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2010年10月 4日 (月)

思いつく準備

 スナリは思いつきでものを言う。  

 思いつきでものを言うというのは褒め言葉ではない。
 そう言われたら、もっとしっかり考えろよお前、ということである。  

 しっかり考える大事さはこれまでイヤって言うほど聞かされてきた。  
 コピーライター養成講座に通ったときも、「まずは100本書く」「様々な視点からあらゆる角度でものを考えて書く」という先人たちの教えに従って書いた。    
 たくさん書いて書いて書いていくうちに、こりゃろくなコピーは書けないなということだけわかった。  広告界の第一線できらきらと活躍される講師たちに直接合い、話しを聞き、一緒に飲んだりできたことは大変勉強になったのだが、出された課題を繰り返し読んでも、その問題を解決する気がまるで起こらないダメな生徒だった。コピーライターには向いてないことだけ確認できた。  

 というスナリのダメぶりを自慢したかったわけではない。
  「思いつき」の地位向上を訴えたかったのである。

  先日、とあるプロジェクトに名前をつけた。  
 それは、他の人にその内容を説明する場面で“口からついて出た”。
  「・・・なーんていうですね、そんな感じで考えてます」  

 いくらなんでもそんな口から出任せではと、改めて考えてみたのだが結局それを上回るアイデアが出てこなかった。  
 むしろ、そのアイデアがたいそうよくできてることに気がついたのだった。  
 それからの時間は、そのぽっと出のアイデアに理論的な裏付けをする作業に費やされた。  

 これまでもずっとこうだった。  
 たいがい、打ち合わせの席でひらめいたり思いついたりしたことが正解で、ぐるぐる考えてむりやりたどり着いたものは精度を落とした。  
 でも「思いつきでものを言うな」という倫理観が自分のいい加減さを叱っていたのだった。
 もう、しっかり考えて思いつかなきゃだめだめ、と。  

 しかし、その正解のアイデアの「思いつき方」にはいくつかの条件があることに最近気がついた。

  ◎まず、やる気があること。  
 いやこれは自分にとって大事な条件なのだ。
 その案件に興味関心があり対象が好きで、それはいいとか、それはたいへんだなんとかしなければといった前向きな気持ちがないと思考がスタートしない。  
 よって、嫌な相手には力が出ません。ご了承ください。

    ↓
  ◎そして、なにげにずっと気にかけていること。  
 よし考えるぞ、と紙と鉛筆に向かう と出てこない。だけど、その案件が気になって頭の片隅にひっかかっている。夜寝る前に考え事をすると、寝てても脳がちゃんと働いて思考を整理してくれると いう都合のいい話しを聞いたことがある。よって気になりながらも半分忘れてさっさと寝てしまう。

    ↓
  ◎最後に、なんか言ってみること。  
 たとえ考えがもやもやと頭の中でまとまってなくてもいい。とにかく誰かに話すこと。  
 相手にわかるように話しを噛み砕いたり例えたり、これまでの経緯やなんかを話していると、面白いように、まるで完璧に理解できているかのように説明している自分がいる。
 その中に「黄金の思いつき」が転がる。  
 転がったそれを自分の耳で聞いてはっとする。
  これだ、と確信する。  

 そういう過程をふまえた思いつきなら、ただの口から出任せではないと思うのだ。うん。

 思いつきをただの口から出任せにしない条件もあるのだと思う。

  ◎ 無意識の海を豊かにしておくこと。

 たぶん、やる気という前向きなベクトルで放り込まれた案件が、海の中でゆらゆらしてるいろんなもののある欠片に触れることでスパークし、意味のある言葉として意識に上がってくるんじゃないかと思うのだ。

 いろんなムダなものがいっぱいたゆたってる無意識が強い。 

 ではその無意識をどうやって鍛えればよいのか。  

  内田樹氏が、レヴィ=ストロース 「野生の思考」からマトグロッソに住むインディオたちの生きる構えを紹介している。森を歩いていると、なんだかよく分からないものに出くわす。それをじ いっと見て、「なんだかよくわからないけど、そのうち何かの役に立つかもしれない」と背中の合切袋にぽいと放り込む。  袋の容量には限界がある。なんでもかんでも入れられない。  だから、今はわからないけど、のちのち役に立つかもしれないものを先駆的にわかる能力を発達させるのだと。  そして、イザというとき、その袋の中に手を突っ込んで、あるものでなんとかして乗り切るのだ、と。

 お粗末な合切袋を背負って、森を歩くように暮らすべし。
 もっと野生でいこうと思う。

 ということで、一見いいかげんにだらだらしゃべっているのはムダでありながら非常に有意義な仕事中なのです。誤解なきよう。

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