2010年2月25日 (木)

旅のはなし

Ume_3

父の命日の翌日、ちょっと旅に出た。

行き先はもちろん温泉。ちょうど雪も気にせず行けそうだったので、島根・玉造温泉に。

レッツゴー!と出発したはよいが、「あ!!ひげ剃り忘れた!」と自宅に戻る。
まあすぐ気がついてよかったねなどと笑っていると、後部座席から

「パパちゃん、“うっかりわすれものにきをつけよう”だって!」

バレンタインデーに保育園のお友達からもらったチョコを食べていた息子がこう読み上げた。
そのチョコの個包装には、おみくじがついていたのだった。

あはー当たってるね、なんていいながらドライブ。気持ちがいい天気だ。

高速降りて日本海沿いの国道9号線、追い越し禁止の1車線、先頭はパトカー。
ちんたらちんたらの閉塞状況に、発作的にハンドルを切って降りた先が「琴ヶ浜」。

Kotogahama

鳴き砂で有名な海岸。砂は鳴らなかったが、気持ちいい。裸足でしばらく遊ぶ。

車に戻って走りはじめると

「“おさんぽすると、よいことがあるよ”だって!」

おお!今お散歩してきたからいいことあるんじゃない?
なんかうれしくなるおみくじだね。

昼ご飯前に、出雲・湯の川温泉に立ち寄り湯。
日本三大美人の湯というだけあって、肌つべつべ。

さあ、お腹空いたね、とランチに向かおうとした時
「“おいしいものがたべられそうなよかん”だって!」

・・・・!!!
なんかびたびた予言があたる。
オットが
「ちょび、じいちゃんついてきとるよ・・・」と。

そうか、そうだよ。命日、一周忌記念でシャバに帰ってきてるんだよ。
じいちゃん、ちょびが大好きだったからなぁ。
ちょびにひっついて、付いてきてるんだ。

春のようないい天気、1年前の今日も、葬式の日、こんな青い空だった。

おとうさん、息子、もうすぐ1ねんせいなんよ。
後部座席に息子と並んで座ってるであろう父に、ランドセル姿を見せてやりたかったなぁと思うと泣けて仕方がなかった。

「あーっ!!!」
先ほどの温泉に時計を忘れたといってUターンするオット。
「ぜったいお父さん来とるんよ。なんかソワソワするもんー」
オットよ、目に見えなくとも緊張するのね・・・。


さて昼食は奥出雲葡萄園にて。

Okuizumo

あはーーーー
なんて美しいんでしょう。シャルドネ。

料理は出西窯の皿に盛られている。美しく豊かだ。

パンと一緒に出てきたディップ、ひとつはオリーブオイル。白いのはカリフラワー、茶色いのはアンチョビ、グリーンはほうれん草、なんて勝手に思っていたらオットが複雑な顔で「・・・ちがう」。
なんだろう、なになに、あ甘い、何の味?と盛り上がっていたら、サービスのソムリエの方に「蜂蜜ミルクと、抹茶と、珈琲のコンフィチュールです」と。

美味しいし、美しいし、もう楽しくて、息子もクラムチャウダーがよっぽど気に入ったのだろうみんなのスープを飲み干した。

メインのポトフ、うまーといただいていると小さいグラスにピンクのワインが注がれて出てきた。
「豚にもよく合いますので。」

えーロゼって甘いんじゃないのと思ったら、すっきりと辛口で、なんというかベリーというか果物のようなフレッシュな香りがほんとうに豚によく合った。
ポトフのスープも「ずっと飲んでいたい」殿堂入りの美味しさだった。

最後のデザートも、あつあつのアップルパイにラムレーズンのアイスが添えられ、そこにまた小さなグラスでデザートワインを出していただいた。
このアップルパイ、アイス、デザートワイン、魂がめろめろになってゆくのがわかった。
「炭酸水で割っていただくと、美味しい食前酒になります」という言葉で、買って帰ろうと決意。

