我が家は温泉好きである。
オットとどこか泊まりに行くといえば必ず温泉がついてまわる。
息子が生まれてしばらく遠のいていたが、
2さいころから復活した。
一泊二泊はなかなかできないので、日帰り温泉に目覚める。
車でちょろっと行って、近辺の野山で思い切り遊んで、ゆっくり温泉につかってすっぴんで帰宅、晩ご飯食べてあとは寝るだけ、というのが非常に心地よい。
そんな「ワンデイ湯治」だが、いつものなじみの温泉ばかりじゃ飽きてくる。オットの温泉選択眼も肥えてきて、「源泉掛け流し」狙いになってきた。
そして、「秘湯」でなくては満足できないカラダになってゆくのであった。
さて今回出かけたのは山口県徳地にある「柚木慈生温泉」。中国自動車道・鹿野からちょっと上がってったところに位置する。
行きは元気なのでなるべく高速を使わないのがポリシー。
ということで2号線をちんたら西へ向かう。
途中昼時、久しぶりに「山賊」に寄って見る。
「山賊」といえば若かりし頃ドライブデートのメッカであった。が、当時つきあっていたのはみな車持たずの貧乏人で縁がなく、今回訪れたのは高校の時親と来て以来だ。
天気がよくて、屋外の緋毛氈のテーブル席で食べる。
息子はうどんをちゅるちゅる啜り、オットとかーちゃんはでっかいムスビにかぶりつく。木漏れ日が気持ちがいい。外で食べると美味しいねえ。
さて帰ろうとしてやはりそこにも罠があった。
「これいる〜〜〜〜これ買って〜〜〜〜」
でた!
最初ダメです!と強硬姿勢にでていたが、かーちゃんソフトクリーム買いにいってる間にパパちゃんが懐柔されていた。「これがいいんだって」・・・だめじゃん。
「おかーさん負けはったね」とレジのおばちゃんがにやり。息子は「かーーーちゃんありがとう!!」満面の笑み。「ダイキャスト激走チームDX」800エン也。日に焼けて色褪せた箱が「やっと買ってもらえた」とほっとしている。
そこからが長い。
2号線は案外混んでいるし、徳山から315号線を一路北へ向かうが行けども行けども山道だ。
「秘湯〜〜〜〜〜」と盛り上がってはみたもののオット睡魔に勝てず運転交代。かーちゃんも眠いが温泉温泉とつぶやきつつひた走る。
みな寡黙になってきたころ
「・・・あれか??・・・」
ついた・・・
P.M.4:00
商店閉まってるし。
入り口ただの民家だし。
それでもけっこう地元の車がたくさん駐車している。
大人2人と3歳児で1,200エン。
「それじゃあとでねー、ゆっくりねー」
パパちゃんとちょびは男湯へ。
それにしてもこう、昭和感ありあり、
トイレもちゃんと「便所」のにおいがする。
脱衣所はそっけない板張り、ロッカーは無料。
ぱぱっと脱いでがらり、と開けると
狭い湯船のふちにぐるり7人くらいのおばちゃんが腰掛けておしゃべりしていた。多いな〜。
見回すと溶けたせっけんしかない。
も一度ロッカーに戻ってシャンプーをとって、
側で服を着ていた湯上がりのおばちゃんに
「あのー、ここ髪洗ってもいいんですか」と聞く。
「ああ、いいよ、みんな洗いようよ」
ほっとして再入場。シャワーが1ケ所しかない。
そこで蛇口をひねるが、延々水しか出ない。
仕方なく水で髪を洗う。仕舞い頃ちょっと温かくなる。
地元のおばちゃんたちはみな顔見知りのようで、
話しに花が咲きまくる。
「キャベツがよーけできてからにねー」
「ちそでジュース作ったらええんよ、色がきれいだけー」
農作物の話し、病院の話し、ご近所の人の消息。
「そんじゃおさきに」と何人か上がってゆく。
さて、いよいよお仲間に・・・
端っこから3そそーーーっとつかってみる。
さっき上がってきたおばちゃんが
「あっつーーーあつい!でも気持ちいい!」とさかんに言っていたのでどんだけ熱いのかと思いきや、案外ぬるい。
