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2009年12月25日 (金)

楽しい勉強【フラワーアレンジメント「クリスマスデモンストレーション&レッスンイベント」前編】

 先日、フラワーアレンジメントの世界を、戸の隙間からのぞいてきた。
 その時の模様 → 楽しい勉強【フラワーアレンジメント・入門編】

 そしていよいよ、ドゥジエムさん主催、東京・代官山ヒルサイドテラスにお店を構える「フローリストイグサ」の井草隆氏を招いての「クリスマスデモンストレーション&レッスンイベント」に参加したのだった。

 ドゥジエムの山村さんは2年ほど前、プロ向けにおこなわれた花のレッスンで、講師として招かれていた井草さんと出会った。そのときの仕事の丁寧さに感動し、いつか必ず招きたかったのだという。
 井草さんの何がすごいと思った?と聞くと
 「細かいところを普通に全部やるところ」。まいっか、がないところ、だと。

 11月28日(土)、阪神トレーディング広島営業所(西区商工センターにある花の仲卸さん)。
 天井が高く美しいホワイトスペース。週に何度かはここに花の市がたつそうだ。

プログラムは
●クリスマスデモンストレーション&ワークショップ 13:30〜16:00
 テーマ:モミの香りで作るクリスマスセンターピース
 (オレゴン産の薫り高いモミを使用し、クリスマスまでご自宅で実際に楽しむ事の出来る、ベーシックでオーソドックスなスタイルのキャンドルアレンジメントを制作)
 
●クリスマスレッスン 19:00〜21:00
 テーマ:プロが作るクリスマスセンターピース
 (クリスマスまでお客様にしっかり楽しんで頂くためにセンターピースとして最低限必要な基礎の部分、早い時期から提案できるクリスマスセンターピース、お客様にそれをそう感じていただく為の提案する側の心の部分をレクチャー)

 この、「クリスマスデモンストレーション&ワークショップ」の参加者は、花屋さん(プロ)ではないが花が好きでご自宅にいつも花を飾る方々とのこと。
 わたしの仕事は、井草さん山村さんと参加者の方々の間に立ち、それは何か、それはなぜか、聞き出し理解の一助になるようにヒントを出す係だ。

 井草氏登場。
 今をときめく代官山のフローリスト、顧客は大使館公邸から芸能人の自宅、果てはびっくりするような大企業。さぞやキラキラしい方なのだろうと思いきや、非常にフラットな方だった。ぜんぜん気負った感じのない、さっぱりとクリアな方だった。

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 イベントに先立ち下準備開始。
 参加者がワークショップで自作するセンターピースの土台を作る。
 すぐにモミの枝をカットして挿せるように、バスケットにオアシス(吸水させて花止めに使うスポンジ材)を仕込んでセットしておくのだ。スタッフの皆さんが和気あいあいと準備をする中、まごまごしながらも手伝う。フローラルテープ切るぐらいならできる。猫よりまし。
 バスケットにセロファンを敷き、オアシスを詰め込む。
 オアシスはぎっしりみっちり美しく詰める。
 「生花のアレンジなら給水スペースがあったほうがいいけど、これはもう乾燥させてクリスマスを待つものだよね。乾くと動いちゃうから、ぎっしり詰める」

 そしてバスケットとオアシスをフローラルテープで固定する。
 井草さんと山村さんはフローラルテープをどのようにとめるか、その流儀について話をしている。籠目の間に通すように縫うか、針金で環をつくって通すか。

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 キャンドルもホルダーを使わず、針金をつかう。U時に曲げた部分をキャンドルにテープで止め、先に“かえし”をつけてオアシスに深く差し込むのだ。
 
 びっくりした。
 お客にはわからない、隠れちゃう部分になんでこんなに手間をかけるのか。
 あの、なんでそんなに頑丈にするんですか。見えないとこなのに。
 
 「だってお客さんが持って帰って少なくともクリスマスまではどんなことがあっても保たせなくちゃいけないわけでしょ。車にどかっと積んでも、テーブルから落ちても大丈夫ってくらいに作っとかないと」
 至極当然、という口調で答えがかえってきた。
 山村さんが言っていた「細かいところを普通に全部やるところ」って、こういうところから全部なんだと知る。

 お客さまがぼちぼち来場。
 「あ、これを」
 井草さん自ら選曲した「Dairy IGUSA」イメージソング集CDが登場。会場に雰囲気のよい曲が流れ始める。ただ教えるだけでなく、来場者に楽しんでもらいたいという思いでそうやって準備をされる井草さんの姿勢に頭が下がる。

