楽しい勉強【フラワーアレンジメント】

2011年9月 6日 (火)

5つのテーマ、10の花(デモンストレーション編)

 前回からの続き。


 「フローリスト・レビュー ザ・ショウ2011」ファイナリスト、
 山村多賀也×平野弘明による、デモンストレーション&レッスン
 「5themes,10works of flowers」

Flower_2


 二人のレッスンが終了し、PAスタッフとのデモンストレーション進行打ち合わせ。
 今までもDJ交えた花のイベントを何度もやっているPA氏だから、リハーサルはやったことがなかったらしい。が、素人の司会(わたし)が入って状況が全く読めない、ので16:00から通しリハすることになった。お手数おかけします。。。

 それまではひとまず休憩、できるのはわたしくらいで、スタッフ含め皆さんドゥジエム店舗に戻り大量の花材を何往復もして搬入。

 誰もいなくなった会場わきのローテーブルで、ぼんやりしながら今夜のことを思う。

 5つのテーマに二人のフローリストが向き合って花の作品をつくる。時間は1テーマ15分。
 花を作る間は、そのテーマを表現する音楽をDJが鳴らす。しゃべりはいらない。
 開場して最初の出演者トークタイムと、作品完成から次のテーマに移るつかのま、そこが話を聞けるチャンスだ。何を聞いて伝えようか・・・・


 どやどやとスタッフの皆さんが戻って来た。
 こーんな花が控え室に大量に持ち込まれた。

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 16:00〜通しリハーサル。月刊フローリストの大関編集長もはるばる到着。
 オープニングはどうするか、どう登壇するか、なにをきっかけとしてどのようにはじめるか、動きはどうか・・・司会はしどろもどろ。「・・・という質問をするかもしれませんのでよろしく。」

 決ってないことをその場で決めていきながら、参加者たちは徐々に本番の体になっていく。
 DJ Teddy-KUMA 登場。 オープニングはもうすべてクマさんにお願いした。その場で。
「ええっ! わっかりました・・・練習しよ 」
 突然すいませんでした・・・

 ステージ裾に花や花器を準備していると、もう開場時間となる。

 控え室。腹が減ってはデモンストレーションもできないので、スタッフめいめいサンドイッチつまむ。

 山村氏、平野氏、準備は整い、あとは本番を待つだけだ。リラックスして手持ち無沙汰そうなお二人と話す。

 山村氏「いやぁ、今回のテーマ、実は一番最初の“バランス”がいちばん悩んだね。」

 バランス・・・何に対しての、何と何とのバランスなのか・・確かにあいまいで難しいテーマだ。

 平野氏「実は僕もそうなんです。全体を通してのバランスを取る意味で、黄色い花を持って来たんですけどね。」
 山村氏「なるほどね・・・そうかぁ。なんとなくイメージはできてるんだけど、どうしようかなぁっていうのがあってね。」


 今回のこのイベントは、「フローリスト・レビュー ザ・ショウ2011」の直後に山村氏から平野氏に連絡があり、やろうということになったそうだ。今年6月のことだ。
 「東京ミッドタウンの地下駐車場搬入口で声をかけたのがきっかけだったよね。」
 ファイナリストの7組のうち、ほぼ1人で搬入していたのは山村氏と平野氏だけで、なんだかアウェイ感ひしひしと感じていた者同士、気が合ったんだという。

 それから時は流れ、さて5つのテーマどうしようという話になり、平野氏、山村氏、山村氏の奥様アカリさんがそれぞれいくつかテーマ案を出し合ってそこから5つに絞り込んだ。
 「バランス」はアカリさんの案。「これが選ばれるとは思ってなかったんですけどね・・・」

 5つのテーマが決まったのがつい10日前、平野氏が花材を決めて山村氏に依頼し、花を仕入れたのが昨日。そして本番の今日を迎えたのだという。
 まあ、花は生ものですから、前々から用意はできないわけで、それにしても本番に向かう集中というか短期決戦というか、花の世界は恐ろしい。

 本番数分前、しかし山村氏の花のイメージはできていながらまだ揺れているようだった。
 平野氏と山村氏、お互いの言葉に刺激をうけて、バチバチと化学反応が起こっているかのような静かな会話が続く。


 そのころ、会場は満員御礼。クマさんの華麗なトークとDJでかなり盛り上がり、みなさんバイキングで食事をがっつり楽しまれていると聞こえて来た。クマさんさすがー。

 さあいよいよ本番!楽しみましょう!


