楽しい勉強【フラワーアレンジメント「クリスマスデモンストレーション&レッスンイベント」後編】
(前編からの続きです)
しばしの休憩の後、夕方のプロ向けレッスン。
実はわたしの役目としては前半で終了、の予定だった。プロとお客との間に立ちつなぐことはできたとしても、プロとプロの間には立てない。邪魔になるからだ。
プロは聞きたいことや聞くべきことが自覚できているし、直接聞けば言葉足らずでも理解でき言外のことまで感じることができるからだ。
でもそういうやりとりをちょっと側で見てみたいと思い、夜のプロ向けレッスンにも参加させてもらうことにした。
●クリスマスレッスン 19:00〜21:00
テーマ:プロが作るクリスマスセンターピース
(クリスマスまでお客様にしっかり楽しんで頂くためにセンターピースとして最低限必要な基礎の部分、早い時期から提案できるクリスマスセンターピース、お客様にそれをそう感じていただく為の提案する側の心の部分をレクチャー)
昼間と同じく、花束のデモンストレーションから。
昼につくった花束を一旦ばらし、ぜんぜん違う雰囲気に束ね変える。
「テーマは、1万円でグリーンの花束。グリーンの中でもまず“これが主役”っていうのを決める」。
キーパー(花の冷蔵庫)から選んで出して束ねるまで15分、レジして20分でやりたい。そのためにパーツとして並べた葉を整理して組むこと。下葉がきたないと絶対うまく束ねられない。スパイラルにはまらなくても、入って綺麗なら正解。自分の思うベストポジションで花を挿していくこと、などなど、昼とは違う細やかさで解説される。
「花を束ねることもエンターテイメントです。頼んだお客さまにきちっとした仕事を見せてあげることも大事」。
そして、「お客との勝負には勝たなきゃダメだ」と。
花屋は板前と同じだと思う、気負けしないで迷わないでスパッとやる、そして自分の世界にはめる。例えば3000円の花束で、あと一歩だと思ったら(利益を考えず花を)入れたほうがいい。お客さまの見ているものの一歩上を見せないと。客前でひけめが出たら負け。
そうやって、たとえ500円の花束だろうが、お客さまに「わあ、すごい」と思わせたら勝ち。その場の売り上げはたった500円かもしれないが、そのお客さまはその花で、いいお客さまに育ってくれるかもしれない。店を支える売り上げは大きな法人などが柱かもしれない。でもわざわざ店に来てくださる日々のお客に手を抜けないし抜きたくない。そう話された。
その一瞬の関係だけがよければいいのではなく、一瞬の感動が長く続くことを願う仕事。
花を手渡されたお客が感動し、それを贈られた人が感動し、生けられた花を見た人が感動し、花っていいな、花をプレゼントしたいな、花を部屋に飾りたいな、それがまた花を買うお客として戻る。その先のよい循環を見ながら、今の綺麗を束ねるのだ。
足下だけを見ていない、仕事の大きさを感じる。
ワークショップは昼の部と違い、各自土台をつくるところからスタート。
「土台となるここが一番大事だと思うんだよね。やってやりすぎることはないと思う」
まず、バスケットの底をならす。
「テーブルでいちいちがたがたしたらいやでしょ」
日々の調子は誰でも揺らぐ。いつもベストではない。それも自然なことで仕方ない。でもだったら、事前によくないところを早めに手当てしてつぶしておくこと。
例えばこのバスケットの底が丸くてぐらつくこと。
親父はとんかちで全部底を叩く。(井草さんは2代目、お父様も現役)
バックヤードは整理し尽くされていてすごく綺麗にしてる。そういう準備である一定の基準をキープできると思う。とのこと。
馴らしたバスケットにセロファンをみしみしっと手で入れ込み、吸水させたオアシスを詰めていく。
「あ、セロファンを手でバスケットに先に入れこむよね、それはやめたほうがいい。オアシスの重みで自然に入れて。セロファンは何度もしわがよるとそこから破れて水が漏れる。余計なしわはないほうがいいでしょう?」
今、セロファンのしわにまで心配りできる花屋さんがどれほど居るだろうか。
そんな土台の支度なんか超地味な作業だ。
それより華やかなデザイン、見たことのない新種の花々、それを誰よりもお洒落に素敵に束ねることにばかり気持ちは向いてるんじゃないか。
花屋さんだけではない。どんな仕事にも言える。
ぐらぐらの脚立の上で背伸びするような仕事をしていないだろうか。
花屋じゃないわたしも日々の自分を省みた。
基礎が大事、段取り8割、そんなことは当たり前でわかってると
わかった気になって、はしょってなかったかな。
あー
自分も含め、今日のこの話を聞かせてやりたい人が五万といるなと思ったのだった。
しかし花屋さんなら今日の話、なおさら染みただろうな。
センターピースが完成し、レッスンは終了。
「僕たちの仕事は今の綺麗を作ることじゃない。
贈られて持って帰ったその先、より長く美しく楽しんでもらえるために担保しなきゃいけない仕事がある。
例えば、水揚げのいい花はずっと綺麗に長く楽しんでもらえる。
花束の結束は輪ゴム使うと茎がつぶれて水が上がらなくなるからテープを使う。
そんなことの積み重ね。
それでこそ、贈る人の言葉にならないほんの少し先を
花に束ねることができるんです」。
カッコつけないカッコよさ、
気持ちが詰まってて自然、
井草さんの体現する仕事を垣間見させていただきました。
ほんとに楽しかった!
ありがとうございました。
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