は流れ、
ある晩、一緒にお風呂に入っていたちょびが
湯船の中でうれしそうに告白した。
「今日誰と遊んだの?」
「えとねー・・・さよちゃん♡」
「え?さよちゃん?」
「うん、さぁよ・ちゃん♡」
彼女の名前をつぶやくちょびはもう、くねくねだ。
「なにして遊んだの?」
「えとねー・・・さぁよちゃんがねー、
おべんと、ちゅくってくれたんよぉ〜、
んでね〜〜さぁよ
ゴボゴボゴボ!!!!
くねくねしすぎて足を滑らせ、浴槽に沈んだ。
やっと水から顔を出し、
かっかっとむせる息子を眺めながら思う。
「こいつ女で失敗するタイプだな」。
3さいのお誕生日会はやつの至福の時だったようだ。
「プレゼント、誰からもらたい?」
とマイクをむけられ、
「さよちゃん!!」と絶叫、
保育園全員に向かって高らかに愛の告白をしたらしい。
先生も粋なプレゼントを用意してくれていた。
画用紙で作った写真たてに貼られた2枚の写真。
1枚は、いつもちょびと遊んでる男の子。
もう一枚は、さよちゃんとの2ショットだ。
おすましのさよちゃんと写るちょびの顔、
見事にでれっでれである。ナイスショット。
持って帰って、さよちゃんの面をいそいそと飾るちょび。
ひっくりかえしておくと怒る。
男には興味ないらしい。
さよちゃん熱は一向に冷めず、
日々「きょうのさよちゃん」を話して聞かせてくれる。
ある日迎えに行くと、
「きょうびっくりしたんですよ〜、
ちょびくんお昼寝せずにもごもごしてるなーと思って
布団めくったら、さよちゃんと布団の中で
ひそひそお話ししてたんですよ〜。
なんか、見ちゃいけないもの見た気分でした〜」
!!
3さいでピロートークか!早すぎるわボケ!
「さよちゃんって、どんなかんじの子なんですか」
ハハはやっぱり気になって尋ねる。
「これがけっこうモテモテなんですよ〜。
一見おとなしいんですけど、気に入ったお洋服は
洗濯機から引っ張りだしてでも着る感じの子ですかねぇ〜
芯が強いというか・・・」
ははあ。
またある日、迎えに行くと、
二人で仲良く、積み木遊びをしていた。
「ここ、おうちよ!」「しょうよ!」
「ここ、おふろよ」「しょうよ!」
「あ、ここがおげんかん」「しょうよ!」
言いなりの息子が情けないがしばらく微笑ましく見守る。
ラブラブマイホーム計画もいいがハハはもう帰りたい。
「ちょび〜」
同時に振り返る二人
その目にははっきり
「なんで今来るかなぁ〜〜〜〜〜〜」。
すいません。ですがもう帰りませんか。
「さよちゃん、またね」
「・・・・・・・・・・・・」
くりっとしていながらも鋭いまなざしでじいいっと見る。
ぞくぞくっ・・・
この目、どっかで見たことあるんだが・・・
その晩、心当たりの人物をテレビで見た。
「わかった!!!・・・菊池凛子だ・・・」
菊池凛子が嫌いってわけじゃあないんだけど、
もし菊池凛子が嫁にきたら、かーちゃん太刀打ちできそうにない。
3さいで嫁の心配しても仕方ないが、
どっちにしろ、尻に敷かれるんだろうなあこいつ。
「ねえ、かーちゃんとさよちゃん、どっちが好き?」
「えとねー・・・、かーちゃん!」
こんな気遣いも今のうちだけである。
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コメント
毎度微笑ましく読ませて頂いております。。。
なんだか羨ましいです!
まあ、うちにも大きな子供がおりますが(汗)
投稿: fujikohirota | 2007年5月 3日 (木) 午後 12時12分
fujikoさま!
いやあ、美しい部分の上澄みだけお送りしております。
微笑ましいといえば微笑ましいですが、
まだ人でなしと付き合おうと思うと一筋縄では参りません。
おたくの大きなお子様も育てがいがあるというか・・・
腕白でもいい、たくましく育ってほしい。ということで。
(お江戸から噛み付かれるか!?)
投稿: はなみ | 2007年5月 8日 (火) 午後 06時11分