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2012年11月13日 (火)

益川先生のお話

 10/25(木)、広島大学講演会@サタケメモリアルホール
 「現代社会と科学」
 益川敏秀博士(2008年ノーベル物理学賞受賞)

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 たまたま、打ち合わせで広大におり、これから始まるというタイミングだったので、行って聞いてきました。とつぶやいたら、いいなぁ、聞き逃した残念、という反応がたくさんかえってきたので、手元にあるメモをアップしておきます。

 生きてるノーベル物理学賞受賞者を一目見ようと、サタケホールはほぼ満員でした。
 粗相があってはいけないという主催者一同緊張のなか、講演会ははじまりました。
 満場の客もしーーーーーん。

 モデレーター(進行役)は広島大学学長室特任教授 観山正見氏。国立天文台台長だった方だそうだ。

 観山氏が口火を切る。
 「これがノーベル賞受賞の時のお写真ですけど、先生ずいぶんいばってますね。」
 「これはね、いばってるんじゃなくて、おこってるの。」
 なんでも、マスコミの対応にご立腹だったとかで
 「ぼくはね、江戸っ子であったことはないけど、はらがたつと、べらんめぇになる。」

 くすくす・・・(あれ、おもしろいぞ)

 「先生そのノーベル賞のメダルは今どこにあるんですか?」
 「・・・どこだろう?押し入れに放り込んであるのかな。
  別にね、メダルに価値があるわけじゃないんだから、
  なくしたってわかったら怒られるでしょうけど、だまってりゃいいんです。」

 このあたりで会場は一挙にほぐれる。わっと笑いが起こる。
 観山氏はかつて益川先生の教え子だったことがあるそうで、益川先生の人となりをよくご存知だから、こんなに見事にほぐしてしまったんだろうと思うけど、それにしても司会ぶりがお見事だった。
 
 会場の1/3は文系の人もいたので、そういう方にも分かりやすく、どういう経緯でノーベル物理学賞に至ったのかをかいつまんで説明した上で、益川先生につないでいく。

 1973年に発表された「小林・益川理論」
 (詳しくはwikiとかご参照ください)
  その当時「標準理論」に登場する素粒子の、アップ、ダウン、ストレンジまではわかっていた。
 (このあたり、こちらの表をご覧くださいまし)
 
 「CP対称性」というのが実はこわれてる、というのは1964年の実験でわかった。
 実験ではわかったけど、理論で説明できない。

 「研究の面白さは“理論の整合性”ですね。
  不思議な現象が、なぜ起こっとるのか?と追求するのが好きなんですね。」

 「でもそのときは、あ、まだ材料が足らないと思いました。
  1972年に計算が可能になって、小林くんが京都にやってきたタイミングで、40日間くらい考えました。
 クオークが4種類、という今までの考えを放棄する必要があった。
 あれ、クオークが6種類あるとしたら、「CP対称性の破れ」の説明がうまくいく。
 そういう論文を、ちゃんと書いたらどうだろうかと小林くんにいうと、小林くんも「そうですね」といった。まあ、それくらいの話です。」

 で、1978年の東京コンファレンスにて理論屋がいろいろ検証し、小林・益川のやつが一番有望だろうと南部さん(南部陽一郎氏)がレビューを書いたので、実験屋さんがそれならばとやりはじめたのだそうだ。

 観山氏「今年はヒッグス粒子が見つかったみたいですねぇ。」

 「このヒッグスってのが傑作で、南部先生が対称性の自発的破れを見つけた時に、質量が0の粒子がでてくると。で、ヒッグスは「相対論がやぶれたらいいじゃん」と言った。」

(T先生より「ヒッグスさんは、「相対論が破れる」ではなくて、「ゲージ対称性が破れる」と言ったのかな?」と。・・・たぶん聞き取りまちがいですね。すいません)

・・・・・このあたり、知りたい方が聞かれたらぞくぞくするようなお宝話なんでしょうが、寺本はさっぱり聞き取れずノートにはみみずのような単語がならんでおります。もうしわけございません。

 「・・・ま、誰にもわかりませんけどね、今の話。」・・・はははは

 ということで、素粒子論は新たなフェーズに突入したようで
 「スーパーシンメトリーが顔を出したら今までとちがうものが見えてくる。」そうだ。

 新しい素粒子がぞろぞろ見つかれば、宇宙のダークマター、ダークエネルギーが分かるかもしれない。
 ストリングセオリー・重粒子論を素粒子的に考えると難しい。
 でもこれ、10次元の世界に行ったら言える。学生のころから言われてるけど、まあ、技術の進歩もありますからね、的なことを話されていたように思う。


 先生は基礎研究の大切さも話された。

 「科学的な基礎理論が体系立てられて応用されるまで100年くらいかかる。
  1864年に理論づけられたのがテレビになったのは1960年くらいでしょ、原理がわかっても、一般レベルになるのに100年くらいかかるんです。
  でも、そのことを研究するための技術のバイパスはすぐやってくる。
  月にロケットを打ち上げるためにNASAが開発したヒートパイプの技術は、3年くらいでオーディオのスピーカーに応用されました。」