先ほどのロゼ「きすきのさくら」とデザートワインと、西製茶所の出西生姜紅茶と木次乳業のヨーグルトを買った。

Budouen


玉造までは遠くない。
宿は「湯の助の宿・長楽園」。ここにお世話になるのは2度目。

車で到着すると、わらわらといろんな方が出てきて荷物を持ってくれたり車を移動させたり、古き良き旅館のおもてなしが感じられる。

なんてったってここには“120坪の源泉掛け流し混浴露天風呂”があるのだー。

女性は花柄の“巻き布”を装着して入る。
家族みんなででっかい露天風呂を満喫できるなんて極楽だ。


Kyodairotenburo

Tamatukuri

「ひとたび濯げばかたちきらきらしく、再びゆあみすれば万の病ことごとに除こる」(出雲国風土記)

玉造の湯は湯上がりがいい。肌がもっちもちのしっとりつやつや。ずっとつかっていたい・・

翌日、近くの「作玉湯神社」にお参り。
古代、祭祀用の勾玉が作られていた聖地だそうだ。
そこには「叶い石」というお守りがあって、中の石(水晶)を境内の「願い石」という丸い石にあてて御神水をかけるとそのパワーが宿るのだという。
紙に願い事を書く。
息子の願い事は
「かっこいいいちねんせいになれますように。」
たぶん叶うぞ。

ちょっとドライブして、安来のカフェロッソでパニーニとはちみつロールケーキとバリスタチャンピオンタイトル保持者のカプチーノをいただく。

そして「マリンタラソ出雲」。

ここは我が家の聖地と言っても過言ではない。

ああ、魂ってこんなに綺麗だったのかと思うくらい洗濯できる。

多伎の目の前の海から汲み上げた新鮮な海水の「元気海プール」。
ずーーーーーっとつかっていた。


目に見えないものに耳を澄ませば
あの世から遊びにきた父にも会えた。

自分を信じてあげること。家族と仲良く暮らすこと。

少々のことじゃゆらがないくらいに満ち満ちた。
いい旅でした。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年9月 9日 (水)

湯布院へ行くのなら

 ぺいつんさん、月末湯布院ご夫婦旅、いいですね!
 ぜひ湯布院を味わってよい旅を。
 湯布院は大好きで、何度か行きました。
 行くたびに面白いと思うものも変わっているので、参考になるかどうか分かりませんがご紹介します。

 由布院へはお車ですか?
 車で行くのでしたら、大分自動車道 別府湾サービスエリアに立ち寄るといいかもしれません。
 こちら

 湯布院御三家と言われる名旅館のひとつ、「山荘無量塔」がプロデュースしています。

 ちなみに、山荘無量塔については過去にこう書いております。

 電車の旅でしたら「特急ゆふいんの森号」がおすすめです。
 この車内でしか食べられない「ゆふのもり弁当」がうまい。予約できたはずです。電車なら一杯飲めるのがたまらない。チーズなどのおつまみセットもあります。
 「山荘無量塔」の「B-speak」というケーキ屋さんのPロールというロールケーキも、小さいサイズで販売しているようです。このPロールも5日前から予約しておかないと買えないことが多いので、車内で買えたらいいですね。ふわふわ素直でまっとうな美味しさです。今年はココア味を買いました。

 駅から湯の坪街道をぶらぶら歩けば、金鱗湖付近まではそうしんどくもない距離です。
 ですが、このあたりはちょっとした軽井沢化(行ったことないけど)しており、にぎやかで玉石混淆、は言いすぎか。冷やかしながら歩くには楽しいかも。

 金鱗湖周辺では「亀の井別荘」に立ち寄ります。
 ここの「天井桟敷」というカフェで、「モン・ユフ」をいただくのが好きです。
 そこの階下の「鍵屋」というセレクトショップもなかなかよくて、いつも買おうかどうしようか迷いに迷うものがひとつふたつあります。今年は竹細工のかごの美しさにやられました。しかしザル7000エン・・・もうちょっと台所を整えて迎えることにします。「ことことや」のジャムもここで買えます。

 お泊まりの宿はたいてい朝夕食がいただけると思います。
 もし、お宿以外で食事をする機会がありましたら、町中からちょっと外れますが、

市ノ座 結豆腐
湯布院温泉田中市
TEL:0977-28-8113
10:00〜23:00 水曜日定休(だったはず)

