I♥エンスー Vol.14 スーパーカー幻想
中国新聞 中古車情報サイト「チュレカ」(2011.3末でクローズ)に連載していたコラムのバックナンバーです。
【2008.8.25 掲載】
I♥エンスー Vol.14 スーパーカー幻想
兄A氏はこう言った。
「ほんとうに欲しい車は、やっぱりスーパーカーなんだよね」と。
彼がスーパーカーに憧れを持つのは、少年時代の影響が大きい。
そういえばうっすらと記憶にあるぞ、かつてのスーパーカーブーム。
1970年代、池沢さとしの漫画「サーキットの狼」がブームの火付け役だと言われている。
「週刊少年ジャンプ」に掲載されたその漫画を読んで、少年たちを熱狂の渦に巻き込んだ、らしい。 (なんでも実在する超高級外国車が箱根なんかをわんさか走る設定が受けたらしい)
テレビでは「対決!スーパーカークイズ」なんてクイズ番組があって、マニアなスーパーカー小僧たちが競って回答していた。
学校の近所のガチャガチャではスーパーカー消しゴムなんかが人気だった。
ボールペンのノックを利用して走らせたりするのだ。
少年だったA氏もスーパーカーブームの洗礼をどっぷりと受けた世代だ。
やがて彼らは大人になり、自ら稼ぐようになり、余裕もできる。
も、もう消しゴムじゃなくて、本物が買えるんだ!
数十年の時を経て今こそ叶えるぞ!かつての夢だったスーパーカーを手にするんだ!!
という「元」少年も多いようだ。
しかしA氏はこうも言った。
「スーパーカー、確かにいいと思っている。憧れだよね。
だけどそれは、
何事にもどっぷり夢中になれる10代に刷り込まれたからいいと思っているのか、
それとも本当に価値を認めていいと思っているのか、
まだ正確なジャッジができないでいるんだ。
ほら、音楽だってそうでしょ。
昔夢中になって聞いた音楽も、今聞くと元ネタがわかっちゃって
そっちの元ネタの方がいいと思えたりする。
もちろん、今聞いても鑑賞に堪えられる音楽もあるけど」。
「憧れ」は妄想の中で美しく育つ。
数十年の時を経て、その憧れを今まさに手にしたとき、
「今」のスーパーカーが、想像の中の美しさに叶わなければ、
「なんだ、こんなもんか」。
と思うことになる。
数千万払って幻を買う、というのはちょっと皮肉すぎるか。
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