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2012年5月31日 (木)

キャッチーって何?

 先日の「サイエンスカフェ」打ち合わせでのこと。

 広大理学研究科には「広島大学大学院理学研究科附属理学融合教育研究センター」がある。
 漢字多いけど中国語じゃないよ。

 拠点は理学部B107(理学融合教育研究センター室)。
 そこでは毎週火曜日に「ランチタイムチャット」というイベントが開催されている。

 そのランチタイムチャットというのは、「隣の研究室は何をしているのか知らない」がデフォルトだった先生方が、サイエンスカフェで分野を超えて話すことの面白さに開眼され、もっと気楽に、お茶でもしながら話す場を、と立ち上げられた。

 そこはHさんたちの尽力で、ちょっとした心地よいカフェのようだ。
 100円募金箱に放り込むと、それはそれは毎週ゴージャスなランチがたらふくいただける。
 西条という場所柄か、いろんな方が野菜やら採れたてのものを届けてくださるんだそうだ。
 なんて豊かなんでしょう。都心の大学じゃこうはいかないよね。
 
 先生、学生、事務方、それぞれ三々五々集まって、おいしねぇなどと言いながら、話に花を咲かせている。この7月で一周年だそうだ。素晴らしいと思う。

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 ということで、サイエンスカフェの打ち合わせもこのランチタイムチャットになだれ込み、今回はなんとクレープで、おかずのクレープやらデザートのクレープやら、巻き巻きして自席に戻り、打ち合わせから派生したぐだぐだ話をしていた。
 醸華街西条の蔵本「福美人」の仕込み水で水出ししたコーヒがこれがまたまろやかで美味しくて、これをすすりながら話すと最高だ。ほんとに話のクオリティーが何段階か上がると思う。

 で、話をしているといろんな先生方がマグカップ片手にふらっとやってきて話に耳を傾け、わたしのメモ帳を覗き込み(乱筆で恥ずかしい)、ふむふむと興味深く聞いて、ちょっとしたことをいろいろ教えてくださって、ふらっと去って行く。アカデミック〜〜〜。


 その時に出た話のこと。

 サイエンスカフェで、一般の方にいかにわかりやすく話をするか、という流れから、「サイエンス」だとか「ネイチャー」だとかの科学雑誌に論文が載るには、やっぱりタイトルだとか要約文だとかがキャッチーじゃないとだめなんだという話になった。
 
 「だから研究者も研究だけしてればいいってわけじゃなくて、そういう面もちゃんとやらないといけなくなってきてますよねぇ。」
 「ネイチャーなんかも一般の人向けの雑誌だから、やっぱりキャッチーだっていうのは大事なんでしょう。」
 「そもそも全世界から論文が送られてくるんですから、編集者もよっぽど“おっ”と思わないと選びませんよねぇ。」
 「タイトルさえキャッチーなら、内容が多少アレでも掲載されるってこともあるみたいですよ。」


 広告界のアウトローに位置し、多少なりとも「キャッチー」で飯を食っている私としてはそこでなにか気の利いたことを言わねばと思ったが、「キャッチーねぇ・・・」と言ったきり絶句してしまった。

 キャッチーって何だ?

 その短いセンテンスで「へえ」とか「ほお」とか「おもしろい」とか「すてき」とか思わせる、いわゆるキャッチコピーってやつが思い浮かびますね。

 人生の何分の一かを費やしてつかみ取った研究成果も、キャッチーじゃないと無視されるなんて、ずーんと気持ちが重くなった。

 逆に、たいして内容がないものでも、キャッチ−なら受け入れられる。
 わかりやすく、すぐに反応しやすい「あま〜い!」「とろける〜!」みたいなのがマスに受けるのだ。

 そのあたりでずっと苦い思いでいた。

 せっかくいいものなのに、なかなかわかってもらえない、どうしたらいいだろう、もっと良さを伝えるには、というのに知恵をしぼるのが広告の仕事だと思っている。
 でも、羊頭狗肉の広告やものや人も多くて、そういうのがキャッチーで歓心をさらっていくのはなんとも気持ち悪かった。

 「知られなければ、無いも同じなんだよ」と、そういう人たちが事も無げに言うのにも反論できずに唇をかんでるような感じだった。
 キャッチーはつくれる。ノウハウがある。
 でもそんなもんで作ったキラキラなんか、雨が降ったら流れてしまう。


 キャッチーって何なんだろうなぁ。

 それは、「言い当てる」ことなんじゃないのかなぁ。

 研究成果も、「これが超おもろいと思ったのでやってみたらこんなんが出ました、どうだ!」
 という気持ちを、よく言い表せるタイトルがつけられたら、見る人にカーンと共鳴するんだろうと思う。そういうのをキャッチーと言うのだと思う。

 なんだかうまく言えないことを、気持ちよく言い当てられたら、それを言葉にできたら、それが他人にカーンと響く。その瞬間が喜びなんだと思う。誰かに響かされることも、誰かを響かせることも。

 そういうキャッチーな瞬間を日々みんな求めてる。

 そういうキャッチーなら、いくらでもつくりだしたいと願う。

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