 に行ってみてください。わたし行ったことないんですけど、間違いなく食後の茶は旨いはず。

 昨年のブログ「確かな進化」
 今年前を通ったのですが、まだお店の横に「桐屋」はない様子でした。

 湯布院の町中からかなり外れて、車じゃないと行けないかもしれませんが、鳥越という地区にある
由布院 空想の森 アルテジオ」でのランチも愉しいひとときでした。隣のミュージアムがまたいいのです。何時間でもいたい感じでした。

 アルテジオの付近には、「山荘無量塔」とその関連施設がたくさんあります。チョコレートショップ、蕎麦屋、どこも美しいです。
 今回私が泊まったペンション「ムスタッシュ」もここの近く。ここでいただいた晩ご飯で、ニジマスの一品が出てきたのですが忘れられない。あんなニジマス食べたことない。ここはレストランとしての利用もできるようです。

 このあたりから少しさがったあたりに「庄屋の館」があります。ここは宿泊もできますが、泊まらないでもぜひ立ち寄り湯を!
 広い広い露天風呂、一面まぶしいようなコバルトブルーです。由布院温泉といえば全体的に無色透明で素直なさらさら湯が多いのですが、所によってこのように青湯が湧くようです。
 モルディブの海の色にも感動したが、ここの温泉にもそのくらい驚いた。どうしてこんなに美しい湯が湧くのか。神秘。この感動をあなたにも是非。

 ・・・まあそんなに湯にばっかり浸かってられないですわね。

 ほかにもたくさんいいところがあると思います。

 なんといっても、由布岳は美しいです。早朝、街は雲海に覆われ、逆光の由布岳は力をくれます。
 その姿を見るたびに、これを見にまたここに来ようと思います。

 ぜひ、湯布院を楽しんできてください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年7月 7日 (火)

はなみさんはいいですね、悩みなんてないでしょうといつも言われる。
そんなことないですよーといいながら実はあんまり悩んでいない。
悩まなくていいように環境を整えてここ3年はやってきたからだ。
しかし先週一週間は、自分が自分でないような一週間だった。
別に許せない事件があったわけではない。
しかし身から出たサビに身動きが取れなくなり、なんとも言えない日々だった。

その最終日、たまらなくなった。涙も出ない。
夕方、車で帰宅途中、息子は車内で寝てしまった。このまま家に帰りたくない。
海がみたい。
ロマンチックな感傷でもないんだが、喉が渇いた、と思うような気分で海が見たかった。
海ならどこでもよかったので宇品に向かった。
元宇品のシーサイド病院前の堤防に車を停めて海際に出た。
夜が海をのみこんでいく。
しかし海を感じる間もなく蚊に襲われた。5分でぼこぼこにされたのでムヒを塗りながら車に戻った。

と、オットに話すと、「海にいこう」と誘われた。


朝食を済ませて、浜田道を通り、一気に山陰・福光海岸へ。
海岸にひらいて建つレストラン「ラウ」があった。

夏前の、まだ誰もいない海というのはそれだけでわくわくする。
天気もなんとかよくなって、青空がのぞいた。
テラス席でランチをいただく。

Photo_2

だはーーーー。
グラスを通して見る海。
もうこれだけでいいですな。

Photo_3

どこからかにゃんこがやってくる。
ピザの耳をあげて喜ぶうちのにゃんこ。

食事中ずっとわたしの足下にいて、サンダル脱いだ裸足でにゃんこの背中をこちょこちょしていた。けものの暖かさというのは心地よいものだ。

デザートを食べ、庭のデッキチェアに寝転んだり、ぼんやり時間が過ぎていく。
テラス席から芝生の広い庭を超えて、直接海岸線に降りられる。

Photo_4


海の水はもう冷たくない。泳げそうだね。
砂山をつくったり、貝殻を拾ったり。



ぼちぼち移動。9号線を北上して出雲・多伎へ。いちじくの産地で有名ですね。
ここのキララ多伎という道の駅の手前に「マリンタラソ出雲」はある。
はじめて行ったんですが、ここはいいですよー!!

