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2010年12月 3日 (金)

楽しい勉強【サイエンスカフェ:隕石とナノテク!?】

 広島大学大学院理学研究科主催のサイエンスカフェが開催されました。

 ファシリテーター(聞き手)として参加してきましたのでご報告。
Chirashi

第12回企画
隕石とナノテク!?

【日 時】 平成22年11月27日(土)午後2時~4時
【場 所】 広島大学東広島キャンパス 
     マーメイドカフェ広島大学店
【話し手】 圓山 裕(まるやま ひろし)広島大学大学院理学研究科 教授
     小嗣 真人(こつぎ まさと)SPring-8/JASRI 研究員
【聞き手】吉田啓晃 寺本紫織 

【テーマ】
「磁石の話 ~鉱物から学ぶ物質科学~ 」(圓山)
宝石やパワーストーンは美しいだけではありません。鉱物から多くの事柄を学び,私達は日常その恩恵を受けています。磁石を例に,身の回りにある磁性材料を紹介します。

「隕石からはじまる新しいグリーンナノテクノロジー 」(小嗣)
地球には年間数万トンの隕石が降ってきます。ところが地球上の鉱物とは異なり多くの謎が残されています。この性質をナノテクの顕微鏡で調べてみると・・・

 今回、「物性物理」。 わたしの人生にまるで接点がなかった分野。
 あわててにわか勉強したけど謎は深まるばかりだった。
 光ってなに? 磁性ってなに? ナノってなんなの?・・・・

 圓山先生に事前レクチャーをしていただいたのだが、頭を抱えつつ本番を迎える。

Akimo

 

 秋も深まる西条キャンパス。強力な晴れ男晴れ女スタッフによりすばらしく快晴。

 はるばるSPring-8からお越しの小嗣先生と事前打ち合わせをする。

 名刺を拝見してびっくり。SPring-8・・・財団法人高輝度光科学研究センターは兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1。コウトって、かっこいー。
 「山をがーーっと切り拓いて建てたんですよ」
 「光都ってわりには他になんにもないけど。光も建物の内部にしかないくらい夜は真っ暗だし」 「へー」
 などと言っている暇もなく、本日のお話をざっとレクチャーしていただく。

 軽くランチ、スタッフ集合しセッティング。
 今回はいつもの学生スタッフたちがお休みで、代わりに自分たちも授業の一環としてサイエンスカフェを運営している学生さんたちが手伝ってくれた。 「理数学生応援プロジェクト」に参加している学生対象の「リサーチフェスタ2010」活動報告部門で金賞を獲得したチームの面々。頼もしいぜ。

 お客さんたちがやってきて、いよいよサイエンスカフェスタート。

 たくさんご来場いただきました。珈琲飲みながら耳を傾けるみなさん。

Sankasya

 ますは、圓山先生のお話。
 最近人気の「パワーストーン」のお話から。

 「8月の誕生石ペリドット、これはオリビン(かんらん石)とパイロキシン(輝石)からできています。
 これが、もっと地中深くなって高温高圧下で変成し、スピネルになります。
 それがさらに深いところでは、1月の誕生石 ガーネットになるんです。」

 このペリドット→スピネルの境目は“構造層転移”、イメージで言うと、0℃以下に冷やした過冷却水になんか衝撃を与えるとばばばばっと凍るように、変成するそうだ。
 目には見えない、分子構造がかわることが“カタストロフィック”に伝わることにより、地震を引き起こすことがあるんだそうだ。へーーーーナノ不思議。

 その、地中深くで起きている分子の変化を実験で見るには、「高温・高圧、さらに磁場をかけながらX線で見る」という技が必要だ。

Diamond

 

 「それがこのダイヤモンド・アンビル・セルなんですね。」
 地球上でもっとも堅いダイヤモンドで小さな空間をぎゅーーーっと圧力をかけて地中の状況を再現する装置なんだそうだ。 
 研究の発展は計測機器の技術革新に伴われてるんですね。

 で、先生は磁性のご研究をされている。

 約30数年前、磁気光学効果が大きい物質を日本人科学者が発見した。
 ヘマタイトに、いろんな希土類の酸化物を混ぜて溶かして結晶化させてみた。
 で、ビスマスを加えて作ったそのその物質は、他のなによりも「旋光性」が高かった。
 その分子構造は“コランダム型”、つまり、ガーネットと同じだったんですね。

Ganetto

 真ん中の、赤い石は天然ガーネットの単結晶。

 

