« 遊び、研究、仕事、自由 | トップページ | クリエイティブディレクターなんかもういらない »

2010年10月26日 (火)

その4割をつくれるか

 先日広大に行った時のこと。
 サイエンスカフェでお世話になってるI先生とばったり出会う。
 「お時間あれば、お茶しましょう」
 ということで、ミーティングの後マーメイドカフェに向かった。

 「実はね」
 I先生が嬉しそうに見せてくれたのは、広島大学理学部の学生さんが「リサーチフェスタ2010」の活動報告部門で金賞を受賞したというニュース記事だった。
 詳しくはこちら

 I先生が担当している「科学リテラシー」の授業で、彼らが開催したサイエンスカフェなどの活動が評価されたんだそうだ。
 おめでとうございます!
 そう、次回の次、広島大学理学研究科主催のサイエンスカフェで彼らが登場します。テーマは『3D技術』。ヤングな彼らのフレッシュなプレゼンに老獪なファシリテーター寺本のつっこみ・・・邪悪ですね。若い芽を摘まないファシリテートを心がけます。お楽しみに。

 という話しから、話しは面白いように転がって珈琲もおかわり(I先生ご馳走さまでした)。

 そうそう、「科学リテラシー」って何だ?
 リテラシーとは、読み書きの能力ということだ。これがないと、日常生活に支障が出る。
 科学リテラシーとは、科学の基礎知識みたいなものだけど、ないと困るのか?
 たぶん、知らず知らず困る。
 言葉を上手にあやつる人が、言葉が下手な人を支配し搾取する。
 生きていく上で必要なこと、食料、エネルギー、そういうものの基礎知識がなくて、これがいいのです!と言われたら盲目的に信じる(あるいは排斥する)、怖っ!
 そういうことにならないための自衛手段としての「科学リテラシー」。
 難しい科学用語をかんたんで分かりやすい言葉に置き換えて伝えるスキルも当然必要でしょう。
 科学者は最先端を行くと同時に、裾野に水をやることもしなくてはいけないのだ。
 学生諸君はそういうことも学んでいるんだそうだ。

 「たとえば高校生に向けて模擬授業なんかしますよね。そこでの彼らの様子を録画して分析してみたんです。そうしたら、活発な活動内容となった授業を担当した学生たちはみな正しく言葉をしゃべっていない、ってことがわかったんです。」

 正しく言葉をしゃべっていない?

 「そう、たとえば『じゃあ、体積!』とか。体積をどうしろとか、ちゃんとした説明になってない。一方、『では体積はどのようにして測りますか』ときちんと話した学生のクラスでは、活発な授業に発展しないんです。」

 前者のクラスの高校生たちは戸惑うだろう。
 体積!をどうせよと?この人一体なにをさせたいんだ??測るの?ザワザワ
 後者のクラスの高校生たちは答えをさらっと答える。
 メスシリンダーです。とか。
 どっちが「いい授業」か。

 正しい答えを、ただひとつの答えを出さなくちゃいけない世界(たとえば大学受験とか)では、後者の学生がいい先生かもしれない。
 しかし、「科学リテラシー」は、ほいっと投げられた疑問のかたまりにいかに自力で切り込めるか、という能力を養うわけだから、言葉足らずな前者の学生のふるまいが正しかった、そういうことかもしれない。

 その話しを聞いていて思い出した。

 NHKの朝のテレビ番組に、姜尚中氏が出演されていた。姜さま〜と黄色い声が上がるほどの人気ぶりの氏の素顔を紹介する、という番組だった。支度しながら見るともなく見ていたのだが、へーーーと面白いことを聞いた。

 朝まで討論番組では、論客たちが他人の発言を遮って声高に自論を主張する。
 がしかし、姜氏がしゃべりだすとぱたっと静かになり、みな耳を傾ける。
 視聴者の方からの質問FAX「つい耳を傾けてしまう話し方のコツはなんでしょう」
 「それは、6割話す、ということです。」
 そうすると、残りの4割を考えながら聞いてもらえる、と続けられたと記憶している。

 6割話す。

 自分が言いたいことの6割しか伝わらないことを想定して話す。

 がんばって話せば、熱心にしゃべれば、全部伝わるなんて幻想だよなぁ。
 やいやいと10言い放って、伝わるのは何割だろう。
 6割話し、欠損した4割を想像しながら耳を傾けてくれたら、
 伝わる歩合はいっぱい言うより大きいはずだ。

 わたしなんて、10どころか120%の勢いでしゃべり倒しちゃうからなぁと反省した朝だった。

 

 言葉足らずな授業をした学生は、その足らない4割でクラスのみんなを巻き込んで考えさせ動かした。
 偶然かもしれないけど、彼はきっと大事なことを体得したんじゃないかな。

 10のうち、なにを6として話すか。
 のこりの4を、どのように機能させるか。

 「よく伝えるリテラシー」は奥が深いようだ。




 

|

« 遊び、研究、仕事、自由 | トップページ | クリエイティブディレクターなんかもういらない »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/108777/49852276

この記事へのトラックバック一覧です: その4割をつくれるか:

« 遊び、研究、仕事、自由 | トップページ | クリエイティブディレクターなんかもういらない »