目の前の日本海から汲み上げた新鮮な海水を温めたミネラルたっぷりの「元気海プール」。
水着着用で、家族みんなで遊べる。
水につかったデッキチェアに寝転んでジェットを感じながら海を眺めたり、
海岸にせり出した露天ジャグジーは一生つかっていたい気持ちよさだ。

不感温度というのか、絶妙の温度の海水に浮かんで海を眺めていると、不思議な気持ちになった。

まんまるの、ぼんやり光る玉があって、そのまわりにこびりついたがさがさの黒いものが、つるん、とはがれて消えていくのが見える。
この光る玉は心なのかな、魂なのかな、
そうか、こんなふうに白くてあたたかくてきれいだったんだなー。
変な重いものをいっぱいくっつけて、不自然だったな。
そんなイメージを見た後は、もう大丈夫だと思えた。

ちょびとパパちゃんが遊んでいる間、かーちゃんは特別にトリートメントをひとつ受けた。
「エアロゾル」というもので、海底をイメージした暗室内に充満したミスト状の海水を深く吸いながらリラックスするもの。
暑くも寒くもなく、ブラックライトの中に白いバスローブの自分が浮かぶ。
ざわざわいろいろ考えていたけど、潮が引くように意識が遠のいていった。
海の底で30分。

外は夕日だった。
日本海に夕日が沈む。厚い雲にはばまれて、ぼんやりと紅だ。
線香花火の先っちょのようだ。
海に触れたらちゅん、と音がする。世界一小さな日没の音をお届けしますと言うラジオCMがあったような・・・


ふやけた身体をさっぱりさせるべく、「出雲駅前温泉 らんぷの湯」へ。
その名の通り本当に駅前にある。駅のアナウンスが聞こえてくる。
露天風呂は竹林に向かって一人サイズの湯船。
茶色く濁った含鉄塩化物泉がとろとろとかけ流しで、つかるともったいないほどにざばーっとあふれる。
薄暗い空間にランプの明かり。熱い湯が心地いい。

湯上がり、隣の居酒屋で軽く食事。
窓の外には満月。
トビウオの刺身で一杯やって広島へ。
54号線を南下して3時間で帰ってきました。
ずっとオットが運転してくれた。ありがとう。




ふやけた身体で考えた。
過ぎたことは海に放そう。
なるべく心が曇らないように。

身体がおかしくなるほど不快だったことも、こともなげな過去になった。

おかげさまで、悩みの無いはなみに戻りました。





| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月16日 (火)

蛍の光

梅雨に入ったがここ数日よい天気が続く。

保育園生活ことし最後のちょびをつれて、ほぼ毎週山に遊びに行っている。
家族の今を、二度と戻らない時間を噛み締めるように遊んでいる。

今回は六日市インター近くの「ゆらら」の温泉プールで遊び、府谷ほたる村に蛍を見に行こうという計画だ。

行きの車の中で、うきうきと鼻歌を歌い、くだらない話をしてげしげし笑い、お菓子たべたりお茶飲んだりしていると、ふと息子がこう言った。

「あのじいちゃんがまだいてびょーいんにいたとき、ちょびとばーちゃんとかーちゃんがいて、かーちゃんがじいちゃん怒ったでしょ、あのときじいちゃん、まくらなげたよねぇ」

突然なにを思い出したのか。
それは父が亡くなる2日か3日前のことだった。
病院が冷たくて酸素ボンベを貸してくれない。
仕方なく自宅から自前の酸素ボンベを持ち込んだ。
しかしそのバルブがきつく閉まって開かなくなった。
父は病院のスタッフへの不信感をあらわにして「誰かがきつく閉めたんじゃ」と泣く。
そんなことはないよとなだめても心が荒ぶって言うことを聞かない。
新しい酸素ボンベを明日用意してあげると言っても今用意してくれと言ってきかない。
「今じゃないとだめなんじゃ!」
そういって父は枕を投げたのだった。
頭に来て、実家に車で戻り、父の工具箱からでっかいヤットコを持ち出し病院に戻り、堅く閉まったバルブを力任せにこじ開けた。
これでいいでしょ!自分でもう開けられるよね!
そう言い捨てて帰った。
物わかりが良くて頼りになる父が父じゃなくなった。病院もなんでちゃんと看てくれないのか。いろんな思いがないまぜになって、悔しくて涙がでた。
もう自宅で看ようよ。母も同じ気持ちだった。そしてたった2日後にその病院で亡くなった。