 「でもね、小林・益川理論は永遠に応用されない。絶対役に立ちませんよ!」
 と先生誇らしげ。

 「科学技術というのはね、ある程度解析したら、どんどん大きな自然に働きかけなくてはいけなくなる。行き着くとこまでいっちゃった。科学技術、テクノロジーと一緒になって、原発も、核融合も・・・これは、生易しいものではありません。」
 そう、しみじみ、おっしゃった。


 観山氏「先生はどんな学生だったのですか?」

 「科学ってのは19世紀のヨーロッパで終わったと思っていたんです。そしたら、高校1年の秋に、クオークモデルの前進の坂田モデルが発表された。
 これは見学にいこうと、益川にも目標ができたわけです。
 高校の授業中は内職をして数学の問題を解いていました。
 高校3年になって、親から砂糖屋の跡を継げとせまられるわけ。
 これは大学に逃げなくちゃと思って、勉強したんですけど、英語は捨てて、5教科1000点を4教科800点で受けた。これは良い子はまねしちゃいけない。

 大学4年の院の志願の時に、数学から物理へ行ったんです。
 こんなになるまで進路に迷っていても、ノーベル賞はとれるってことですね。

 ドクター1年でやっと坂田研究室に入った。ずーっとふらふらふらふらしてたんです。
 以前、本を出した時に「浮気のすすめ」とタイトルをつけましたら、本屋さんに怒られましたけどね。自分の専門をコレ!とせばめちゃうのはねぇ。

 比較的手だけでやってるようなことをやってると、変わり身は早い。
 コンピューター使ってやると、回収しようと固執して専門家になっちゃう。
 湯川先生のお葬式で、そういう人と議論をはじめて、まあそれで1本論文を書いたんですけどね。

 日本人はとくに自分の専門を決めたがるんじゃないのかなあ。
 ぼくは、束縛されるのはきらい。」


 観山氏「さきほど学生さんからの質問で、失敗したらどうしましたか?というのに、僕は失敗をしたことがないとおっしゃってましたが。」

 「そう、ぼくは失敗とか挫折をしたことがないの。普通は失敗かもしれない、でもぼくはそれを成功例としてとらえる。ああ、うまくいかないんだということがわかったから。なぜそうなったのかと、しちくどく考える。そうすると、あ、これはこうやったらいいと人より早く気づく。
 なぜ解けないか、を分析する。
 こうだったらいいのに、というのも考えるんです。」

 「考える、ということは、状況が変化しているときにいち早く気づけるということです。
  なんで?とかなり分析しました。
  するとそのうち新しい理論がでて、材料がそろって、ああこれで書ける!と書くわけです。
  分析してたのを、ずっと頭の中に入れとく。すると印象に残るんです。」


 観山氏と一緒に、広島大学 東広島天文台かなた望遠鏡を見学され、
 「昼間でも星が見えるんですねぇ!・・・よく考えたら、わかるんですけど。」と感激されていたそうだ。


 会場からの質問。先生は席から立たれ、マイクを持って質問者に近いステージ際まで出て質問に応えられた。

 「これからの大学生はどのような心構えでいけばよいでしょうか。」

 「まぁ、就職しなくっても死にはしない。悩んでもしかたない。
  楽観的に。
  だってそうでしょう。・・・こういうの、世間一般にはバカって言うんですよね。
  数学やってたのも、直接的には役に立たないけど、自分の血となり肉となりましたから。」

 「失恋したらどうしたらよいでしょうか。」

 「自分でなんともならないことは、考えたって仕方ない。
  必ずソリューションがあると考える。・・・能天気なのね。」

 「これからの大学はどうあるべきか。」

 「そこの構成員がひとりひとり、つよく思うことです。
  一途に求めていれば必ずなんとかなります。

  ここに行きたい、と思っていてもそうならないこともある。しかし、違う道を行けばいいんです。求めた道を行けたかどうかじゃなく、求めたものに、なっていくんです。」

 「先生は奥様に「あなたはわたしと結婚しなくてはならない」とプロポーズされたそうですが。」

 「そう。
  だってね、恋愛でもなんでもそうだけど、なんでも必然に、そうなっていくんです。」
 とにっこり。

 盛大な拍手で終演。

 それぞれが胸にいろんな言葉を書き留めて、会場を後にしたのでしょう。
 ありがとうございました。

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コメント

はじめまして。おもしろそうなイベントですね。

投稿: あき | 2012年11月13日 (火) 20時32分

あきさま、ありがとうございます。なかなか得難い機会でしたよー。

投稿: sunari | 2012年11月14日 (水) 15時35分

拍手ということで:^).PS.

投稿: マルたん♪ | 2012年12月 4日 (火) 02時33分

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