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2011年8月27日 (土)

I♥エンスー Vol.45  クルマの元気

中国新聞 中古車情報サイト「チュレカ」(2011.3末でクローズ)に連載していたコラムのバックナンバーです。

Ensu

(2009.11.16 掲載)


 I♥エンスー Vol.45  クルマの元気


 秋の空は高く、風は涼しく、ロングドライブにもってこいだ。
 ということで家族4人で小旅行にでかけた。
 オットとわたしと息子と、愛車“はなみ号”と。

 我が家の場合旅といえば目的地に必ず温泉がある。
 今回は鳥取・岩井温泉。1300年の歴史を誇る山陰最古の温泉で、目指す宿の大浴場はなんと足下から適温の湯が直に湧いて出る源泉。直立して入っても胸まで浸かる独特の深い湯船。「日本秘湯を守る会」に参加のその宿は全国からコアな温泉通が集う宿だ。

 秋晴れの中国道を軽快にドライブ。なんだかんだととりとめのない話をしながら笑っていると、

 ピーーーーーーッ!

 鋭い警告音とともに、フロントパネルに表示が現れた。

 「CHECK OIL LEVEL」

 しーんと静まり返る車内。
 「チェックオイルレベルって」
 「オイルのレベルをチェックしろって」
 「オイルのレベルがどうかなってるってこと?」

 助手席のわたしは慌てて取り扱い説明書をとりだして、警告灯の項目を読んでみる。

 「黄色の警告灯が点灯した場合(エンジンオイル量が少ない)
 エンジンオイル量が低いと黄色の警告灯が点灯します。車を停めてオイルを補充してください・・・だって」
 「車・・・停められないよね今」
 「オイルって減るもんなの??・・・あーでも赤い警告灯じゃないからまだ大丈夫なんじゃない?赤いやつはエンジンオイル油圧が低いってやつでさ、すぐに安全なところに停めてくださいって書いてある」
 「じゃあまだ大丈夫なわけね」
 「うん、たぶん・・・・」

 それからはものすごいいたわり運転で高速を走り切り、一般道に降りた。
 車内にはなんだか不穏な空気が流れる。
 いつ赤の警告灯が点灯し、ブザーが鳴り響くかびくびくしていた。

 エンジンオイルが足りないってことは、人で言うとどういう状況なのであろうか。
 血圧が低いのか?
 ドロドロ血ってことなのだろうか?
 脂っこいものばかり食べて、深酒して、それなのに自分は元気だと信じて無理をして、ある日突然心臓に激痛が走る・・・
 あんなに丈夫そうな人が・・・
 後悔先に立たず。
 ああはなみ号、すまん、踏んだら元気に走り出すおまえの健康を過信してました。
 ちゃんと様子を気にかけてやればよかった。
 なのに夏には猛暑の高速をひた走って、指宿まで行ったりしたもんね。
 霧島や阿蘇や、ものすごい高原やワインディングロードを、いやな顔一つせず軽快に走ってくれていたのに。
 秋になって疲れが出たんだね。
 病床のはなみ号、もう手を握ってやることしかできない。
 はなみ号だいじょうぶ〜と息子も心配している。
 はやく病院に連れて行こうね、なんていっても田舎の一本道、なかなかガソリンスタンドも見あたらない。

 やっと一軒のガソリンスタンドを見つけて滑り込んだ。
 ついでに給油もしながらスタッフにお願いする。

 「あのー、エンジンオイルのレベルをチェックしていただきたいんですけど」
 「あー見てみましょう・・・あー・・・ん?・・・減ってるといえば減ってますかね」
 「えーと、どうしたらいいんでしょう?」
 「あー・・・少々お待ちください」

 スタッフたちは集まってひそひそと話しながら首をひねっておる。
 なんだかまかせられない不安を感じ、取説の「エンジンオイル」の項目をめくってみる。
 “エンジンオイル規格 高潤滑マルチグレードオイル ●●500 00規格、●●502 00規格・・・”
 ありゃりゃ?なんじゃこりゃ。むー困った。
 そうだ!エンスーに電話だと兄A氏に緊急コールをしてみたのだった。

 が。
 「・・・・ただいま電話にでられません。ピーッという発信音のあとに・・・」  
 留守電である。
 えー家にいるのかなと思い兄んちに電話をすると、兄嫁がでて
 「お兄さんはジムカーナなの」。
・・・秋晴れのコースのパイロンの間をキュルキュル走っている真っ最中なのであった。そりゃ電話になんか出られんわな。

 うーんどうすれば・・・そうだ!ディーラーに電話してみよう!

