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2010年9月 3日 (金)

楽しい勉強【サイエンスカフェ:葉緑体に開いた穴】

 広島大学大学院理学研究科主宰のサイエンスカフェが開催されました。

 今回で11回目。場所は東広島キャンパスのマーメイドカフェ。

 このサイエンスカフェのホームベースとなりつつあるカフェです。

 スナリ寺本は今回もファシリテーター(アホ代表司会者)として参加させていただきました。

 そのときの写真を送っていただいたのでご紹介します。

11回企画

〜開けゴマの分子機構〜

2010 8 28 () 14:0016:00

場所:広島大学東広島キャンパス マーメイドカフェ

【話し手】 古本強 (広島大学理学部準教授)

【聞き手】 寺本 紫織

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 暑いけれども秋の気配の西条キャンパス。

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 50人余りの方々が参加してくださいました。大盛況!

 カフェの前々日、古本先生と事前打ち合わせをしました。

 「きっと難しいから解らへんと思うんです。だから、来てくれた人たちには“植物ってすごい”って思って帰ってもろたらええんちゃうかな思てます。」

 ジェントルな神戸弁でそうレクチャーしてくださった古本先生。

 たしか高校のとき生物を専攻したはずだ。赤目のショウジョウバエの数も数えたはずだ。

しかし

 「あのー先生、光合成ってなんでしたっけ」

 「先生、ATPって何ですか」

 「あー・・・ATP知らなかったですか・・・アデノシン三りん酸ですね・・・」

 先日も香港の学会で英語でバリバリ発表されたばかりの古本先生だったが、素人にわからせることのトホウの無さに愕然とされているように見えた。すいません。


 ということで、前半のテーマは

 「植物ってすごいな」

 「膜ってすごいな」

 「生きてるってことと生きてないってことの違いはなんやと思いますか。」

 ここで先生の末娘ちゃんが登場してシャボン玉を吹くことになっていたが、あまりの大勢さに恥ずかしすぎて断念。「ほんならパパが吹くわ。ふーーー」

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 生きてるものの膜は、このシャボン玉とよく似た構造をしている。

 他との空間を区別する「膜」。この膜の中と外をなんらかの物質が行き来しないと生きてると言えない。でも無理に通ろうとするとパチンとはじけてしまう。ということは、なにか建物についてるドアのようなものがあるんではないか。

 

会場には小学生たちもたくさん来ていた。

 「ごめんなー、きみら光合成ゆうてもわからんやろ?ちょっとむつかしいわ。でもな、植物ってすごいんやで、知ってる?」

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 今地球上で一番でっかい生き物は、シロナガスクジラ。25m。

 化石だと首の長い恐竜で35m、といわれてる。 

 アメリカンレッドパインという木は、なんと樹高112m。

 「な、木はすごいやろ、じーーーっと黙ってずっとそこに立ってるんやで。先生なんか子供の頃わるさしてよう廊下に立たされたけどそんな立ってられへん。」

 そして18mの有名なもの

 「これが原因で火をつけたってニュースになってましたわ」

 「わかった・・ガンダム・・・」「正解!」

 宇宙で闘ってるときはすごそうだが、アメリカンレッドパインの林の中では小人のかくれんぼくらいにしか見えない。


 そして話は植物の「太陽電池」、光合成へ。

 植物は光エネルギーを葉緑体で受け、化学エネルギー(ATP)に転換する。

 葉緑体の中のクロロフィルという緑色の色素が光エネルギーに触れると「励起」し、その興奮をどんどん受け渡していくしくみ。

 「先生あれですよね、熱いヤカンを渡されるような感じですよね、アッチッチッチってすぐ隣の人に渡したくなる感じ。」

 「ええ、打ち合わせでは熱い焼きイモって言いましたけどね。」

 で、このクロロフィルたちは、光エネルギーを正しく伝達できない状態だと、熱と蛍光というかたちで発散するのだそうだ。

 アルコール抽出したクロロフィル溶液に紫外線をあててその蛍光を見る実験をして、参加者のみなさんに見ていただきました。

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 「真っ暗いところで見るとブワーッとピンク色っぽく光ります。」

さて後半は

「植物は地球環境も変え、進化する

 雑草の生き方から『ピルビン酸のあな』へ」

 「生きているってどういうことでしょう。学生に、まさに生きている!っていう写真を募集したところこんなんが届きました。」

 “ポイントをあげて雄叫びをあげるセリーナ”。テニスプレーヤーが天を仰いで吠えている。

 「一方、死にそうや、まさに死んだというイメージはこれでした。」

“燃えたよ・・・まっ白に・・・燃えつきた・・・まっ白な灰に・・・”

 「ホセ・メンドーサに破れたジョーですねこれ。」

 ジョーはあまりの激しい運動=無酸素運動を続けすぎたため、ミトコンドリアでのエネルギー(ATP)生産ができず、乳酸のたまりすぎでアシドーシスを起こして死んだのだそうだ。 ジョーの死因もわかるサイエンスカフェ。