IT技術、光による情報通信技術は、こういう基礎研究の発見により大きく躍進してきたのであった。

 各ご家庭の光ケーブルの先っちょには、人工のガーネットが埋まってるそうですよ。
 この人工のガーネットのトップメーカーは日本にあり、そのシェアは8割なんですと。  
 ほーーーー。
 「ハウジングはほとんど中国でされてますけどね・・・」  ほぉ・・・・・・・・。

 「とにかく、若い研究者には『前人未到』に踏み出す勇気を持ってほしい。
 あのダイヤモンドの鉱石だって、割ってみなければ中にダイヤの結晶があるなんてわからなかったわけでしょう? 鉱石を割ってみる、挑戦する勇気が必要です。」

 綿々と続く基礎研究の流れの中で、ブレイクスルーを引き起こす「勇気」。

Supineru

 しばし休憩を挟みます。

 会場からの質問に答えていただきつつ。むちゃくちゃプロっぽい質問をされる方もいらっしゃいました。

 後半は小嗣先生のお話。

 「まずは自己紹介から。
 じつは趣味はカフェ巡りでありまして、今回このようなカフェにお招きいただいて、実に趣味と実益が一致した大変嬉しい機会なのであります。」

 話題ははやぶさが“はじめてのおつかい”に成功し持ち帰った小惑星イトカワのかけらから。
 このかけらがなんでイトカワのものだとわかるのかというと、はやぶさがリモートセンシング(上空から測定)した地表物質のデータと一致したからなんだそうだ。地球のカンラン石とは違うねってことがわかった。

Photo

 で、このカケラ、もっと詳しく測定・分析されるのだが、SPring-8にて小嗣先生も携わるんですと。

 「あんまり詳しくしゃべっちゃうと刑事告訴されちゃうんで・・・」トップシークレットなんですな。

 で、測定機器 「光電子顕微鏡」の仕組みを勉強。

 ふつうの顕微鏡は、対象物に可視光をあてて、反射した像を見る。
 電子顕微鏡は、対象物に電子をあてて見る。
 光電子顕微鏡も同様に、放射光(フォトンスピン)をあてて見る。
 その分解能(解像度)は、国際宇宙ステーションから卓上のオセロゲームが見えるくらいなんだそうだ。
 より小さいものが見えるだけでなく、磁性の向きまで見えてしまう。

 磁性体に、右回りのフォトンスピンをあてて映したものと、左回りのフォトンスピンをあてて映したもの、の差分をとると明暗の強弱が現れる。これが磁性の向き。

 ざっくり説明を試みたがどっか違ってるかも。ともかく、目に見えないものが見えるのだ。

 それを使ってなにをしらべたかというと、これ。

Gibeon


 鉄隕石だ。
 この断面に現れる幾何学模様は「ウィドマンステッテン構造」という。1800年代に、ウィドマンステッテンさんが見つけたのでこう名付けられた。

 そう、隕石は太古の昔から地球にバンバン降ってきてるから、昔から隕石を調べる研究はすすめられてきた。
 こういう幾何学的な構造は、地球上に存在しないこと、
 色違いの部分の物質は何でできていて(鉄とかニッケル)、地球上では人工的に作ろうにも再現できないことなどがわかっていた。(1万年に1℃というスピードでゆっくり冷えたからこうなった)

 小嗣先生が調べたのは、鉄隕石の磁性だった。

 すると不思議なことがわかった。

 色が変わってる境界を見ると、鉄リッチな部分と、ニッケルリッチな部分、磁性の向きが向かい合っている。
 磁石でいうところのS極とS極が向かい合ってひっついてる。(ヘッドオンという)
  なぜ??
 その間にある物質に秘密があるのではないか。
 そこにはテトラテーナイトという、地球には存在しない物質があることがわかっていた。

 こいつが鍵を握っているにちがいない。

 テトラテーナイトの磁性を調べると、高い磁気異方性をそなえ、高い保磁力がある。つまり、外からの磁力に対して性質を変えにくい、非常にガンコなやつだったのだ。
 鉄やニッケルは磁気異方性が低く、影響されやすい軟弱なやつらなので、間にガンコ者のテトラテーナイトが「わしゃこっちじゃ!!」と主張すると、まあそんなもんかなとそっちの方を向く、なので、ヘッドオンしていることがわかったのだ。
 もちろん、世界初。

