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2012年12月12日 (水)

さよなら時代

 あの「料理の鉄人」がまた復活した。
 「料理の鉄人」とはwikiによると、1993年10月10日から1999年9月24日までフジテレビで放送されていた料理をテーマとしたバラエティ番組、である。
 
 タイトルも「アイアンシェフ」となり、主宰も「アーレキュイジーヌ」もいろいろ変わったわけだが、13年ぶりにレギュラー番組として復活したのだそうだ。

 おお、復活かぁ、と楽しみに見てみた。

 登場する人物だとか、ナレーターだとか、前と違うことはいろいろある。
 それはそうだ。
 それがいいとか悪いとか、そういうのはどっちでもよかったが、
 見ていて、なんかちょっと気分が悪くなった。

 なんでだろう。

 「料理の鉄人」毎週見てたなぁ。
 わくわくして、舌なめずりして楽しみに見てた。

 そのころはまだ実家におり、父も生きていた。
 「うわー、うまそう〜」「こりゃ今回は挑戦者じゃね」「いややっぱり鉄人だろう」などと盛り上がりながら見ていた。

 たまに広島のホテルのスペシャルディナーショーにも坂井シェフや陳さんなどがやってきたりなんかして、家族で行き、「さすがに鉄人の料理はうまい」と、父もうれしそうに食べていた。

 究極の食材を、贅沢に、ゴージャスな料理に仕立てる様子は憧れたし、ちょっとがんばってお金を出せば、その憧れの味も体験できた。
 
 がんばれば、もっと上に行ける
 バブルはもうはじけていたはずだけど、まだ、そういう感じはあった。


 それが、今は、そうじゃなくなったんだなぁと思う。

 父は家族のために、会社のために、よく働いた。
 若い頃はずいぶん苦労もしたそうだが、わたしは不自由なく育ててもらった。
 年々、仕事に見合う地位と収入を得て、定年後も仕事をし続け、
 やっと母とゆっくり、と思った矢先に病を得て亡くなった。

 わたしは父とちがい、会社から逃げて自営となった。
 今年の年収が、来年もっと増えるとは限らない、
 それどころか、来月がどうなるかわからない仕事をしている。
 年々出世するわけでもなく、
 トシとって衰えていくものを、どう価値ある能力とトレードしていくかばかりを切々と考えている。

 まあ、そういう社会のアウトローが世間を語る資格もないのだけど、
 今のご時世、正社員だって「がんばれば、もっと上に行ける」かどうかわかんないんじゃないですかね。


 それにさ、ざーーっと海があふれて、たくさん亡くなって、命あった人も、家もなにもかも失って、水が足りません、食べ物が足りません、毛布が足りません、って毎日聞いていた、あのころからまだ2年も経っていないのだ。
 今だって、仮の住まいで冬を迎え、仕事も、暮しも、ぎりぎりとしながらなんとかやっている人たちがたくさんいるはずだ。
 そんな人たちに、こんな番組見せますか。
 忘れ過ぎですよね。

 金にあかせてきらきらと積み上げた高級食材を、湯水のように使う料理番組、
 見ていてもう、胸がいっぱいになった。
 食べてもないのに食あたり。


 また別の番組なんだが(わたしテレビよく見てますね)
 ユーミンのデビュー40年を振り返る番組を見た。
 
 青春や恋がユーミンとジャストミートするのは、わたしより少し上の世代なのかなぁ。
 でも、いろんな番組の主題歌にもなったし、テレビでもラジオでもヒット曲として流れていたし、恋人はサンタクロースなのかと妄想し、わたしはスキーに連れて行ってほしかった。(いずれも実現せず)

 ユーミンが水着で、ソバージュの髪を振り乱して歌っていた。
 スキーウエアを着て、雪の中で歌っていた。
 宙吊りで歌っていた。
 ユーミンが歌うその回りを、人魚が水を跳ね上げて踊っていた。
 どんどん仕掛けが巨大になり、
 ぴかーーーーっと、どかーーーーんと、
 とんでもないスペクタクルなステージで、ユーミンは歌っていた。

 その光りに目をくらましながら、みんな熱狂したんだろうな。

 原発でつくった電気をめいっぱいつかって、
 とんでもない額のお金が動いたんだろうな。

 儲かった思い出は忘れられなくて、
 売れ続けなくては、売り続けなくては、もっともっと、刺激的に、
 もっともっと、どんどん、大きく、高く、伸びていって、
 そうしないと死んじゃう
 原発停めたら死んじゃう
 そう思っている人も、少なからずいるんだろう。

 でも、もういいです。
 もう、いいです。

 ギラギラとした、そういう時代は、アーカイブして
 もう、次にいこう。

 ていねいにつくった一杯のあたたかいスープを、ゆっくり飲むような
 そっと弾いたギターの音に、耳をすますような
 しずかに、歌いはじめるような
 その声に、どこかからハーモニーが重なってくるような
 そういう豊かさにしたい。

 そういう文化をつくるのが、たぶん私たちの今からの仕事なのだろう。
 
 時代をつくって、育ててくれた方々の背中を見送りつつ、
 残ったもので幸せにやっていく知恵を
 若い人や子どもに伝えられるか。

 あんがい、大仕事となりそうだ。
 力を貸してくれますよね。


 
 
 

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