 クマさんの呼び込みで、フローリスト大関編集長、平野氏、山村氏登壇。
 まずは「フローリスト・レビュー ザ・ショウ2011」について編集長に伺う。
 「なるほどー、で、お二人も応募されたんですね」とふってみるが、山村氏はもはや魂がどっかにいっている。俺に話しかけるなオーラが。
 平野氏「僕は友人が応募するというので、それでなんとなく一緒に応募したんですよね。」

 それって、アレみたいじゃないですか。
 アレ。

 「アレソレ」で会話する司会なんか聞いたことがない。最近めっきり名詞がでてこない。
 「・・・アイドルみたいですよね。」大関編集長わかってる。ナイスフォロー。すいません。
 という至らない司会っぷり全開でトークは進む。

 昼食のときちらっと聞いた話をふってみる。
 「3次審査は東京のスタジオに作品を持ち込み撮影だったそうですが、山村さんは3/10、平野さんは3/11だったそうで・・・」
 「そう、新横浜で新幹線が止まって、もう行けなくなっちゃいました。それでもう、撮影日変わったら花もそろわないし、だめだって思ったんです。」
 しかし大関編集長やスタッフの方々のご尽力で東京から名古屋へカメラマンさんが出向いて撮影し、審査に臨むことができたのだそうだ。

 「大震災のあと、花のイベントを開催するのは大変だったのではないですか?」
 あのころはなんでもかんでも自粛・中止、開催には大変な決断が必要だったと思った。

 「そうなんです。実は・・・」
 1次審査には気仙沼のフローリストも応募されていたそうだ。
 震災後、彼女のことが気になったが安否を確かめるすべもなかった。
 それからしばらくして、彼女から編集部にFAXが送られてきた。
 おばあさまを始めとして、お身内を何名か亡くされているが本人は無事だと、そして
 『1次の作品が掲載されたフローリストをおばあちゃんにみせて、おばあちゃん孝行もさせてもらったので、ぜひ中止せず開催してほしい』という旨が書かれていたそうだ。
 「こんなこと公にすることでもないし、誰に言うことでもないんですが、その時はものすごく勇気をもらいました。」そういうストーリーも、あったのだ。

 ミッドタウンで行われたファイナルステージの様子をスライドショーで見ながら話す。
 それぞれの胸の内に、いろんな想いがあった「フローリスト・レビュー ザ・ショウ2011」。
 山村氏のテーマも「白 再生、リ・スタート 」だった。


 さあ、いよいよデモンストレーション開始。
 「最初のテーマは、「バランス」です。」
 音楽が鳴りスタートした瞬間、山村氏はもうトップスピードだった。
 「山村さんの目線を見てヤバイっ!って思って火がつきましたもん。」
 平野氏もフルスロットル。

 なんだなんだ、いきなり二人とも全開だ。すげー。

 「かっこいい〜〜〜〜」とマイクにぎって第一声叫びたかったが我慢した。
 5つのテーマでいちばん難しかったという「バランス」を作り上げた二人。やりきった感で放心、する間もなくインタビュー。的確に作品を解説する平野氏。さすがです。


 続いてのテーマは「パッション」情熱。
 さきほどの作品に手応えを感じたようで、表情にも余裕が。
 DJ JOE による情熱的な音楽、そのビートにしらずしらず体を泳がせながら、なんとも気持ち良さそうに真っ赤な薔薇を束ねていく。
 むこうの壁際ではクマさんが踊ってる。楽しくなってきたー。

 お客さまは目を皿のようにして、食いつくように穴があくようにご覧になっている。二人の流暢な手元から目が離せない。

 完成ー。実はこのテーマは8分少々で完成している。早い!
 二人が息を合わせてほぼ同時に完成させ、笑顔で見合わす。

 続いてのテーマは「ライン」。

 作品が完成し、ふたりの作品へのコメントを聞いたあと、次の準備が整うまで若干の空白時間があることに気づく。えーと、そんなときには頼れる編集長!どこだどこだ
 暗い会場のいちばんすみっこにいらっしゃった大関編集長をつかまえて、ステージ裾まで来ていただく。
 「あのー、さっきおっしゃっていたあの、カリスマ美容師とかカリスマシェフはいるけどカリスマフローリストっていない、このフローリスト・レビューとかがきっかけでスターが生まれればいい、子どもたちがかっこいいーって思って花屋さんになってくれたらいいって話、おねがいします。」
「あ、わかりました。」

