I♥エンスー vol.60 残酷な天使のように
中国新聞 中古車情報サイト「チュレカ」(2011.3末でクローズ)に連載していたコラムのバックナンバーです。
(2011.2.17 掲載)
I♥エンスー vol.60 残酷な天使のように
先日、某輸入車ショーが開催されていた。
兄A氏ももちろん行ったそうだ。
どうだった?
「うん。なんだか静かだったような気が・・・どうなんだろうね。」
ほう。欲しいなーって車あった?
「うーん、まぁ、ないこたナイけど、そんなでもないかな。」
ふむ、ぐっとくるものがないか。
「うーん・・・なんか、今どきのクルマって、かっこわるい気がするんだ。」
かっこわるい?最新鋭で最先端でこう、バーンとしててかっこいいんじゃないの?
「なんというかこう、綺麗だな〜って素直に思えるデザインがあんまりないというか・・・形がゆがんでるというか、イビツとも言える。」
イビツ?
「うん、輸入車もだけど、国産車も、軒並みなんというか、攻撃的なテイストなんだよね。」
ほうほう、攻撃的。
あの以前話しに出た「オーバーテイキング・プレステージャス」(I♥エンスーVol.38 威嚇社会 参照)ってことかね?
「そうそう。それでね、面白い記事を読んだんだ。最近まで欧州の自動車メーカーにいた日本人デザイナーの講演会の記事だったんだけど、クルマのデザインっていうのは、動きを感じさせることが重要なんだそうだ。」
なるほど。より速そうなクルマの方がかっこいいんでしょうな。
「で、その動きを感じさせるデザインってのが、日本のアニメーションに大きく影響を受けてるんだそうだ。」
ほうほう、日本のアニメは世界に誇る財産だね。
動きを感じさせるデザインかぁ。『ナウシカ』のメーヴェとか?『紅の豚』とか??
「いや、『アキラ』とか『攻殻機動隊』とか『エヴァンゲリヲン』だそうだ。」
まじで? なんだか・・・殺伐としてますよねどれも。
「そう。最近のイビツな新車デザイン、あれクルマだと思うからいけない。たしかに『エヴァンゲリヲン』っぽいよね。」
そういえば『エヴァンゲリヲン』、はまってましたよね。ファンなんじゃないの?
「いやあれは物語が好きなんであって、あの変なロボットの形はキモチワルイよ。そもそも、あのエヴァの形ってのは、ウルトラマンから来てる。なんかひょろっとして猫背でしょ。」
ふむ、そういわれればそうかな。
「もしもウルトラマンが鎧を被ったら・・・てのがアイデアの源泉。で、その鎧のデザインは、実は一連の永井豪の漫画から来てるんだ。」
お!『ハレンチ学園』!!
「いやいやいや・・・・・『デビルマン』な。」
ああデビルマン。「デビ〜〜〜ル」ね。あれ幼心にちょっと怖かったよね。
「『デビルマン』ってのは、もともとゲーテのファウストに大きく影響された作品なんだよ。」
ほほう、ゲーテきましたか。
「エヴァの物語って、知ってる?」
しりません・・・
「あれはキリスト教がモチーフになってるんだよ。NERV(ネルフ)のシンボルはイチジクの葉。アダムとイブが知恵の実を食べて楽園を追われるときに股隠したヤツだね。」
ははぁ、キリスト教ね、「使徒」とか出てくるもんな。
「マークの横には GOD'S IN HIS HEVEN. ALL'S RIGHT WITH THE WORLD.
なーんて書いてあるけど、あれも聖書の一節。」
で、ヨーロッパのカーデザイナーたちのハートをがっちりつかんだ・・・・・ってことか?
「欧米人は宗教大事にしてるからね。エヴァも死と再生の物語だから、ヨーロッパの若手デザイナーがはまっても不思議じゃない。おまけに、オーバーテイキング・プレステージャスって概念、エヴァのおどろおどろしい顔は、前のクルマに威圧感を与える効果も十分あるってわけだ。」
へぇ・・・一体クルマは何と戦ってるんだ。
ニューモデルの○号機だらけの輸入車ショー。想像するだにこわい。
「それにしても、クルマのデザインをエヴァにするのは本当にやめてほしい。
いつまでも愛せる、美しいクルマに戻って欲しいと心の底から願うよ。」
うん。もっと人心を平和にするようなクルマがいいよね。
・・・・ピカチュウモデルとかどうですかね。
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