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2012年6月12日 (火)

指先から出るビーム

 打ち合わせがいろいろ脱線して、こんなムダ話になった。

 写真というのは不思議なもので、機材もライティングもたとえ同じにしたとしても、「腕」の差が写る、というのだった。

 昨今じゃデジカメの機能も充実し、素人でもそこそこな写真が撮れるようになった。
 プロの世界もデジカメが多くなり、素人とプロの厳然たる境目がゆらいでいるかのように思う。
 押せば写るわけで。

 しかし、押しただけでは写らないものを写すのがプロで、肉眼では見えていないものを写しとっている写真はやっぱりなんか違う。

 で、そのプロの写真の中でもやっぱりなんとも言いがたい「差」があるらしく、
 そのデザイナーさん曰く、なんというか、太刀打ちできないほどのデータ量というか、色の厚み、深み、凄みがものすごく、軽々しくデータを触れなかったそうだ。
 
 「なんかそういうの、あるんよねぇ」
 と話していると、横で聞いていたSさんが
 
 「それ、先日の『今日のダーリン』で糸井重里さんが言ってました!」という。

 今、アラン島に行っているダーリンが、おんなじ手編みのセーターにもいいセーターとよくないセーターがある。あきらかにある。
 その「差」はなんなんだろうと編み手に聞くと、「わからない」「わからないから編んでいる」と言った、という内容だったそうだ。

 
 ねぇ、やっぱりそういうの、あるんよねぇ。
 その「差」ってなんなんだろうねぇ、
 
 そういえば昨夜テレビをつけっぱなしにしてて何となく見たNHK「プロフェッショナル」でね、天ぷら揚げてるおじさんがいたんだよ。
 うまそー、穴子が「サクッ!!!」って切れるよ、烏賊やわらかそーなどと食いしん坊目線で見ていたのだが、カメラは思ってもないドラマを映し出す。

 銀座の老舗のイタリア料理店だったか、そのおじさんの友人の店なのだが、とうとう閉めてしまったのだった。店の若い衆がフライパンを両手にぶら下げて店から出てきたところに出くわした。
 友人に電話をかけても出ない。

 後日、その友人がおじさんの天ぷらを食べにきた。
 二人はあんまり言葉を交わさない。
 穴子、鱚、そしてとうとう〆の小貝のかき揚げ。
 赤出汁を啜りながらその友人は
 「うまいなぁ。・・・久しぶりに食べた気がするなぁ。」
 そうしみじみ言った。

 明るく、「また遊ぼうな!」と見送って、おじさんがインタビューに答えてこう言った。

 「きょうは、あいつを送り出す天ぷらが揚げられたと思います。
  きょうの天ぷらは、光ってました。」

 天ぷらって、ひかるんだ〜! 

 普段からもちろん、ぴかぴかの旨い天ぷらにちがいない。
 でも、気持ちがのっかるというか、光る天ぷらが揚がったんだ。
 なにが天ぷらを光らせたのだろう。

 「なんか、指先から出てるんだよ、きっと。」

 そう、目には見えないが、きっと指先からそういうものが出ているに違いない。
 見えない、ぴかぴかビームが。

 茶の湯の先生で、お花の先生でもある方の手を思い出す。

 なんっかい籠にさしても止まらず、くるっくる首が回る花に困り果てていると、
 「まあ、あなたこのほうが綺麗だからとまりんさい、ほい。」
 そういって手を触れると、恥ずかしそうにぴたっと止まるのだ、花が。
 あの手からは、ぜったい出ている。

 その先生も出品されているお花の展覧会があって伺った。
 最近の華道というのはなかなか前衛的なものもあるんですね。
 なんというか、劇団的というか、「これでもか」な花の競演であった。
 いや、ド素人ですから無責任にそう言えるのですが、それは師範レベルの方々の作品ですから、相当すばらしい作品ばかりなんですよ。

 で、先生の作品をみつけて驚いた。

 縞葦が、水辺に生えてそよいでるような作品だった。
 淡い瑠璃色の大きな瓶に、生えてるまんまを切り取ってもってきたみたいだった。

 「まるで生えてるみたい」に生けるのは至難の業だと思う。よくわからん自分でもそれはわかる。

 でも、そこには水辺の風が吹いていた。

 あの、あの先生の手で、「あらー、いいわ、ほい。」と生けられたんだと思うと、目には見えないけど、そのビームの余熱を感じた。


 湯布院の、いまはもう湯豆腐屋になってしまったけど、その昔煎茶や玉露を出していたお店の男前のご主人がこう言われていた。
 「日々、ゆらぐんです。もちろん、お客さまにお出しできるレベルの中でですけど、今日はよく入った、そういう日があるんです。」
 飲む方は、たぶん気がつかない振れ幅だと思う。

 その、ゆれを、ゆれるからこそ「光る」、そこを
 写真も、天ぷらも、セーターも、花も、茶も、見続けているのだろう。


 先日こんな夢を見た。

 斉藤和義氏と、なにげない話をしながら、お茶を淹れるのだった。
 彼は、とりたててうまいとか感激もせず、
 しかし呼吸をするように杯を重ね、
 それに答えるように茶碗に茶を注ぎ続けた。

 彼が帰り、茶道具を片付けていると
 「寺本さん、いまのお茶はよかったです。お茶が光ってました。」
 そういって、先生に褒められたのだった。

 「お茶なんて、湯を注げばだれだって淹れられるんです。
  ある程度、テクニックを覚えれば美味しく淹れられるようになる。
  だけど、
  ああ、あのひとのお茶が飲みたい、そう思わせるお茶はなかなか入りません。
  そういうお茶はどうやったら淹れられるか、
  それは、ひとそれぞれです。それはわたしにも教えられません。
  あとは、あなたが磨いていくべき道でしょう。」

  そう、教えてくださった先生だった。
  その先生に、褒められたのだった。
  夢だけど。うれしかった。

 わたしも、ぴかぴかに光る茶を淹れられるようになりたいと思います。

 
 

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