「ああ、そうだったよねぇ」
あのときの思いがあふれて涙が止まらなくなった。
父が亡くなって4か月もたつのに、まだ傷は生乾きだった。

玖珂の山賊ででっかいむすびを食べて、錦川沿いに北へ向かう。
六日市の「ゆらら」はいいですよ。入り口にちょっとした産直市があって、野菜なんかを冷やかして入る。なにが良いかというと、水着で入れる温泉プール。家族みんなで入れるのがいい。25mコースの他に、浅いチビッコ用プールと、様々なジェットバスのあるスパスペース、決まった時間になるとアロマオイルを使って実演してくれる北欧式サウナがある。
ちょびは浮き輪持参で、きゃーきゃー言いながらあっちにばちゃばちゃこっちにばちゃばちゃ。親も適当に遊びながらカエルのように浮いている。極楽。
ふやけるほど堪能したら、それぞれ別れて温泉。お風呂へ。
広い露天風呂で空を眺めながらつかる。最高。38℃の源泉風呂もよい。お湯と自分の身体の境目がわからなくなる。どこまでもほどけて帰って来れなくなりそうだ。

風呂上がりは牛乳。
さて、蛍見にいきますか。

実はオットも私もまともに蛍を見たことがない。もちろん息子もだ。

その府谷というところは、錦川沿いの187号線から山に入って行く。ホタル祭りがあったばかりなので、道路に白い矢印が書かれ細い道だがちゃんとナビしてくれる。延々一本道を進むと、突然田んぼが開け、そこが「府谷ほたる村」だった。
日暮れ、まだほの明るい。どこで見られるんだろうとのろのろ進んで行くと人影が。
P、と書かれた道路脇に駐車してライトを消したとたん、見えた!

すごい!すごい!細い道を降りて川沿いに行くと、もう一面蛍が明滅していた。
「ほたる~~~~~!すごい~~~~~!」
なにやら川の中程に直立した人が数人見える。隣の人が懐中電灯をつけると
「こら!つけるな!」と怒る。写真を撮っているようだ。知るか。

ほわほわーんと飛んでくる蛍に手をのばすと、ふっととまる。

あっちに行ってみよう、と田んぼ沿いのあぜ道を降りて行った。

もう、田んぼの脇の川はすごかった。
「蛍川」って本がたしかあった。宮本輝だったか。読んだこと無いけど。
まさに蛍川だと思った。

山際はかなり高いところまで飛んでいて、黒々とした木がクリスマスツリーのようだった。

空にはいつのまにかものすごい星が出ていて、あ!流れ星!と思ったら蛍だった。

時間を忘れて見ていた。
ぼーっと見ていると、どこかで光るとそれがふふふふ、と呼応してひろがっていくように光る。その光全体が息をしているようだ。

「蛍ってなんで光るか知っとる?」
「くらくて前がよくみえないからじゃない?」
「わはは。あれはね、結婚相手を探しよるんよ。“俺ってかっこいいじゃろう”って光りよるんよ」
「へー。ほたるけっこんするんじゃね」

どうやら蛍はオスもメスも光るらしい。2週間ほどこの世にいるあいだに交尾して卵を産んで死ぬんだそうだ。

闇の中で光る小さな光そのひとつひとつが命。
生きていて、命をつなぐための必死の光なのだ。

その光をつつむ闇の中に死を思う。

父よ。いただいた命はここでこうして元気に生きています。





| | コメント (1) | トラックバック (0)

2009年1月29日 (木)

生きててよかった

お久しぶりです。気がつけばずいぶん更新してませんでしたね。元気にしていました。


正月休み、一泊で温泉につかってきました。出雲、玉造温泉。
何泊かできるんなら九州か四国に渡るが一泊ならせいぜい山陰だ。しかし雪も心配(うちの車はノーマルタイヤ)で直前までどうしようか悩んだが行くことに。国道 54号は使わず浜田道⇒国道9号というルートで行きました。雪の心配はなかったです。

長楽園という旅館に泊まりました。
ここには夢のような露天風呂が。その名も「庭園露天風呂・竜宮の湯」!


