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2011年12月 2日 (金)

それでもどうしても

 うちは地方紙の「中国新聞」を購読している。
 先日、折り込みチラシに妙なものがはさまっていた。
 それがこれ。
 460744718

 なんだこれ、マウスパッド? ああ、マグネットか。
 息子になんか絵描いて貼らせて切り抜いて遊ばせよう、と思いとっておいた。
 使いでのある面積だ。

 翌日、
 「「虐待防止シート」配布 市42万枚 使い方照会相次ぐ」
 という記事が載った。
 そこには
 「制作費用は42万枚で1900万円」
 「どうやって使うのかとの問い合わせが相次ぎ、中には『税金の無駄使い』との声もあった」 
 「市こども・家庭支援課は『説明書きを添えるなどの配慮に欠けた。普段から虐待への関心を持ってもらおうと家庭で長く使えるマグネットシートにした』と説明している。」
 とあった。

 1900万て・・・
 ・・・思わずツイッターに「・・・泣きたくなる。」とつぶやいてアップしたら、いろんなリプライがかえってきた。

 「職場でも話題になってて、こんなん折り込みで入れられても邪魔過ぎって。水周り系の広告マグネットも邪魔じゃけど、更にデカイし、って。で、この経費かよ!」
 「ぐはっ。「虐待してそうな家庭の玄関や車に貼ってくれ」いうことなんかねー、とヨメと話してました。」
 「40万枚の何枚がお金をかけた意図の通り使われるのでしょうね。」

 フェイスブックのほうにも
 「わが家は夫婦でマウスパッドと間違えていた(笑)冷蔵庫に貼れ、ということなんですかね。何のためにどう使うのかもさっぱりわからないし、人を困らせるだけで終わり、になりそうな気配。」
 「これ、写真広告バージョンが前日の新聞に載ってました。作った方には申し訳ありませんが、すごーくハンパ・チュートな出来でビツクリした翌日のマウスパッドドーン。」


  それぞれ、「なんじゃこら?」と思われたんでしょうな。思わぬ反響。

 
 こういう、「啓蒙キャンペーン」と呼ばれるものの多くは「競合プレゼン」であると聞く。
 広島広告業界の外角低めアウトコースに位置するスナリにすらお声がかかるくらい(断ったけど)、その競合に参加する会社がわーっしょいとひしめいていて、10数社プレ、というのも日常茶飯事と聞く。

 で、お声がかかったデザイナーさんやコピーライターさんは、その競合に勝ち抜くべく、知恵を絞ってプレゼンツールを作るのだ。
 プレゼンツールつったって、決まれば即入稿できる完成品のクオリティで作る。
 作るデザイナーさんの様子をはたで見ていても、一球入魂、全力で考えている。それは痛々しいほどだ。

 しかし、あっさり決まらなかったりする。
 微々たるプレゼンフィーでごまかされて終わる。
 徒労というほかなんと言ったらよいのか。

 先日プレゼンされる立場を経験した。
 民主主義的に採点され集計される。
 すると「それで目的通りの成果が果たせるか」というクオリティじゃないとこで選ばれたりする。安心感とか、おまけの魅力とか、けったいなとこが得票をのばし、不思議な結果となるのを目の当たりにしたのだった。

 だから、世の中はむつかしい。
 選ぶほうもよかれと思って選んだのだ。
 選ばれたほうは小躍りしただろう。苦労が報われたと。
 みんなそれぞれ忙しく、がんばっていて、悪意はないのだ。

 そしてできあがったマグネットシートが朝刊に折り込まれる。

 ・・・・。

 虐待をなくそう、防ごうということで1900万円の(いやTVCMや新聞広告なんかもあるからもっとだ)予算確保されることはいいことだと思う。
 未然に防げるものなら、どんなにお金かけて広告したっていい。

 だけど、あらためてマグネットシートをしみじみと見て、かなしくなった。

 関心も興味もない人に、ああそうだね、とか、そうしようと思わせるのがどんなに至難の業か、
 見てもらえず、知られもしない、それでも言いたい、伝えたい、わかってほしい、だから、どう言えばいいのかな、どういう声色で話せば振り向いてくれるのかな、そんなこと、ちーーーっとも思ってない人が、これを作っているからだ。

 脳みそから血がしたたるほど考えてるデザイナーさんやコピーライターさんや、分厚い企画書を描いてる担当者や、そういう人たちの無念を思ってくやしい。

 そんで、
 虐待されて、死にそうな目にあってる子の
 したくもないのに子供を殴っちゃって、死にそうにつらい親の
 泣き叫ぶ声を昼に夜に聞いて心配だけどどうしたらいいのかわからない人の
 そういう思いを思うと、こんなマグネットシートで解決できると思われている、
 担当窓口の薄情さがくやしい。

 わたしは、そんなことを思って泣きそうでした。


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