 この磁性がヘッドオンしている様子を捉えた写真が、日本金属学会 金属組織写真最優秀賞を受賞。インターナショナルな金属学会でも受賞された。

 金属学会では、薄くて軽くていい素材となりうる、人工的に創り出した金属組織ばかりが注目されていた。
 そこに「鉄隕石」。 
 「こう、まるで違う方向からのアプローチだったんでみんなびっくりしたんじゃないですかね。鉄隕石も考えてみれば金属だよね・・・と」

 この、隕石から新しい磁性体を発見したというニュースのインパクトは大きかった。
 『子供の科学』にも記事が掲載された。
 「自分もちっちゃいころから読んでた雑誌に載ったのが、いちばん嬉しかったですね。」

 で、この新しい磁性体・テトラテーナイトがなんの役に立つのか。
 ものすごい役に立つかも、なのである。

Debais

 これ、パソコン内部にあるハードディスク。
 つまり、このぴかぴかの円盤の表面に、磁気で情報を書き込んだり取り出したりしてるわけですね。
 ここに使われている磁性体には、鉄プラチナが使われてる。
 プラチナって、今話題のレアメタルですよ。しかも金よりお高いですよ。
 テトラテーナイトは、この鉄プラチナに匹敵するような磁気性能があることがわかったのだ。
 しかも原料は鉄とニッケル。安くて豊富な資源でできれば、いいですよね。

 現在東北大学でこのテトラテーナイトを人工的に作る研究が進んでいるんだそうだ。
 なんと、鉄とニッケルの分子を1分子分ずつ吹き付けて、層にしてるんだそうですよ。
 「そうなんです。       あ! シャレじゃないですよ・・・」

Kotsugi

 最後のスライドは「2001年宇宙の旅」の1シーンだった。
 「こう、モノリスという謎の物体が空から降ってきてですね、それにおそるおそる触れた猿が、進化を遂げるんですね。未知なるものとの接触がブレイクスルーになるんだと。」

 小嗣先生にとってのモノリスは、鉄隕石だったわけですけど、そもそもどうして鉄隕石だったのか。

 話しはさかのぼること数年。小嗣先生が広島大学に在籍していた時のこと。
 「当時はポスドクで身分も不安定で、行き詰まっていまして・・・」
 ある日、圓山先生の部屋に伺い相談すると、鉄隕石のカケラを手渡されたんだそうだ。

 なんて美しいんだ!
 その、ウィドマンステッテン構造を持つ鉄隕石から、「オレヲハカッテミロ!」という声が聞こえたそうだ。
 そのとき、圓山先生から
 「孤独に耐える覚悟はありますか?」と。

 ありま・・・せんとは言えず、とにかく、その構造になにかあるに違いないと研究しはじめ
 あの磁性のヘッドオンの理由を突き止めるまでに6年、かかったそうです。

 ちなみに圓山先生はなんで鉄隕石を持っていたのか。

 かつて海外で研究をされているとき、研究者仲間にたいへんロマンチックなイタリア人がいた。みんなでなにを調べたらおもしろいだろうか、と話しをしていて、そのイタリア人が
 「隕石なんかおもしろいんじゃない?」と。 「隕石〜〜〜!?」

 そのまま忘れかけていたが、あるとき人に鉄隕石のかけらを見せてもらい、その断面の美しさに驚いて入手したんだそうです。

 隕石だけに、人から人へ、流れ流れて光を放ったんですね。とうまいこと言ってみた。

 終了後、がっちり握手を交わす師弟愛。

Shiteiai

 

 以下、寺田先生の後日談。

ーーーーー

「見えない物を観る」ことで、科学は大きく展開していきます。
私も含め多くの隕石の研究者が、鉄隕石のウィドマンステッテン構造を眺めてきましたが、その「界面の磁性」がどうなっているのかという眼で観た事はなかった。物性がご専門のお二人の先生には、我々には見えない何かが観えて研究に取り組み、大きな発見をされた。その着眼点(センス)に感心しました。

ーーーーー

Bunshi

 分子構造模型おつかれさま。
 スピネル型とコランダム型(よーく見ると何度も竹串を刺し直したあとがある)
 圓山先生にもらっていただきました。

Konsei

 これは、鉄の中にペリドットらしき鉱物が混在してる隕石。

 美しい!(けっこうお高いらしい)

 まだまだ解かれていない謎がたくさんあるんだ。隕石に隠されてる暗号が解読できる未来はいつなんでしょうかね。

 

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