昔、おじいちゃんが「地獄と極楽」という絵本を買ってくれたことがあった。それは輪廻転生を描いたマンガで、行きてるうちにろくなことしないと地獄ではこんな責め苦が待っているぞという壮絶なマンガだった。子どもたちが功徳をつんだおかげで地獄をさまよっていた主人公は極楽に行くことができる。そこは天女が蓮の花びらをまき、いい香りがする夢のような世界。おなかがすいたと思ったらぼわわんと御馳走がでてくる。しかし箸が異様に長い。それは他の人とお互い食べさせ合うための箸だった。助け合うのが極楽。
さてその主人公、美しい池で水遊びをする。ああこれがお湯ならなあと思うと、みるみる水深が深くなりちょうどいい湯加減の温泉になるのだった。
いいなあ! 極楽いいなあ!!子ども心に極楽に憧れたものだ。

それが今!まさに目の前に広がっているではないか!まさにああ極楽。


Roten

なにせ120坪もあるそうですよ。見渡す限り温泉ですよ。しかも源泉掛け流し、加水加温なしですよ!おまけに混浴ですよ!!

ええっ混浴!?しかし大丈夫。女性用に「巻き布」が脱衣所に用意されているのだ。トロピカルな絵柄の長方形の布でぐるぐる巻いて入れば問題ない。むしろ男性の方が恥ずかしそうであった。
混浴のなにがよいかといえば、家族みんなで入れることである。ちょびも大喜び。


Rotencyobi


お子様が入ると常に肩までつかってる状態です。今ちょびは身長107cm。

夜もすごい。スポットライトの逆光にもうもうと立ち上る湯煙が輝き、未知との遭遇かここは。浅い湯に寝転がり、凍てつく星を眺めるなんてもう最高。

スタッフの方々の心配りもお食事も申し分なく、老舗の底力を見た思いでした。


一泊した翌日、出雲大社に初詣して、温泉津温泉、薬師湯に立ち寄って帰った。
ここもまた源泉掛け流し、熱くてぽかぽかになるいいお湯だ。

脱衣所には先客が。おばあちゃんが二人で話しながら入って行った。
あとから入り、身体を洗ってそーっとつかる。熱いのよ!源泉直近46度だから。
おばあちゃんたちの会話が耳に入る。
「おねえさんいくつになっちゃったん?」「92よね」
「まあ!92!元気なねぇ〜」
ほほー92歳!肌の色つやとてもよろしい、かわいいおばあちゃん。
手ぬぐいでごしごしきゅっきゅと洗って、湯口から手桶で湯をくんでザバーザバーとかける。熱いんだって!湯口の湯は。これが元気の秘訣なんだろうか。

たっぷりつかってあがると、先にあがっていたおばあちゃんが着替えていた。
ゆっくりゆっくり、靴下はいて、モンペをはいて、セーターを着て、手編みだろうか、毛糸のケープをして。
また別のおばあちゃんがやってきて「あらおねえさん、あけましておめでとうございます」と話しかける。
「おねえさんいくつになってん?」「92よね」
「んまー元気なねぇ、ええねぇ」「おかげさんで」
「○○(おそらく食事つきの、デイサービスのようなとこ)には行かんのん?」
「あたしゃあ自分でするのよ」
「まあ!ごはん自分で?」
「ことことつくるのが好きなのよ。自分の口にあうように」

ああ、自分の口にあうように。
そうか、そうだなと、しみじみ思ったのだった。

帰りの車の中でおばあちゃんのことをずっと考えていた。

Syasou

92歳、戦争中は20代後半だったことになる。お子さんも何人かいただろうか。温泉津のあたりの戦時中はどうだったんだろう。作物をつくり、おとうさんの網にかかった魚をさばいて子どもを育てたんだろうか。子どもたちが育ち盛りともなれば一度のご飯の支度も大変だったろう。じゃかじゃかと威勢良くといだコメをぴかぴかに炊き、もうもうとあがる湯気とともに大盛りにして、にぎやかな食卓だったに違いない。そのうち子どもたちは独立し、家はおとうさんと二人。ついついおかずをたくさんつくりすぎちゃって、という頃も過ぎ、もしかしたらおとうさんを見送って、今は独り住まいかもしれない。
それでもおばあちゃんは、ご飯の支度をする。
大根を炊いて、お漬け物を切って、ことこと、ことことじょうずに。
ひとりの口にあうように。
生きることは食べることなんだなあ。

