I♥エンスー Vol.36 ツーな車検
中国新聞 中古車情報サイト「チュレカ」(2011.3末でクローズ)に連載していたコラムのバックナンバーです。
【2009.6.26 掲載】
I♥エンスー Vol.36 ツーな車検
ある日愛車はなみ号(とある輸入車)のディーラーから手紙が届いた。
あなたのお車はそろそろ法定車検の時期ですよってに、という内容だった。
法定、というからには絶対受けなきゃいけない車検なんですよね。
お見積もり、の欄を見て気絶しそうになる。そっと仕舞う。
って仕舞ってる場合じゃない。
ちょっと兄A氏に相談してみようそうしよう。
「なに、車検なの。あーそう。自分でやってみる?」
いやいやいやいや、無理です無理です結構です。
「かーんたんよー。楽しいのに」
あのー、やっぱこれくらいかかるのかな、料金。
「うーん、まー、ディーラーさんにおまかせしたらきっちりやってもらえていいんですけどねー。リーズナブルに済まそうと思うならー」
思うなら!?
「運輸局指定の民間車検場、って手もありますね」
ほほー。
「そこで車検通すだけ通す。で、ディーラーで整備。ブレーキオイルとラジエタークーラント、エンジンオイルとフィルターはディーラーで変えてもらうのよ。
で、ディーラーさんには、あ、車検は通してきましたから整備だけお願いって言えば、お客さーん、分かってるね、なんて言わないとは思うけどそれで十分」
なるほど。いいこと聞きました。
ということでさっそく民間車検場を予約する。
案外人気なんですね、予約が一杯でなかなか思う日時にとれなかったがなんとか予約。
指定された日時に行くと、まずは車検証や自賠責保検証明書、自動車税の納税証明書などを提出。書類に記入し、捺印している間にはなみ号はさっそくリフトアップされていた。
あとは待つだけ。自由にいただけるコーヒーやいろんな雑誌をめくりながら時間をつぶす。
ボンネットをぱかーと開けてリフトアップされたはなみ号は、数人の青いつなぎを着たスタッフになにやら下から点検されている。タイヤも全部外されている。
蛍光ライトで照らしながら、ちっちゃいトンカチで足回りをかんこんたたいている。
鉄筋コンクリートの劣化を調べるあの要領ですね。
びろーんと前の方からエアコンのフィルターのようなものが出てきた。
あんなもんが入ってたんだ。知らなかった。
さてリフトが下がりタイヤを取り付けてもらって、次はなにやらいろんな点検マシンがある部屋に移動。下がローラーになっていて、走っても走っても進まない機械にのっかる。なんでも「マルチテスター」といわれる機械で、スピードメーター・前後ブレーキ・駐車ブレーキ・ヘッドライト」のテストが一台でできるものなんだそうだ。はなみ号もウィーンと凄まじい勢いで空回りしている。
待合室から見える表示に、「光軸、○」などと点灯していく。無事全部の項目にマルがついて終了。
名前を呼ばれて確認に行く。
「えー法定56項目分解・点検、日常点検10項目を実施いたしました。異常はございませんでしたので、車検は無事終了いたしました。が、お客さまのエンジンオイル、前回換えてからもう9000Kmも走っておられます。だいたい5000Kmで交換が目安なんですけど、交換してもよろしいですか、もうずいぶん汚れて真っ黒ですし。あとは、ブレーキオイルももう交換された方がよろしいです。あとは、バッテリーもそろそろ寿命ですので換えた方がいいと思いますが、お取り寄せになりますのでまた次回5000Kmオイル交換時にでも交換しましょう」
ははー、じゃついでなんでやっちゃってください。
それからもう数分待ち、料金を支払って終了。ここまで1時間程度であった。
いや実にカンタン。代車を手配してもらう不自由もないしこりゃいいわ。
ディーラーお見積もりからだいたい3万円くらい安かった。やったね!
ほくほくして兄A氏に報告。
いやーおかげさまで無事済みましたー。早かったし、なんたって安く上がったし。なんかオイルまで換えてもらっちゃったよ。
「え!オイル換えたの!」
あ、そういえばオイルやらなんやらはディーラーで換えろと言われていたっけ。
「そこで換えたオイルの粘度は?」
ねんどー!?しりません・・・
「あのね。車にも血液型があるんですよ。車の血液、つまりエンジンオイルだけど、その車に合うオイルってのがあるの。5W-20とか10W-30とか」
ひー!血液型間違えたら死んじゃうじゃないですか!
「うーんまあ死にはしないんだけど。きっとその民間車検場で使ってるオイルは国産車に合わせた中級くらいのリーズナブルなオイルを使ってると思う。だからってエンジンにすぐにダメージを受けるってわけじゃないんだけどね。
でもアナタの車は、一回のオイル交換で2万Km走れるはずなんですよ。純正のオイルを入れればの話ね。だいたい、5000Kmごとにオイルを交換しなくちゃいけないなんてもったいないでしょ。エコじゃない。だから、長持ちするよいオイルを使ってなるべく交換しなくて済むようにエンジンもオイルも研究してあるんです。安いオイルをちょくちょく換えるよりリーズナブルだし、第一エンジンへのダメージが少なくなるように考えられてるんだ」
そうなんだ・・・
「それからバッテリー。昔はだんだん弱くなってキュルルルルってエンジンがかかりにくくなったりして、それを無理矢理保たせたりしてたけど、今のバッテリーは違う。最後のさいごまで全力を出し切る。ぎりぎりまで力を出し切って最後に一瞬で力つきるようにできてるんだ。だから動かなくなったら換えたらええ」
えーそれって困るんじゃ・・・
「たいがい駐車場でそうなるから、JAF呼んだらええがな。
あとラジエタークーラントは換えないと。ラジエター腐るぞ」
なんすかそのクーラントって。
「水よ水!ラジエターの冷却水!」
ええっ、水が入ってるの!?
「・・・あのねぇ、車ってたいがい水冷式なの。で、その水が凍ったらエンジン動かないでしょ。だから不凍液っつー水が入ってるの。熱くなったり冷めたりを繰り返すわけだから、確実に劣化していくの。だから交換しないとラジエターだめになるぞ」
じゃあ、そのラジエターの水と、えーとエンジンフィルターだっけ?ディーラーで交換してもらえってやつは。
「フィルターはオイル交換のときじゃないと換えられないの!だからそれは次回。
水だけ換えろつったらディーラどんな顔するかな・・・まあともかく換えてもらいなさい」
いやしみじみ思いますね。
安く上げようとする、その「差額」はなんなのかと。
それは車検に限らない。
旅行代理店に頼むのか、チケットや宿を自分で手配するのか。
経営コンサルタントにアドバイスを求めるのか、自分で頭をひねるのか。
プロや専門や代理店に頼めば楽で確かだ。
「差額」は、その知恵料・手間料・安心料である。
その「差額」を節約したければ、知恵を身につけ手間を惜しまず、自力で安心を獲得しなくてはならないのだ。
なんでも人任せは高くつく。
ま、プロにまかせても安心かどうか判断できなければ、払った「差額」もムダなんですけどね。
ということでラジエタークーラントの存在も知らないわたしのような人間が「差額」を惜しむのは100年早いような気がしたのだった。
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