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2013年7月 4日 (木)

他人に映して見えることと見えないもの

 「温泉茶」ができた。

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 ことの始まりは、「あー、オリジナルのお茶つくりたいなー」 だった。

 そのいきさつはこちら、「話す温泉 ♨ いい茶だな」公式タンブラーにて詳しく書いております。

 ジェネラルストア84店主・大田さんが「いいですね、やりましょうよ!」と面白がってくれたおかげで、事が運びはじめた。

 パッケージデザイン、うんと素敵にしたいですね! ということで、今をときめく関浦《ムッシュ》通友氏にお願いすることになった。

 3月、尾道の今川玉香園茶舗さんのところに向かう道中、冗談みたいな軽口を開放して、思ってること、考えたこと、こんなのが素敵よねー、ということをずっとみんなでおしゃべりした。

 じゃあ、デビューは6月末。 
 「温泉茶プロジェクト」が走りはじめた。

 パッケージデザインについてのイメージや、どうしたらいいか、それはもう、関浦氏にまかせようと思った。

 でも普段の寺本の仕事はここ。

 デザイナーさんや、カメラマンさんや、コピーライターさんに、お客さんにとってどのようにしたらいちばんいいのかを、確信を持って伝える = ディレクション をするのが寺本の仕事。

 お客さんから概要を聞いてきて、デザイナーさんに伝えて、じゃああとはよろしく、というのでは、まかされた方もたまったもんじゃない。目をつむって玉を投げるようなもんで。的はどこなんだよ。それならディレクターいらない、デザイナーが直接お客と話した方が精度があがる。


 じゃあ、温泉茶もきっちりディレクションしたらどうか。とも思ったけど、これは「お客が自分」な案件だ。もう、おまかせしてみよう。

 そうして、しばし時が流れ、「こんなのどうですか」と見せてもらったら、そこに、

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 この子たちがいたのだった。

 温泉てぬぐいキャップかぶってる!!!
 自分だったら絶対思いつかなかったなー。

 関浦氏が、わたしを見て聞いて、そこから掘り出したイメージがこれなんだ。
 そっかー。温泉茶って、こうだったんだ。
 新発見だった。

 じつは、このデザイン、完成間近でがらっとトーンが変わった。(バラしてすいません)

 関浦氏が、こつこつ精度を上げる中で、どーんと変えた、その決断にいたる「発見」とか、得た刺激とか、一体なにがそこに作用して、これほどまでに劇的に変えてきたのだろうか。
 関浦氏本人にも、説明がはっきりつかない、ただ「こっちのほうがいいと思った」ということなんだろうけど、すごく面白いなぁと思った。

 
 中身の方も、すばらしい仕事があった。

 煎茶とひとくちに言っても、ものすごいバリエーションがある。
 今川さんのとこのお茶は、何飲んでもうまい。間違いない。
 その上で、寺本がうなるのはどこか、
 静岡と鹿児島の茶を、すこしずつ割合を変えて、目の前で合組(ブレンド)してテイスティングさせてもらった。
 「・・・うまい・・・」

 しかしそこから完成までに、さらに割合塩梅を調整してきた。さっすがプロのプライド。たまらない。


 そうやって、出来上がったのです。「温泉茶」。


 お披露目の日、84店頭で

 「・・・で、寺本さんは、なにをされたんですか?」ときかれた。

 これまで、何度も何度もきかれてきた質問だ。おまえは何者だ?と。

 デザインしたわけじゃない、お茶は尾道で詰めてもらった、
 「いやあ、ああだこうだ、言ってるだけなんですけどね」

 なにをしたか、
 プロたちの中に、温泉茶のイメージを呼びました。
 
・・・・まあ、その場で言えなかったんだけど、そう思った。


 自分のことは案外分かってないんだな、と今回はとても思った。
 だれかに、鏡のように映してみると意外な姿が見えるんだねと思った。


 その反面、他の人や他の事例をいくら見ても聞いても駄目なんだなととも思った。

 いま、わたしのまわりにいる人たちは、それぞれのプロで、親切で、話せばちゃんとこたえてくれる。素晴らしい人々に恵まれていると思う。

 だから、「ねぇ、どうしたらいいと思う?」と甘えたくなるのだが、
 自分の中に答えがないことを、いくら優秀な人に聞いてもたぶん正解はでてこない。


 先日、宇宙ステーションで新曲を録音する斉藤和義を見た。夢で。(また妄想話かよ)
 オーケストラの方々も音合わせをしている。
 録音ブースの中で彼は、ひとり、なんのメロディともつかない音を、ずっとギターを弾いて鳴らしていた。それは、自分の中に鳴っている音を、現実の音にしているような、探しているような、目は開いているけれど、なにも見ていないように自分の深いところに耳を澄ましているようだった。

 あの、「歌うたいのバラッド」を作った時も、自分が作ったんじゃなくて、その曲だけが流れているラジオ局があって、たまたまそこにチューニングを合わせることができて、自分だけが聞けた感じ、と雑誌かなにかで話していた。

 小川洋子さんも、小説を書きながら、書き手の自分がいちばん後ろをおいかけてる感じ、と話していた。物語はすでに存在していて、語られるのを待ってると。

 たぶん、もうこたえはあるんだな。探してるものはあるんだろうな。
 そこにアクセスできるかどうか。


 温泉茶のパッケージをデザインしてくれた関浦氏も、煎茶の合組をしてくれた今川さんも、耳を澄まし目を凝らして、それぞれの深海の底で光ってた、「これ」っていうのを、拾ってきてくれたんだと思う。

 目に見えないものをキャッチして奏でる、スナリもそうありたいと思う。

 


 


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コメント

「目に見えないものをキャッチして奏でる」
いいね!まさにその通り。
目に見えない、人それぞれが持つ“イメージ”を「物理的に」具現化する作業を日々するお仕事。

投稿: | 2013年7月 4日 (木) 21時54分

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