 「あのー、エンジンオイルに詳しい人お願いします」
 というとえらい長い時間待たされた。
 考えてみればそんなにオイルに詳しくなくてもディーラーの人ならだれでもよいレベルのご相談であった。

 「サービスの○○です。どうされましたか?」
 「なんかエンジンオイルをチェックしろっていう警告灯がついたんで今ガソリンスタンドにいるんですけど」
 「ああ、レベルがさがってるんですね。エンジンオイルを注ぎ足してもらってください」

 受話器を押さえてガソリンスタンドのスタッフに「エンジンオイル注ぎ足すんだそうです」と言うと
 「あのー、どういうオイルになりますかね?」という。

 「もしもし、どんなオイル入れたらいいんですかね」
 「どんなオイル・・・」
 そこで若干の知識が役立つ。以前車検をしたときに、エンジンオイルには粘度があることを知ったのだった(「vol.36 ツーな車検」参照 )
 「ほら、あの粘度でいうところの5Wなんとかとか」
 「ああ、でしたら5W-30を入れていただければ」

 またもや受話器を押さえて「5W-30だそうです」
 「ああー、そのオイルはちょっとないんですよ・・・」
 なんとー
 まあ普段は軽トラしかやってこないだろうから無理もない。
 「あのー、5W-30ないそうです」
 「あ!5W-20ならあります!」
 「えーと5W-20ならあるそうです」
 「ああ、じゃあそれ入れてもらってください。入れずにエンジンが焼き付くくらいならどんなオイルでも足してもらった方がいいですので」

 じゃあサラダ油でもいいんですかとは聞ける状況ではなかったので聞かなかったが、この際粘度はなんだろうがとにかく足らないよかいいということだった。

 ほっとした表情のスタッフがオイルを足しにかかる。
 「あのー入れすぎもいけないそうですよ」などと釈迦に説法的なことも言ってみる。

 あとから調べて知ったのだが、5Wというのは低温粘度で数字が小さいほど低温でも固まりにくく、-30というのが高温粘度で数字が大きいほど高温でも粘り気を保てるのだそうだ。5W-20は5W-30よりも低粘度で、回転数低く市街地を走るときなんかはこれでよく、高速や山道を走るようならやっぱり粘度が高い方がエンジンがしっかり油膜に守られるようだ。また一つ賢くなった。のか?

 エンジンも足してもらい、その道中はもう警告灯も点灯しなかった。
 安心してあちこち走り、楽しい旅を終えたのだった。

 そういえば宿についたころ、戦いを終えた兄A氏から着信履歴に電話があった。
 かくかくしかじかと説明すると
 「ふうん、今何キロ走ってるの?5万キロ、うーん、オイルが上がる下がるってことはないとは思うけど・・・まあそろそろエンジンオイルとエレメント変えた方がいいね」
 ディーラーの人も
 「近いうちに交換した方がいいでしょう」と言ってたし、ドック入りすることにする。

 ディーラーに持っていくと、電話で対応してくれたエンジンオイルに詳しい○○さんがやってきた。
 「あのー、エンジンオイルって減るもんなんですか?」
 「減りますよ」
 「6月に車検受けて交換したばっかしなんですけどね」
 「えーと交換されて・・・ああ!交換時期からもうけっこう走ってますよ、そりゃ減ります。換えないと!」
  民間車検場が貼ってくれたシールに「次回オイル交換は48000キロ」とある。で今55000キロ。あらーそんなに走ってたのね。まあ指宿まで行って帰って1800キロだったしね。

 ということでエンジンオイルとエンジンフィルターを無事換えてもらった。
 心なしかエンジン音も軽快だ。
 いやーたいしたことなくてよかった。元気が一番であります。

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