生きていくこと。自分の口にあうように。毎日。

おばあちゃん、お元気で。いろんなことを教えてもらいました、ありがとう。

自分に必要な時にこうしていろんなことが語りかけて教えてくれる。
世の中は示唆にあふれている。耳を澄まして、目を開いていたい。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年6月 6日 (水)

ワンデイ湯治・柚木慈生温泉

我が家は温泉好きである。
オットとどこか泊まりに行くといえば必ず温泉がついてまわる。
息子が生まれてしばらく遠のいていたが、
2さいころから復活した。
一泊二泊はなかなかできないので、日帰り温泉に目覚める。

車でちょろっと行って、近辺の野山で思い切り遊んで、ゆっくり温泉につかってすっぴんで帰宅、晩ご飯食べてあとは寝るだけ、というのが非常に心地よい。

そんな「ワンデイ湯治」だが、いつものなじみの温泉ばかりじゃ飽きてくる。オットの温泉選択眼も肥えてきて、「源泉掛け流し」狙いになってきた。
そして、「秘湯」でなくては満足できないカラダになってゆくのであった。

さて今回出かけたのは山口県徳地にある「柚木慈生温泉」。中国自動車道・鹿野からちょっと上がってったところに位置する。
行きは元気なのでなるべく高速を使わないのがポリシー。
ということで2号線をちんたら西へ向かう。
途中昼時、久しぶりに「山賊」に寄って見る。
「山賊」といえば若かりし頃ドライブデートのメッカであった。が、当時つきあっていたのはみな車持たずの貧乏人で縁がなく、今回訪れたのは高校の時親と来て以来だ。
天気がよくて、屋外の緋毛氈のテーブル席で食べる。
息子はうどんをちゅるちゅる啜り、オットとかーちゃんはでっかいムスビにかぶりつく。木漏れ日が気持ちがいい。外で食べると美味しいねえ。
さて帰ろうとしてやはりそこにも罠があった。
「これいる〜〜〜〜これ買って〜〜〜〜」
でた!
最初ダメです!と強硬姿勢にでていたが、かーちゃんソフトクリーム買いにいってる間にパパちゃんが懐柔されていた。「これがいいんだって」・・・だめじゃん。
「おかーさん負けはったね」とレジのおばちゃんがにやり。息子は「かーーーちゃんありがとう!!」満面の笑み。「ダイキャスト激走チームDX」800エン也。日に焼けて色褪せた箱が「やっと買ってもらえた」とほっとしている。

そこからが長い。
2号線は案外混んでいるし、徳山から315号線を一路北へ向かうが行けども行けども山道だ。
「秘湯〜〜〜〜〜」と盛り上がってはみたもののオット睡魔に勝てず運転交代。かーちゃんも眠いが温泉温泉とつぶやきつつひた走る。
みな寡黙になってきたころ
「・・・あれか??・・・」
ついた・・・

Onsen1

P.M.4:00
商店閉まってるし。

Onsen3


入り口ただの民家だし。

それでもけっこう地元の車がたくさん駐車している。

Onsen2


大人2人と3歳児で1,200エン。

「それじゃあとでねー、ゆっくりねー」
パパちゃんとちょびは男湯へ。

Onsen4

それにしてもこう、昭和感ありあり、
トイレもちゃんと「便所」のにおいがする。
脱衣所はそっけない板張り、ロッカーは無料。

Onsen5


ぱぱっと脱いでがらり、と開けると
狭い湯船のふちにぐるり7人くらいのおばちゃんが腰掛けておしゃべりしていた。多いな〜。
見回すと溶けたせっけんしかない。
も一度ロッカーに戻ってシャンプーをとって、
側で服を着ていた湯上がりのおばちゃんに
「あのー、ここ髪洗ってもいいんですか」と聞く。
「ああ、いいよ、みんな洗いようよ」
ほっとして再入場。シャワーが1ケ所しかない。
そこで蛇口をひねるが、延々水しか出ない。
仕方なく水で髪を洗う。仕舞い頃ちょっと温かくなる。

地元のおばちゃんたちはみな顔見知りのようで、
話しに花が咲きまくる。
「キャベツがよーけできてからにねー」
「ちそでジュース作ったらええんよ、色がきれいだけー」
農作物の話し、病院の話し、ご近所の人の消息。
「そんじゃおさきに」と何人か上がってゆく。

