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2013年6月21日 (金)

『爆笑サイエンスカフェ②』【スカウトされる】

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2013年6月5日(水)付中国新聞朝刊・文化面掲載
※中国新聞社に転載の許諾を得ています。


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(下記は自分の中での最終版。掲載文章とは若干ちがいます)


『爆笑サイエンスカフェ②』【スカウトされる】 寺本紫織

 数年前、広島大学の広報の仕事をしていた時のこと。何千人といる教員を学内外に順次紹介していく広報誌を発行することになった。

 その取材で、理学研究科のある先生と出会う。月の進化モデルの再考を促す重要な発見をしたとして、文部科学大臣表彰「科学技術賞」を受賞された寺田健太郎先生だ。最先端の研究についてインタビューした。

 今まで興味も接点もないはずのサイエンスの話が、それはそれは面白かった。へえ!すごい、先生それは一体何なんですか、どうしてなんですか、小学生のような好奇心を弾ませて聞いた。難しい言葉がわからなければ、それはつまり例えばですね、と言い換えてもらって理解できた。知らないことを知るってのはこんなにワクワクするものなのか。

 先生がサイエンスの魅力に心を奪われたのは、高校の物理の授業だったという。「ボールを投げたりリンゴが落ちたりってことと、太陽の周りを回る惑星や彗星が全く同じ物理法則で支配されているなんて、なんて美しいんだ!って感動したんです。宇宙空間でたまたま地球ができ、地球にだけ海が長時間存在し生命が栄えてきた。ね、不思議でしょう、だから太陽系の起源と進化の謎を解き明かしたいんです」と。

 知ることで感動し、それが人生の機動力になるんだねぇ、すごいなぁと思いながら、「あの先生、太陽系の中に銀河ってあるんでしたっけ?」と尋ねた。頭を抱えて椅子からずり落ちる先生が見えた。

 後日、この寺田先生からサイエンスカフェの司会をしてみないかとスカウトされたのだった。常識を疑うのが生業の科学者とはいえ、こんなの起用するなんて度胸あるよねと思った。 


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