 お話上手な大関編集長に助けてもらって、次のテーマは「日本の美」。

 ジャパネスクな音楽とともに、ステージ上にはでっかい竹が登場。
 平野氏は横一文字の青竹、山村氏は枯れた長ーい竹、いきなり机にあがってトドメをさすかの勢いでぶっさす。その隣では平野氏が青竹の先に真っ赤な鶏頭を細かに埋め込んでいる。
 同じテーマなのに、考え方も方法もこうも違うものなのか。
 二人の対照的な動きを見比べて感心する。

 「日本の美」が完成した。美しい。

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 「あの平野君の百合を入れる数センチを迷う手。しびれますねー」と大関編集長。

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 「作品は花を集めるところからスタートだと思うのですが、今回平野さんは花集めを山村さんに依頼したと伺いました。いわばアウェイな状態でしたが、今日花を見ていかがでしたか?」
 「花の品種名や色など、具体的にお願いするようにしましたから、ほぼイメージ通りだったんですが・・・この山百合は、すごいですよね。」

 平野氏の「日本の美」青竹の先にみっしりと赤い鶏頭そこから木の枝が伸び、山百合がすっと咲いている。
山村氏「山百合は・・・もうこの時期終わっていてなかなかないんです。緯度を上げるしかないと思い、彼女にお願いしたらあったという・・・」
 ご自宅の敷地から美しい山百合を切り出してこられた女性が紹介された。

 花集めには、奇跡が起こることが多いようだ。それもフローリストの実力のうちなのだろう。


 そしていよいよ最後のテーマ「マリアージュブーケ」。

 ステージ中央にはウエディングドレスを着たモデルさんが2人座り、ヘアメイクの久保マサカズ氏がヘアアレンジの仕上げをしていく。
 花のパーツを手渡すと、髪につけ、美しい花嫁が出来上がっていく。

 今回だけは15分間、粘りにねばった山村氏だった。
 「もう時間超えてもやれるだけやろうと思った。わさーっとしたもんだけじゃなく、繊細なものも作れるって見せたかったしね(笑)」
 小さな白い花、グリーン、パステルか水彩で絵を描くように細かく細かく仕上げたブーケ。
 一方の平野氏は白くペイントした木片を糸でつないだ造形物に百合をゴージャスにあしらった。

 ブーケを手にした花嫁が会場を巡る。あんなブーケ持って嫁に行きたいもんだ。

 
 そしてすべてのデモンストレーション終了。チケットの半券で抽選し、作品をお客さまにプレゼント。
 「さて次はパッション、情熱の真っ赤な花束ですよ〜〜〜どなたが胸に抱いて帰られるのか・・・」
 ゴクリ・・・お客さまの目の色がいちばん変わった瞬間でした。

 二人のフローリスト退場、出口にてお一人ずつ薔薇の花を手渡してお見送りしました。

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 興奮さめやらぬお客さま。花と一緒に撮影し、晴れやかなお顔で帰っていかれました。
 あるマダムに「司会とってもよかったわよ。お花にお詳しいのね。」と声をかけていただいて恐縮。花に関しては素人なんですすみません。なんとか無事に終わってほっとしました。

 やり遂げたフローリスト二人と大関編集長、アカリさん、スタッフのみなさんと打ち上げ。ビールと燗酒のうまいこと。
 花への熱い想いを朝まで。愚痴も悪口もない、すばらしいお酒でした。

 「これで僕のフローリスト・レビューはやっと一区切り。」
 ほっとした顔で山村氏は、たぶんもう次のことを考えているのでしょう。
 プロフェッショナルがほとばしる現場に参加させていただいて、ほんとうにありがとうございました。

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2011年9月 1日 (木)

5つのテーマ、10の花(レッスン編)


 先日8/30、花のショウがありました。
 スナリも携わらせていただきましたので、見て聞いて感じたことを。


 「フローリスト・レビュー ザ・ショウ2011」ファイナリスト、
 山村多賀也×平野弘明による、デモンストレーション&レッスン
 「5themes,10works of flowers」

