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2007年4月 6日 (金)

のぞみに乗れない

先週土曜日、大阪フェスティバルホールで
FM802主催「生きて泳げ、涙は後ろへ流せ」
というイベントがあったので行ってきた。
プロデューサーに詩人・三代目魚武濱田成夫、
音楽監督、高野寛。
坂本美雨、小泉今日子、浜田真理子、
斉藤和義、手嶌葵、リクオ、窪塚洋介、
一青窈、金子マリ、という豪華アーティストたちが
すべて中島みゆきの曲を表現するというステージだ。

ちょっと早めに行って、天保山サントリーミュージアムで開催中の「ダリ展」でも見ようと思っていたのに、朝の打ち合わせが長引いて、駅に着いたのが2時だった。
昼食をとっていなかったので、サンドイッチを買い、
次の発車をみると3分後、
ホームを駆け上がり飛び乗った。

動き始めて、窓からの景色を見て気がついた。
・・・下りだ。
あわてて、博多行きの新幹線に飛び乗ったのだ。
アホすぎる。
あー最近下りの新幹線ばっか乗ってたから
ついつい癖でこっちに飛び乗ったんだ。
乗ってしまったものは仕方がない。
カフェオレでサンドイッチをつまみ
次の停車駅、新山口で折り返すことにした。

新山口には30分ほどで到着。
上りのホームに向かうと、大阪行きのひかりが
まさに発車寸前だった。
乗ろうかな、と思ったけどもう発車のベルが鳴ってたし
躊躇してる間に行ってしまった。

ぽつんと取り残された駅で、次ののぞみを待つ。
30分ほどで来る、と思って待っていたが
そののぞみは運転日注意、つまり本日運休だった。

誰もいないホームのベンチに座って、ただ待つ。

停車しないのぞみが何本も通過する。
時速何キロだかしらないが、
ものすごい轟音で過ぎるそれはとても怖かった。


のぞみに乗れない。
皮肉だなあ。
まるで、いまの私の状況そのものじゃないか。
しびれるような仕事がないのではない
目の前を過ぎるのを、ただびびって眺めるしかない
いまのわたしにはその仕事に乗る資格がないのだ。
大きな駅に行けばたくさんのぞみが止まるでしょうという
物理的なことではなくて
自分の実力がこれしきなのだということを
思い知らされたような気がしたのだ。

不思議なことに、午前中の打ち合わせで
とある人と話したことと、リンクしていた。
だから、不思議だなあと思ったのだ。
物事はすべて必然で
こうしてわたしは立ち止まり気づかされ
気づいたらこれからどうしたらいいのかを
じっくり考える時間を与えられたのだった。

ほどなくして、やっと上りののぞみが止まった。
大阪までの2時間、なんだかノートにすべて
書きたくなってずっと書いて確認した。

そういう時間のおかげで、どこかへ行くような
余裕はなくなり、地下鉄乗り継いで開演直前に到着。
あがった息を落ち着かせようとスパークリングワインを頼み、
きゅーっと飲み干して客席に向かう。


ステージは、わざわざ見に行った甲斐があった。
2曲ずつ演奏して交代してゆく誰もが
みんな緊張していた。
客席は自分のファンじゃない人ばかり、
演奏するのは自分の曲じゃないばかりか
あの中島みゆきの名曲だ。
中島みゆきのファンが、どういう演奏をするのか
と厳しく眺めていると思ったら
相当なプレッシャーなんだろうと思った。
でもそこはプロで、知らない人の心も
わーっと束ねる力を持つ人たちばかりだった。

それにしても、どの演奏者表現者の中から
出てくるものが、それでも、恐ろしく中島みゆきだった。
実は、中島みゆきの曲、まともに聞いたことがなかった。
それはひょっとして人生を半分くらい損しているのではないかと思いながら聞いた。

言葉の持つ力、思いを増幅する力、
つきささる力を思い知らされたような一夜だった。

とんとんと乗り継いで、終電1本前で帰広。
ビールを買って、
今日という日にカンパイしたのだった。

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