さて、いよいよお仲間に・・・
端っこから3そそーーーっとつかってみる。
さっき上がってきたおばちゃんが
「あっつーーーあつい!でも気持ちいい!」とさかんに言っていたのでどんだけ熱いのかと思いきや、案外ぬるい。
湯船はとろんと緑色。涌きだすお湯は無色透明なのだが、すぐに酸化して緑に濁る。とろみたっぷりのお湯は、なんだかいろんなエキスが溶け出してるような気がするが考えないようにする。

ここのお湯は成分がものすごく濃くて、濃すぎるので加水しているらしい。20年くらい前に工事現場でたまたま涌きだして、泉質しらべて仰天、だったらしい。なんでもリチウムイオンは温泉基準法の3倍、二酸化炭素は7倍だとか。そう、ここは「ラムネ温泉」。つかっていると体中が細かな気泡につつまれ、しょわしょわになるのである。こんな湯ははじめてだー。

ふと見上げると、土偶のようなおかあさんが2人。
話すでもなくじーっと目を閉じて湯船のふちに腰掛けてる。
「あのー・・・ここから源泉が出てるんですか?」
と話しかけると、「7:3で水もたしとるよ」と教えてくれた。はじめて?どこから?「広島です」まーそりゃ遠いところを。こないだ岡山からも来とられたよ。ここのお湯がいいって聞いてきたの?「はい」ちょっと自慢げなおかあさん。こんなお湯はこのあたりでも珍しいで、聞きつけて来られる人も多いのよー。と。

隣の男湯から「いーち、にぃーい、さぁーん、しぃーい」というオットとちょびの声が響いてくる。
ありゃ、かわいい、息子さん?何さい?まあ3つね、かわいいねえ。「はは、はい〜」みんな笑顔になる。

不思議な温まり方をするお湯だ。ぬるいのに、じわじわ身体の芯が熱を持つような。効く〜。
「冬でも寝る時まで足がぽかぽかよね」とのこと。

1時間ほど、しょわしょわー、しょわしょわーと上がったりつかったりして堪能する。土偶のおかあさんはよいしょとあがって、からだを洗いはじめた。何時間いるんだろう。ひょっとしてここの主か?ナマズかなんかのような神々しさすら感じる。
「それでは、お先に」
上がってもあとからあとから汗が出る。気持ちいい!!

待合所で水を飲んでると、パパちゃんとちょびもあがってきた。「はーーーー、すごかったねえーーー」

さ、帰りますかの車中で。
「もー大変だったんよー」とオット。
なにかと思えば、“もんもん”のある人に向かってちょびが
「あ、パパちゃんなんかかいてある〜〜〜」と指差したらしい。
あれなにー?なにがかいてあるのー?と指差すゆびを必死で押さえつけ、ごまかしごまかし洗っていると、その親分がかーーーっ!とタンを切る。すかさず「あ、いまげーっていったよ、パパちゃん今げーーっていったねえーーあのひとーー」
たのむからそっとしといて。お願い。
子分2人(みんなもんもんあり)を従えた親分は、何も言わずに上がって行ったらしい。
かーちゃん極楽気分のその頃、オットはお湯を楽しむどころか緊迫した時間にどっぷりつかっていたのだった。
「ぎゃはははは〜!!何の絵がかいてあったの」
「そんなん見れるわけないじゃん!視界の隅にちらっと入っただけで」「えー、一緒になにがかいてあるんかねー、って見たらよかったのに」などとかーちゃんは気楽だ。
「あれー、パパちゃん上がってこんねーって見に行ったら湯船に浮かんどったりしてー。あはは〜」

それにしても秘湯であった。
湯船は湯の花でぬるぬる、緑にさびさびである。20代の私だったらドン引きであったろうなあ。この渋さはわかるまいて。今だからこそわかる、「泉質」の意味が!
いやー、ほんと、いい湯でした。


●柚木慈生温泉
山口市徳地柚木2178
TEL:0835-58-0430


■おまけ■
とうかさんにて。「げきれんじゃー」のお面800エン也。ひー。
しかも黄色って女性キャラじゃ・・・


Photo_38

| | コメント (3) | トラックバック (1)