Flower

 2011.8.30 tue
 オリエンタルホテル広島
 10:30-12:00 山村レッスン  

 13:00-14:30 平野レッスン  
 18:30-21:00 平野&山村デモンストレーション (ワンドリンク&軽食付き) 
 主催:株式会社はな乃祥 

 後援:株式会社誠文堂新光社「月刊フローリスト」


 ドゥジエムの山村さんのイベントにスタッフとして参加させていただくのは初めてではない。
 そもそも声をかけていただくようになったきっかけは、以前オリエンタルホテルで開催されたドゥジエム主催のデモンストレーションを見て
ーーーーー
「刺身のツマか水道管か」
・・・・ふたりが交互に、いろんな花器にアレンジを完成させていく間、ずっと考えていた。
 流暢な司会者は確かにいらないだろう、しかしここにもう少しふたりの意識の流れを言葉にするよう促せる人がいたらどうだっただろうかと。
 わたしはそこに何をもっと知りたいと思っただろうか。
ーーーーー
 などとえらそうにかいたところ、「ほんじゃやって」と。やぶへび。
 2009年の年末のレッスン&デモンストレーションイベントに進行役として参加させていただいたのだった。
そのときの様子はこちら
楽しい勉強【フラワーアレンジメント「クリスマスデモンストレーション&レッスンイベント」前編】

楽しい勉強【フラワーアレンジメント「クリスマスデモンストレーション&レッスンイベント」後編】

 このときは、ただお客さんといっしょになって「へー!」とか「ほー!」とか驚いていただけだった。
 しかし今回はちょっとちがう。
 場所はホテル、トップフローリストがしのぎを削って火花散らす現場である。参加費も決して安いわけではない。
 生半可な司会ならないほうがよい。・・・うん、ちょっとどころか、相当ハードル高い。
 フローリスト・レビューの動画や「月刊フローリスト」、山村さんのブログなんかを読み返しウォーミングアップしたつもりだが、当日がすべてだ。


 ということで、10:30からのレッスンを見学させてもらいました。
 まずは、ドゥジエム 山村多賀也氏レッスン。

 花の包みを開いて、そのボリュームにびっくり。
 薔薇すばらしい香り。広島・竹原の生産家 神田さんの薔薇だそうだ。

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 山村さんがまずお手本のアレンジを作り、参加者も思い思いに挿す。
 こんなにでかくて美しい薔薇、短く鋏入れるの躊躇するわー、長い花瓶に入れてちょんちょん水切りして長持ちさせようとしてしまいそうだわーと貧乏気質がとまどうが、参加者の方々は花に慣れていらっしゃるのか、ばしばし切ってどんどんさしていく。

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 おかあさんについてきた女の子。たいくつ顔だったけど、お花をさわるといきいき生け始めた。

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 紫陽花の花の色が違ったりするが、おおむね同じ花材で、お手本のスタイル目指して挿すのにどうしてこんなにみんな違うのか、というほど違って出来上がる。

 「薔薇、トルコキキョウ、胡蝶蘭、ぜったい一緒に入ってない異質なものをどうあわせていくか」
 「薔薇、今の時期花びらも少ないしわーっと咲いてるから、べたーっと強い。中にこうして葉をさすと・・・いいときはふわっと咲くけど、どの花もいつもいい状態とは限らないから」

 そうやって一人一人のアレンジを見ていく。

 参加者には、プロのお花屋さんもいらっしゃった。
「自分ではあわせない花なのですごく新鮮です。アレンジは選ぶところが5割というか、もうあとは入れていくだけなので」
「1万円でオーダーが来たら、どうしてもカサを大きくしないといけないという思いがある。けどこうしてぎゅっと、しゅっと入れるのが好きなんですけどね。」なるほど。

 個々の花の美しさに目を奪われて、どこがおかしいのかわからない。なんかこれでいいような気がする、けど・・・というものが、山村さんの手が入るとなるほど重さ軽さが変わっていく。

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「アレンジ、すごくわかりづらいと思います。ここは何度の角度にしろとかないし。切り方などの技術的な方法は大切だけど、感覚は数値化できない。バランス感覚はみんなどうしようもなく違うので、それを見つけていくのが“花をいける旅”だと思う。
 季節感、色、時代性、どこに飾るか、誰に見せるか、そういうことを想像しながら花をあつめて。お花を楽しんでください。」

“花をいける旅”かぁ。ネバーエンディングツアー。


 終了後、ぱぱっと昼食をとって午後の部。

 名古屋・フラワーショップmadkaチーフデザイナー 平野弘明氏によるレッスン。
 そっと様子をうかがうと、なんかカラカラ乾いた音が響いている。なんだ?