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 さて、そこから話は「たくましい植物」の話へ。

 地球誕生から約46億年。誕生直後地球は二酸化炭素だらけだった。

 それが、海に解けたりしてだんだんCo2濃度が減っていく。生命が誕生し、光合成植物が出現すると、二酸化炭素濃度はぐーーっと減って酸素濃度がどんどん増えていく。

 植物たちは猛烈な勢いで二酸化炭素を消費していき、二酸化濃度はどんどん薄くなっていった。

 (今C02削減が叫ばれているが、急に増えたのはここ20年くらいの話)

 『やばいじゃん、このままじゃ光合成しにくくなっちゃうよー、えい!』

 ということで驚きの光合成システムを備えた植物たちが現れる。

 C4植物という。(進化しなかったものはC3植物)

 ふたつくっついた細胞の、かたっぽの細胞(葉肉細胞)の葉緑体で二酸化炭素の炭素(C)を濃縮し、維管束繊維細胞の葉緑体に効率よく受け渡す。大気中の二酸化炭素濃度が薄くても、自力でCを濃縮してエネルギー変換するたくましい植物なのだ。

 例えばタイヌビエ。田んぼの稲より生育が早い。大豆畑やサツマイモ畑も、管理が悪いとあっというまにC4植物畑になって収量ガタ落ち。

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 「これ、寺本さんがタイヌビエとまちがえて採ってきてくれたんですけど、これはメヒシバですね。これもC4植物です。うちのオヤジ(義父)、自分で畑やってるんですけど、これが一番にくたらしいと言っています。どんどろぐさ。」

 和名:スベリヒユ、コニシキソウ

 お客さんもあーという表情で深くうなづく。

 「うちはタコグサって言ってます」

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 抜いてもほっといたらまた根付く、脅威の生命力はカルビン回路をしのぐ「ハッチ・スラック回路」のなせる技なのだ。

 さて、その「ハッチ・スラック回路」の2つペアの細胞を、ばらばらにすることに成功した科学者がいた。金井・エドワードの両氏だ。

 エドワード氏は、このふたつの細胞を行き来し、葉緑体から出て行ったり、取り込まれたりする“穴”があるはずだと考えた。

 しかし1974年当時は「アホちゃうか」という冷たい反応で、その“穴”の正体も見つからなかった。

 それどころか、だれもその“穴”について研究すらしなかった。

 「てことは、歴代の科学者はそんな穴なんか知らなくていいわと思ってたんですかねぇ。」

 「・・・それを言われたらこっから先の話が・・・いや!知らんでええことない!知らないといけないんです。」


 そこからは、先生の研究の足跡をお話しいただいた。

 「みんながやってることをやっていてはダメなんやなと思いました。」

 「それはもうわかってることや、そんなん常識やということが、案外違っていた。それはほんまにホンマなんやろかと疑って、自分の考えはまちごうてないと思い続けてました。」

 そして、こうやったらどうやろか、と研究手法を思いついて3年、

 とうとう思った通りの結果が出た瞬間!!


 「やっぱりセリーナみたいに雄叫びをあげましたか。」

 「いや、まずこれはウソやろうと思いましたね。

 あと4回やってこの結果だったらほんまやと思おうと思って、2回目、やっぱりでた、3回目、大丈夫、4回目・・・・


 ぽろっと 涙がひとすじ流れました。


 案外、静かなもんやなーって自分でも思いましたね。」


 研究の最先端ていうのは、誰も見たことのない荒野なのだと思う。

 そこに立った瞬間は、しーんとしているんだと思う。

 

 事前レクチャーでこの話を聞いて、先生が見たであろう風景の凄さにぞくぞくした。

 来場者にその凄さが伝わるか、どうファシリテートすればいいのか、

 たぶん余計な言葉はいらなくて、古本先生自身の語る言葉を直接聞けば、なんかわからんけど凄いってことは絶対に伝わると思った。

 スライドの最後の写真は、ケンブリッジにて、エドワード氏と並んで写った写真だった。

 エドワード氏の表情はとても晴れやかで嬉しそうだった。


 最後に、寺田先生からひと言 

 「みなさん、ワールドカップでのあの本田のシュート、ご覧になりましたか?

 古本先生の研究はそれくらいすごい、世界が驚くものなんです。」

 研究者が言う例えは説得力があるなー。

ーーーーー(追記:寺田先生談)ーーーーー

蛇足ですが、本田のシュートのところで、「そこに至るまでの努力と、その場での閃きがあってこそ、世界の大舞台でbeautiful goalが生まれた。その凄いシュートに、皆さん立会ってるんですよ」というようなことを伝えたかったのですが、聴衆の最初の反応があまりにうすいのに慌てて、しどろもどろになってしまいました(笑)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 後日、来場者のアンケートを拝見した。

 「初めて参加しましたがなごやかな雰囲気で大満足でした」

 「いろいろなことを解りやすく教えていただけたのでよかったです」

 「皆にたたかれても真実を追究する姿勢はコペルニクスを思いだしました。科学者にとどまらず生きるために大切な事ですね」

 よかった。ほんとうによかったです。


 古本先生、スタッフのみなさま、ご来場のみなさま、ありがとうございました。

 次回サイエンスカフェは12月頃予定!

 おたのしみにー!!

 

 

 


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