何様芸術様
とある美術館に取材依頼をし、断られた。
「公の媒体以外、私企業の出すものには掲載をお断りしております」とのこと、説得しようもない理由だったので「そうですか、ではまた何かありましたら・・・」(何があるのだ!?)と電話を切った。
別に失礼な感じでもなかったし、担当者の方は残念ですが、というニュアンスを伝えてくれたし、財団法人の性質も考えると仕方ないことなんだがちょっと「む」と思ったのもホント。
ロケハンで近くに寄ったので、これはナンボのものか見てやらねば、と行ってみた。
チケットは離れたところで買う。作品や建築に手を触れないでください撮影はご遠慮くださいカメラはここで預かります、と厳しくも機械的に説明される。
美しい花々が咲き乱れる庭園は手入れが行き届き、沼地から今にも美輪明宏がごぼごぼとせり上がってきそうな神秘さに包まれている。チケットをもいでもらって入場。
冷たいコンクリートの階段を延々のぼり、たぶんこのまま天国に昇るんだと思いながら進む。
静かだ。鳥も鳴かない。
かつ、かつ、と鳴る自分の靴音にも恐縮しながら進むと、有名ブランドのデザイナーがデザインした白装束に身を包んだスタッフが静かに進み出て、
「こちらで靴をお脱ぎください」という。
促されるまま靴を脱ぎ、進む。
そして、自分の視覚の曖昧さを確認する体験を味わう。
これは・・・・すごい。おもしろい。
案内してくれたスタッフにいろいろ話しかける。
しずかに笑みを浮かべそつなく応えるが目が笑っていない。
スタッフが異様に多い。静かに見張られている。
みな若く、賢そうで、上品だ。現代美術が好きなんだろう。勉強もよくしているんだろう。
順路もよくわからず、かつかつと進む。
しかし、建築家が描いた図面を、こうしてちゃんとコンクリ流してかたちにした現場の人はえらい。どーなってんだと思いながら進む。壁に手を触れてはいけない。
次の部屋は、真っ白だった。
そこに浮かぶように絵が。
足下を見て驚愕。(これはネタバレに匹敵するので言わない)
白装束のスタッフが、鑑賞に邪魔にならない絶妙な間隔で静かについてくる。
ああ、祈りの場だここは。
さっきから天国だとか思ってたけど、やっぱそうだわ。
この光景、
えーと
「AKIRA」だ。
ミヤコ様が、もうすぐ現れる。
もう一つの部屋も、写真で見たってわからない空間だ。
これは、この目で見て初めて意味があるものだ。
「こちらでは声が反響いたしますので、お静かにご覧ください」
鳥の声すらしない。
「たぶん、ここが地獄なんですよ」
同行したスタッフが指差す。
出口の植栽だ。吹き抜けの空間の底に木賊がびっしりと植えてある。
作品に触ったりなんかしたら、ここに落っこちてきて
血まみれになるんじゃないすか、と。
確かに素晴らしい体験だった。
有り難かった。
これは百聞より一見をすすめる。
私企業の、広報誌になんか
載せていただいては困ります。
無垢な、イメージに色がついてはいけません。
だってここは巨大な金の聖堂です。
神聖な、祈りの場なんですから。
感じ方は自由。
嫌なら来なければいいし、好きなら年間パスもある。
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