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 白い木のようなものを、ワイヤーで結束しているではないか。

「これはヒマワリの茎なんです。薬品につけて中を抜いたもの。」
 その穴を利用して、ヒマワリを挿していく。ヒマワリinヒマワリ。

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 「空洞のヒマワリの茎で、機能とデザインを両立させました。」

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 飾ると美しさが際立ちますね。枯れた枝からのびる生命、いろいろ考えさせられるアレンジです。

 アレンジのレッスンにしてもこれだけ個性が違う二人が、同じテーマに向かって花を創っていくデモンストレーションは一体どんなものになるのだろう。

・・・というか、本番の流れは今から確認なんですけど・・・大丈夫なのであろうか自分。


(つづく)

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2011年8月22日 (月)

花のショウ、8/30開催です。

 数年前にそのお店の存在を知り、
 なんてエレガントな花束をつくるんだとたまげた花屋さん
 ドゥジエムの山村さんが、また“花のショウ”を仕掛けます。

 花の業界誌「フローリスト」主催「フローリスト・レビューザ・ショウ2011」
 今年6月東京ミッドタウンにて開催。
 
 山村さんはこのレビューにエントリーし、3回の審査をクリアしてファイナリストに選ばれ、決戦のミッドタウンに立たれたのでした。

 その時の様子、ここから見られます。

 惜しくもタイトルは逃したものの、その作品は素晴らしいものでした。
 出場しての思いを綴ったブログがこちら

 そして今回、そのレビューの優勝者、名古屋のフローリスト平野弘明氏を招いてのイベント開催となったのだそうです。

 “5 themes,10 works of flowers”
 「フローリスト・レビュー2011」ファイナリスト
 山村多賀也×平野弘明によるレッスン&デモンストレーション

Flower

 日時:8月30日(火)
    10:30-12:00 山村レッスン  ¥10,500
    13:00-14:30 平野レッスン  ¥10,500
    18:30-21:00 平野&山村デモンストレーション (ワンドリンク&軽食付き) ¥8,400

 場所: オリエンタルホテル広島 :http://www.oriental-hiroshima.com/

 主催:株式会社はな乃祥
 後援:株式会社誠文堂新光社「月刊フローリスト」
 

 この「平野&山村デモンストレーション」に、スナリ、司会役を仰せつかりました。

 スタイルの違う二人のフローリストが、同じテーマに向き合い、どんな花を創るのか。
 その過程に、考えの道筋に、どんな驚きや発見があるだろうか。
 間近で見られる役得にわくわくしながら、それを言葉にすることの難しさを思います。

 フローリストレビューの様子や、山村氏の書いたもの、創った花、
 さかのぼって見ながら、少しずつウォーミングアップをしていきます。

 8/30、ぜひ目撃しにいらしてください。

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2010年3月 3日 (水)

楽しい勉強【親子でいけばな】

 お茶のお教室の先生が
 「寺本さん、息子さん、小学生?これいいのよ、行ってみない?」
と誘ってくださったのが「伝統文化にふれよう〜親子いけばな体験教室」だった。

 なんでも文化庁による生活文化普及支援事業ということで、参加費タダ、お花も花器もいただけるという素晴らしいイベントだったので、「対象:小学生の親子」ということで、もう間もなく小学生の息子と参加することにした。

 恥ずかしながらこのトシまで「生け花」を習ったことがない。
 お茶お花なんて一昔前の花嫁修業じゃんと思っていた若かりし頃。
 しかし茶は究極の遊びであることが判明し、激しく遊ぶためにも基本が大事と、教室に通いはじめたのだった。
 お茶を習いはじめると自然にお花にも感心が向く。
 生け花と茶花は若干作法が違うようだが、それでも枝のあしらいや心は知ってると知ってないじゃぜんぜん違うなと思いはじめたところだった。

 さて当日。アステールプラザ会議室に向かう。
 流派は未生流。
 教室にはすでに水を張った水盤が用意されていた。
 「初めて?さあ、どうぞ、前の方へ」
 小学校3、4年生から高学年くらいの女の子や男の子とそのママあるいはおばあちゃんが思い思いに座っている。
 わけのわからない息子もなんだかソワソワ。

