燃えつづけるガラス
広島・八丁堀福屋本店7階ギャラリー101にて
「池本美和・西川慎
ー 夏のうつわガラス二人展 ー」
が開催中である。
平成19年7月5日(木)〜7月11日(水)
池本さんと西川さんは、山口県・山陽小野田市の
きららビーチという海岸にガラス工房を開かれている。
この3月、取材で訪問し、お話を伺い、
お二人のお人柄と、作品に対する思いと、
溶けて流れるガラスの美しさにすっかり虜になって帰ってきた。
これがお二人の「きらら工房」のすぐお隣にある
「きららガラス未来館」のホットショップ(見学可能な作業場)。建築は隈研吾氏。
山口県山陽小野田市焼野海岸
9:00〜17:00 毎週月・火・祝日休館
お二人は富山ガラス造形研究所で師事された世界的に著名なガラス造形作家の故・竹内傳治氏から、竹内氏の故郷である山陽小野田のガラス文化発展を託された。
2001年「第一回現代ガラス展inおのだ」で大賞・準大賞を受賞され、工房設立に至ったのだそうだ。
地元の人々も、最初はどんな作家先生が来るのかと遠巻きに眺めていたが、西川さんたちはトンテンカントンテンカン、すべて手作業で工房を作っていった。それを見ていた地元の人々も、だんだん心をひらいて手伝ってくれたり、工房を覗きに来るようになったそうだ。
この、ガラスを熱する炉も手作りなんですよ!
究極の「用の美」。ほんとに美しかった。
中に水指を入れていただきました。
やがて、もっと町の人々にガラスに触れてもらいたい!という地元有志の思いが募り、工房の横に自由に見学できてガラス作りに参加できる「きららガラス未来館」を建ててしまった。1200度で360日ほぼ焚きっぱなしの炉を2つも面倒みれない、と断ろうとも考えたが、地元の人々の熱意が勝る。今までにここで吹きガラス体験をした人はのべ4,000人にものぼるのだそうだ。
ここでは、幼稚園児たちの手型をガラスに加工したり、小学生たちがみんなで作品を作ったりしている。ちっちゃい子たちがわいわい作業するのである。もう大変。でもその時は青年会議所や婦人会のメンバーが総出で手伝ってくれるのだそうだ。地元に愛されている様子が伝わる。
そうやって大変だけど制作イベントをすると、自分では絶対作らなかったであろう作品が自分の中にソースとなって残っていくのだと。制作過程で新たなヒントを見つけることも多いという。
それが結実したのが、この春六本木にオープンした「東京ミッドタウン」にある「サントリー美術館」のエントランスロゴサイン。日本でも屈指のガラス収蔵作品を誇る「サントリー美術館」のテーマを象徴する作品だ。今開催中の福屋ギャラリーにその写真が置いてある。美しいブルーのガラス。圧倒的な存在感だ。
話しを伺いながらも、西川さんの手は休むことなくガラスの吹き棒をくるくると扱っていた。
「ガラスのなりたいかたちにしてあげるんです」
「ほら、焼けてる時のガラス、綺麗でしょーう」
命をもつもののように遠心力で一気に広がり、まるで美しい花が咲いたかのような。美を結ぶ瞬間。
「毎日うまくなりたい、と思って吹いてます」。
あれから今日まで、ずっとこの個展のために集中して作品を作ってこられたのだそうだ。
ギャラリーに一歩足を踏み入れると、この日を待ち望んでいたガラスたちがキラキラと光を放つ。
まだ、燃えているかのような美しいオーラだ。
きららビーチのあの海を瞬間切り取ってきたような青や、どうやって作ったのか想像ができない緻密な気泡や、水をたたえるとたちまち表情を変える器たち。
お二人もいらしたのでお話をいろいろと伺う。作り方を口で説明するのもすごく難しいのだと思うが、そのあらすじをちょっと伺うだけで気絶しそうになる。
たとえば、取っ手ひとつにしても、吹き手とサポートする人双方がその仕上がりのイメージを共有しないとうまく行かない。恐ろしく張りつめた集中の中での作業。言葉ではなく、感じることの交換だけで完成に向かうのだそうだ。しびれる・・・
精神と瞬間の結実を、目の当たりにしてください。
■「池本美和・西川慎 ー夏のうつわガラス二人展」
広島・八丁堀福屋本店7階ギャラリー101
平成19年7月5日(木)〜7月11日(水)
■きらら工房 M.M Glass Studio
山口県山陽小野田市焼野海岸
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コメント
『ガラスのなりたいかたちにしてあげるんです』
このフレーズ、鳥肌が立ちました。
心の在り方が素敵ですよね。
僕も努力してその領域にたどり着きたいと
思います。
投稿: doumori | 2007年7月 7日 (土) 09時42分
doumoriさま、ありがとうございます。
たぶん、ご本人はそんなこと無意識に話されてることなんです。
日々あたりまえのこと、なのでしょう。
でも、わたしもそのなにげない一言に、ぎゃーと思いました。
それぞれの仕事に、こんな「あたりまえのこと」が
あるんだと思います。
それをあたりまえにできること。すごいです。
作品(花瓶)をひとつ、頂いて帰りました。
自宅に飾って、戒め(!?)励みにしたいと思っています。
投稿: sunari | 2007年7月11日 (水) 14時26分
先日はありがとうございました。
うんうんと思いながら、読みました。
ガラス吹きに行ってみたいです。
投稿: ドゥジエム/山村 | 2007年7月12日 (木) 07時09分
山村さま、ありがとうございました。
お花、「おしゃれ〜!」「素敵〜!」と大好評でした。
喜んでいただけてうれしかったです。
ガラス吹いてみてください。
花器まで作ってしまいたいとか、やっぱり思ったりします?
投稿: sunari | 2007年7月13日 (金) 17時18分