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2009年6月16日 (火)

蛍の光

梅雨に入ったがここ数日よい天気が続く。

保育園生活ことし最後のちょびをつれて、ほぼ毎週山に遊びに行っている。
家族の今を、二度と戻らない時間を噛み締めるように遊んでいる。

今回は六日市インター近くの「ゆらら」の温泉プールで遊び、府谷ほたる村に蛍を見に行こうという計画だ。

行きの車の中で、うきうきと鼻歌を歌い、くだらない話をしてげしげし笑い、お菓子たべたりお茶飲んだりしていると、ふと息子がこう言った。

「あのじいちゃんがまだいてびょーいんにいたとき、ちょびとばーちゃんとかーちゃんがいて、かーちゃんがじいちゃん怒ったでしょ、あのときじいちゃん、まくらなげたよねぇ」

突然なにを思い出したのか。
それは父が亡くなる2日か3日前のことだった。
病院が冷たくて酸素ボンベを貸してくれない。
仕方なく自宅から自前の酸素ボンベを持ち込んだ。
しかしそのバルブがきつく閉まって開かなくなった。
父は病院のスタッフへの不信感をあらわにして「誰かがきつく閉めたんじゃ」と泣く。
そんなことはないよとなだめても心が荒ぶって言うことを聞かない。
新しい酸素ボンベを明日用意してあげると言っても今用意してくれと言ってきかない。
「今じゃないとだめなんじゃ!」
そういって父は枕を投げたのだった。
頭に来て、実家に車で戻り、父の工具箱からでっかいヤットコを持ち出し病院に戻り、堅く閉まったバルブを力任せにこじ開けた。
これでいいでしょ!自分でもう開けられるよね!
そう言い捨てて帰った。
物わかりが良くて頼りになる父が父じゃなくなった。病院もなんでちゃんと看てくれないのか。いろんな思いがないまぜになって、悔しくて涙がでた。
もう自宅で看ようよ。母も同じ気持ちだった。そしてたった2日後にその病院で亡くなった。

「ああ、そうだったよねぇ」
あのときの思いがあふれて涙が止まらなくなった。
父が亡くなって4か月もたつのに、まだ傷は生乾きだった。

玖珂の山賊ででっかいむすびを食べて、錦川沿いに北へ向かう。
六日市の「ゆらら」はいいですよ。入り口にちょっとした産直市があって、野菜なんかを冷やかして入る。なにが良いかというと、水着で入れる温泉プール。家族みんなで入れるのがいい。25mコースの他に、浅いチビッコ用プールと、様々なジェットバスのあるスパスペース、決まった時間になるとアロマオイルを使って実演してくれる北欧式サウナがある。
ちょびは浮き輪持参で、きゃーきゃー言いながらあっちにばちゃばちゃこっちにばちゃばちゃ。親も適当に遊びながらカエルのように浮いている。極楽。
ふやけるほど堪能したら、それぞれ別れて温泉。お風呂へ。
広い露天風呂で空を眺めながらつかる。最高。38℃の源泉風呂もよい。お湯と自分の身体の境目がわからなくなる。どこまでもほどけて帰って来れなくなりそうだ。

風呂上がりは牛乳。
さて、蛍見にいきますか。

実はオットも私もまともに蛍を見たことがない。もちろん息子もだ。

その府谷というところは、錦川沿いの187号線から山に入って行く。ホタル祭りがあったばかりなので、道路に白い矢印が書かれ細い道だがちゃんとナビしてくれる。延々一本道を進むと、突然田んぼが開け、そこが「府谷ほたる村」だった。
日暮れ、まだほの明るい。どこで見られるんだろうとのろのろ進んで行くと人影が。
P、と書かれた道路脇に駐車してライトを消したとたん、見えた!

すごい!すごい!細い道を降りて川沿いに行くと、もう一面蛍が明滅していた。
「ほたる~~~~~!すごい~~~~~!」
なにやら川の中程に直立した人が数人見える。隣の人が懐中電灯をつけると
「こら!つけるな!」と怒る。写真を撮っているようだ。知るか。

ほわほわーんと飛んでくる蛍に手をのばすと、ふっととまる。

あっちに行ってみよう、と田んぼ沿いのあぜ道を降りて行った。

もう、田んぼの脇の川はすごかった。
「蛍川」って本がたしかあった。宮本輝だったか。読んだこと無いけど。
まさに蛍川だと思った。

山際はかなり高いところまで飛んでいて、黒々とした木がクリスマスツリーのようだった。

空にはいつのまにかものすごい星が出ていて、あ!流れ星!と思ったら蛍だった。

時間を忘れて見ていた。
ぼーっと見ていると、どこかで光るとそれがふふふふ、と呼応してひろがっていくように光る。その光全体が息をしているようだ。

「蛍ってなんで光るか知っとる?」
「くらくて前がよくみえないからじゃない?」
「わはは。あれはね、結婚相手を探しよるんよ。“俺ってかっこいいじゃろう”って光りよるんよ」
「へー。ほたるけっこんするんじゃね」

どうやら蛍はオスもメスも光るらしい。2週間ほどこの世にいるあいだに交尾して卵を産んで死ぬんだそうだ。

闇の中で光る小さな光そのひとつひとつが命。
生きていて、命をつなぐための必死の光なのだ。

その光をつつむ闇の中に死を思う。

父よ。いただいた命はここでこうして元気に生きています。





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コメント

 そんなにたくさんの蛍を親子で見られてよかったねぇ。ちょびくん、忘れられない思い出になっただろうね~。私も息子をつれて行ってみたいなぁと思いました。
 オットの実家の近くで蛍が少し見られる所があって、ここ数年はそれを楽しんでいます。この間の土曜日も行ってみました。が、光は一つのみでした。前はふわ~っといくつかは見られたのに…。年々少なくなってるのかも…と心配です。
 蛍、「命」を感じさせますね。
 命のつながり、大事にしないとね。

投稿: こぐまちゃん | 2009年6月16日 (火) 午後 11時13分

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