 まずは先生がご説明、見本を生けられる。
 「もうすぐ桃の節句ということで、上巳の花といって、桃の花の枝だけをしゅっと生けるんですけど、それだけじゃ寂しいので、今日はちょっと賑やかに。」

 母親は「格花」という床の間などに飾る花を、子どもは「新花・色彩盛花」というやや自由で響き合う色の美しさを目指す花を生けることになっていた。

 この「格花」、水盤から立ち上がる上方に円を描き、その12時、9時、6時(あるいは12時、3時、6時)を結んだ線、直角二等辺三角形の中に形づくる。
 12時を「体(たい)」、9時を「用(よう)」、6時から少々立ち上がったあたりを「留(とめ)」と呼び、それをつないだ線を描くように枝を配置する。
 これは三才格という花形で、体は天、用は人、留は地を表すのだという。

 「体の高さはだいたい器の直径の2倍から2.5倍、この枝を体にしましょうかね・・・こうむいたほうがいいので、手で、こう、曲げます。これを「ためる」と言います。
 枝にも正面と裏がありますね、こっちの花がたくさん付いてる方が正面。
 はい、この枝先が邪魔なので落としますが、ちょっと皮を残して引くと優しい感じになります。足下はきれいに掃除して生けます・・・・こう、ちゃんと枝のぼつぼつをとってやらないと、枝が、ひっついてくれません、と。はい」

 手を動かしながら、つぎつぎとポイントを説明される。わかりやすいなー。


 こちらが先生の完成見本。左が「格花」、右が「新花・色彩盛花」。

Otehon

 「さあ、やってみましょう。」
 と、花が配られる。

 おそるおそる新聞紙を開くと、よく開いた桃の枝がたわわにあって、菜の花3本とゼンマイが2本。

 ううむ、自由に生えてる枝の形を見て、どの枝の向きをどう生かすか・・・
 くるくる眺めていてもらちがあかないので、とりあえず組み合わせて、邪魔な小枝を落としてみる。
 桃の枝は太くて堅いので、斜めに鋭く切って、十字に切り込みを入れて剣山に挿す。

 よっ、ぶしっ、おお、立った。
 しかしなんかばらばらだな。

 息子はただでさえハサミが満足に使えないので、花ばさみは難しいらしく、チューリップの茎をにぎにぎ挟んでつぶしていた。
 「ここきって〜〜」というところを切ってやると、なーんにも考えずに剣山にブスッと挿す。さす、さす、さす、
 「できた〜〜〜」
 早っ!!
 完成がこちら。

Bokunohana

 チューリップがあちゃこちゃ向いております。

 そこに先生が
 「あらー上手にできたわねぇ。何年生?え!まだ保育園?まぁ、よくできました。」
 褒められたので息子上機嫌。
 「すこーしこうしてあげると、やさしく見えるかな」
 先生がちょいちょいと直すと見違えた。

Tenaoshigo


 ハハは苦戦中。
 「枝の選択が上手ですね。もう少しこの枝をこう向けると、ね?用になりましたね?」

 なるほど〜〜〜〜
 一枝、くいっと向きをかえるとたちまち行儀よく収まった。

 あとはバランスをとって、先生の見本をまねて、と。

 「あ、足下は離さずに、詰めて挿すのよ」

Ashimoto

 ゼンマイ堅くてためれません・・・折りそう・・・
 「ゼンマイこうしてね、ゆっくり体温をかけてね」
 という先生の手元だとみるみる柔らかく表情を変えていく。マジーック。

 完成。先生のおかげでさまになってるっぽい?