湯船はとろんと緑色。涌きだすお湯は無色透明なのだが、すぐに酸化して緑に濁る。とろみたっぷりのお湯は、なんだかいろんなエキスが溶け出してるような気がするが考えないようにする。
ここのお湯は成分がものすごく濃くて、濃すぎるので加水しているらしい。20年くらい前に工事現場でたまたま涌きだして、泉質しらべて仰天、だったらしい。なんでもリチウムイオンは温泉基準法の3倍、二酸化炭素は7倍だとか。そう、ここは「ラムネ温泉」。つかっていると体中が細かな気泡につつまれ、しょわしょわになるのである。こんな湯ははじめてだー。
ふと見上げると、土偶のようなおかあさんが2人。
話すでもなくじーっと目を閉じて湯船のふちに腰掛けてる。
「あのー・・・ここから源泉が出てるんですか?」
と話しかけると、「7:3で水もたしとるよ」と教えてくれた。はじめて?どこから?「広島です」まーそりゃ遠いところを。こないだ岡山からも来とられたよ。ここのお湯がいいって聞いてきたの?「はい」ちょっと自慢げなおかあさん。こんなお湯はこのあたりでも珍しいで、聞きつけて来られる人も多いのよー。と。
隣の男湯から「いーち、にぃーい、さぁーん、しぃーい」というオットとちょびの声が響いてくる。
ありゃ、かわいい、息子さん?何さい?まあ3つね、かわいいねえ。「はは、はい〜」みんな笑顔になる。
不思議な温まり方をするお湯だ。ぬるいのに、じわじわ身体の芯が熱を持つような。効く〜。
「冬でも寝る時まで足がぽかぽかよね」とのこと。
1時間ほど、しょわしょわー、しょわしょわーと上がったりつかったりして堪能する。土偶のおかあさんはよいしょとあがって、からだを洗いはじめた。何時間いるんだろう。ひょっとしてここの主か?ナマズかなんかのような神々しさすら感じる。
「それでは、お先に」
上がってもあとからあとから汗が出る。気持ちいい!!
待合所で水を飲んでると、パパちゃんとちょびもあがってきた。「はーーーー、すごかったねえーーー」
さ、帰りますかの車中で。
「もー大変だったんよー」とオット。
なにかと思えば、“もんもん”のある人に向かってちょびが
「あ、パパちゃんなんかかいてある〜〜〜」と指差したらしい。
あれなにー?なにがかいてあるのー?と指差すゆびを必死で押さえつけ、ごまかしごまかし洗っていると、その親分がかーーーっ!とタンを切る。すかさず「あ、いまげーっていったよ、パパちゃん今げーーっていったねえーーあのひとーー」
たのむからそっとしといて。お願い。
子分2人(みんなもんもんあり)を従えた親分は、何も言わずに上がって行ったらしい。
かーちゃん極楽気分のその頃、オットはお湯を楽しむどころか緊迫した時間にどっぷりつかっていたのだった。
「ぎゃはははは〜!!何の絵がかいてあったの」
「そんなん見れるわけないじゃん!視界の隅にちらっと入っただけで」「えー、一緒になにがかいてあるんかねー、って見たらよかったのに」などとかーちゃんは気楽だ。
「あれー、パパちゃん上がってこんねーって見に行ったら湯船に浮かんどったりしてー。あはは〜」
それにしても秘湯であった。
湯船は湯の花でぬるぬる、緑にさびさびである。20代の私だったらドン引きであったろうなあ。この渋さはわかるまいて。今だからこそわかる、「泉質」の意味が!
いやー、ほんと、いい湯でした。
●柚木慈生温泉
山口市徳地柚木2178
TEL:0835-58-0430
■おまけ■
とうかさんにて。「げきれんじゃー」のお面800エン也。ひー。
しかも黄色って女性キャラじゃ・・・
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