 まずはデモンストレーションからスタート。
 ドゥジエムの店頭から選んできた素晴らしい花で、美しい花束を束ねていく。
 テーブルに広げられた花材を迷いなく選び束ねていく。
 お客さまは興味津々「あれは何の葉かしら」
 すかさず「これはね、アーティチョークの葉なんですよ。今日はこれがあんまり綺麗なんでどうしても使いたかったんですよね」。
 なんといってもデモンストレーションの醍醐味は、作り手の思いがその場で聞けることにあると思う。

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 大きなアマリリスや真っ赤な薔薇、アーティチョークの葉やらを使ったゴージャスで大きな花束が完成。テーマは「イグサクリスマス」代官山のクリスマスをイメージして。それはそれは見事だった。

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 次は「イグサの定番グリーンブーケ・秋冬バージョン」。花をほぼ使わない、グリーンだけのアレンジだ。
 紅葉した様々な葉を使ったブーケ。「これはなんというかな、山を束ねるイメージかな」。
 「自然をイメージすることが大事だと思うんですよね」。

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 井草さんには娘さんがいらっしゃって、それこそ花の英才教育ができる環境にあるわけだけど、「今は母親と土手で摘んできた花を飾るのを楽しむくらいでいいと思う」それが花に対する姿勢の基本なんじゃないかと思う、と。
 花そのものでなく、それがどんな場所にどう咲いていて美しかったのか。風、日差し、におい、その時の気持ち。そんな純粋な記憶こそ、得難い財産だということだろう。

 続いて「春をイメージしたフレッシュなハーブを使ったグリーンのミニブーケ」。
 テーブルの上にはいろんな葉っぱが並ぶ。
 野菜売り場でも見たことありますよこれ、ミント、ゼラニウム、セージetc。春を香りで表現するのだという。
 山村さんは側でアシスト。井草さんが手を伸ばすであろう枝を、その直前に下葉を始末し整えておく。自分が束ねるとしたら、という感覚があるからの阿吽の呼吸。

 同じグリーンにもこんなに様々な色形香りがあるのだと驚きつつ、でき上がったブーケをまじまじと見てさらに驚く。葉の向き、重なり、色、計算し尽くされていて、まったく見飽きない。自然な草原のように見えてそこには宇宙が表現されていた。

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 手を動かす井草さんにいろいろと聞いてみる。
 代官山のお客様はやっぱり、お花を上手に買っていかれるんですか?

 きらびやかなように見えて案外成熟した街だから、お客様も目が肥えていて育てられる部分も多い。上手に暮らしに花を取り入れる方も多い。だからといって3000円のブーケをお願いされることももちろん多い。そしたらもうフルパワーでやる、と。

 「もう、小さなブーケほどきちんとしないといけないと思うんです。たとえば500エンのブーケを頼まれたら、もうそれは絶対よそに負けないものを作ろうと真剣になります。
 1万円2万円のブーケなら、もう花材の勢いでまとめれば成立する。しかし500エンでは成立しない。小さいものほどミスが目立つ。たった500エンなんか、リボンつきません、そういう考え方もあると思う。でも僕は500エンのブーケこそ集中してつくりたい」。

 お客さんは店の前のバス停で、受けとった花束をじーーーっと見るのだそうだ。そのとき、500円だからこんなものしかできないんだと思われたくない、と。

 ここからはお客さまも手を動かして、クリスマスセンターピースを制作。
 配られたモミの木はオレゴンからやってきた木だ。過伐採を避けるため、ワシントン州とオレゴン州と、毎年交互に伐採するんだそうだ。ということで今年はオレゴン産。オレゴンのモミは乾いてもあんまりぱらぱら散らないそうだ。

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 「枝は捨てるところがありません。付け根だって使う。こうやって葉の裏からハサミを入れれば、表から切り口が見えないでしょ。そしたらこれで無駄なくオアシスを隠せる」。

Cut

 会場いっぱいに針葉樹のいい香りが広がる。ああ、クリスマスが来るんだなあ。
 皆思い思いにハサミを入れ、赤い実や松ぼっくりを飾っていく。
 井草さんも皆さんの手元を見ながらアドバイス。みんなの作品ができ上がる頃、すてきなリースも完成。

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 出来上がりに満足したお客さまは、それぞれ自分が作ったセンターピースを大事そうに抱え、車に乗り込んでいかれた。
 各家にひとつずつ、クリスマスを楽しみに待つ喜びが持ち帰られてゆく。

 ずっと見送っていた井草さん、
「いやぁ、こういう風景になるとは思わなかったな・・・」
 その表情はほんとうに、なによりも嬉しそうだった。

《後編につづく》

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