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2008年5月 8日 (木)

判断の瞬発力


ひょんなご縁で、シティ・スーパーの方々とお仕事をご一緒させていただくことになった。

シティ・スーパーとは、西武百貨店が香港に出店した時の創業メンバーがつくりあげた都市型食材専門店。(今の成都西武は香港資本だそうですね)現在、香港に6店舗、台湾に2店舗を構える。

写真を拝見するに、吹き抜けの明るい店内に、近代的でぴかぴかの売り場が広がる。
主に日本からの「安心・安全」な輸入食材を販売する高級スーパーで、日本で言う紀ノ国屋とか成城石井とか、あるいはちょっとしたデパ地下、そんな感じか。

最初にお会いしたとき、ディレクターのK氏はとにかくいろんなことを話して聞かせてくださった。それは嵐のような勢いで。
1日に15000人の来客、
500坪で220億売り上げ、
1日300万お菓子を売る店、
1日700杯ラーメンを売る店、
香港の人々の、アゲアゲの購買熱が伝わってくるようだ。

衛生感、きちんと仕事をするという日本の丁寧さが売り。
しかし売り場には物語性が必要で、
「お客をいかに笑わせるか、これなのよ」
誰が買う!?カレー粉、棚一面カレー粉を陳列してみたり、
無駄なわさび、鮮魚コーナーの横に日本山葵協会(?)の会長の畑から毎週空輸したわさびでわさび田をこしらえてみたり。

日本のご当地フェアも熱い。
秋田フェアでは雪で本物の「かまくら」をつくって、水抜きしながら2週間。
鹿児島フェアでは芋ピラミッドが登場し、桜島が噴火、西郷さんがそりに乗ってた。
青森フェアでは冷蔵ケースが全部まっかっか、一面リンゴ。

とにかくお客さまを楽しませること。
本物は記憶に残らないといけない。
本当の資本主義、それは専門性と好奇心だ、と。

そうやって熱心に語って聞かせてくださるのは、一緒に関わる人にシティ・スーパーのやり方考え方心意気をわかってもらいたいからに他ならない。共感しない人とは仕事ができないからだ。

後日、宿題をひとつもらって再度お会いすることになった。

新店舗のロゴ提案だったのだが、方向性をさぐるべく複数案準備していったのに、A案秒殺、「これいいじゃーん!」と決まってしまった。

改めてびっくり。
「えーでは持ち帰らせていただきまして後日また改めまして」みたいなまどろっこしさは一切ない。こっちが拍子抜けするくらいだった。

しかし実はそれは、鍛え上げた判断力によるジャッジを見た瞬間でもあった。

考えてみればお客さんは気まぐれで、売り場なんて見る気で見てなんかいない。
通り過ぎる、その一瞬で、一秒で、
心を惹き付けられなくては終わりなのだ。

見た瞬間、いいか、悪いか、そのどっちかしかない。
数十年間、老舗デパートの売り場の現場で培われたその眼力はダテではない。

広告も、実はお客さんと直接対面するものなのに、どうもその「対決感」が欠けがちな気がする。広告制作者と、代理店と、クライアントと、なんだかあーだこーだ言ってるうちに知らず知らずお客さんと遠くなってはいないか。
ペットボトルの並べ方一つで売れ行きが変わる現場の、お客さんの視線に食らいついていく度胸。しびれます。背筋がのびる思いです。

その場に集ったシティ・スーパー・ジャパンの“パパ”O氏、K氏とぴったり息のあったS氏、店舗のワークフローを短時間で完璧につくってしまうS氏、それぞれがプロフェッショナルで、お互いを尊重し、理想に向かって進んでいける共同体。リラックスして楽しそうでいいなーと思いました。そういう会社の勢いが売り上げと評判をつくりあげるのでしょう。

City's Upper、都市生活の1段上をめざす企業。さすがです。

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コメント

確かに勢いのある人って、判断早いですね。なかなか、そんな人にお目にかかることはありませんでしたが。
カ○ー○○島の担当者なんて最悪。ぐちゃぐちゃ変更の末、始めの案が良かった!とか言い出すので、決定するまで過程のデータはすべて保存。始めのころは担当者の癖を知らなくて悲惨でした。後を引き継いだ会社もえらい目にあったそうです。

投稿: Meguri | 2008年5月 8日 (木) 23時42分

Meguriさんどうも。
社名、丸わかりだったので若干伏せたよ。
恨み節炸裂・・・おつかれさまどした。
もう、そういう不毛スパイラルからは脱出したいですな。

投稿: sunari | 2008年5月 9日 (金) 12時25分

あぁ〜失礼しました!私がどっぷり担当ではなくて、同僚が主に被害受けてたのですが、ちょっと例としてはキツかったですね。世間は狭いので今後気を付けます。

投稿: Meguri | 2008年5月 9日 (金) 22時24分

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