Kachankansei


 周りを見渡すと、母たちはどれも似たり寄ったりだが、子たちの花はどれも全部違う。
 花の材料は同じなのに、固まって突っ立ったり、右に流れたり、ばらばらしてたり、でもどれも生き生きと楽しそうに入っていた。

 「みなさんとってもお上手でしたよ。またお家に帰って生けてみてくださいね」
 花と花器と剣山を新聞紙にくるんでいただいて帰った。

 帰りによったばーちゃんちで
 「ちょびね、いけばなできるんよ!みて!」

 そういってぶしぶし挿して再現したがまるきり違う花が入った。無茶苦茶流。
 「あらー上手なね。きれいなねぇ」
 ばーちゃんは目を細めて、手直しもせずテーブルに飾った。

 「いけばな、たのしかった!」
 息子は満足の様子でありました。

 器と剣山があるので、また折々息子といけばな合戦をしてみようと思います。

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2009年12月25日 (金)

楽しい勉強【フラワーアレンジメント「クリスマスデモンストレーション&レッスンイベント」後編】

前編からの続きです)

 
 しばしの休憩の後、夕方のプロ向けレッスン。

 実はわたしの役目としては前半で終了、の予定だった。プロとお客との間に立ちつなぐことはできたとしても、プロとプロの間には立てない。邪魔になるからだ。
 プロは聞きたいことや聞くべきことが自覚できているし、直接聞けば言葉足らずでも理解でき言外のことまで感じることができるからだ。
 でもそういうやりとりをちょっと側で見てみたいと思い、夜のプロ向けレッスンにも参加させてもらうことにした。

●クリスマスレッスン 19:00〜21:00
 テーマ:プロが作るクリスマスセンターピース
 (クリスマスまでお客様にしっかり楽しんで頂くためにセンターピースとして最低限必要な基礎の部分、早い時期から提案できるクリスマスセンターピース、お客様にそれをそう感じていただく為の提案する側の心の部分をレクチャー)

 昼間と同じく、花束のデモンストレーションから。
 昼につくった花束を一旦ばらし、ぜんぜん違う雰囲気に束ね変える。
 「テーマは、1万円でグリーンの花束。グリーンの中でもまず“これが主役”っていうのを決める」。

Basa_2

 キーパー(花の冷蔵庫)から選んで出して束ねるまで15分、レジして20分でやりたい。そのためにパーツとして並べた葉を整理して組むこと。下葉がきたないと絶対うまく束ねられない。スパイラルにはまらなくても、入って綺麗なら正解。自分の思うベストポジションで花を挿していくこと、などなど、昼とは違う細やかさで解説される。

1mannenn

 「花を束ねることもエンターテイメントです。頼んだお客さまにきちっとした仕事を見せてあげることも大事」。
 そして、「お客との勝負には勝たなきゃダメだ」と。
 花屋は板前と同じだと思う、気負けしないで迷わないでスパッとやる、そして自分の世界にはめる。例えば3000円の花束で、あと一歩だと思ったら(利益を考えず花を)入れたほうがいい。お客さまの見ているものの一歩上を見せないと。客前でひけめが出たら負け。
 そうやって、たとえ500円の花束だろうが、お客さまに「わあ、すごい」と思わせたら勝ち。その場の売り上げはたった500円かもしれないが、そのお客さまはその花で、いいお客さまに育ってくれるかもしれない。店を支える売り上げは大きな法人などが柱かもしれない。でもわざわざ店に来てくださる日々のお客に手を抜けないし抜きたくない。そう話された。

 その一瞬の関係だけがよければいいのではなく、一瞬の感動が長く続くことを願う仕事。

 花を手渡されたお客が感動し、それを贈られた人が感動し、生けられた花を見た人が感動し、花っていいな、花をプレゼントしたいな、花を部屋に飾りたいな、それがまた花を買うお客として戻る。その先のよい循環を見ながら、今の綺麗を束ねるのだ。
 足下だけを見ていない、仕事の大きさを感じる。

 ワークショップは昼の部と違い、各自土台をつくるところからスタート。
 「土台となるここが一番大事だと思うんだよね。やってやりすぎることはないと思う」

 まず、バスケットの底をならす。
 「テーブルでいちいちがたがたしたらいやでしょ」
 
 日々の調子は誰でも揺らぐ。いつもベストではない。それも自然なことで仕方ない。でもだったら、事前によくないところを早めに手当てしてつぶしておくこと。
 例えばこのバスケットの底が丸くてぐらつくこと。
 親父はとんかちで全部底を叩く。(井草さんは2代目、お父様も現役)
 バックヤードは整理し尽くされていてすごく綺麗にしてる。そういう準備である一定の基準をキープできると思う。とのこと。

 馴らしたバスケットにセロファンをみしみしっと手で入れ込み、吸水させたオアシスを詰めていく。
 「あ、セロファンを手でバスケットに先に入れこむよね、それはやめたほうがいい。オアシスの重みで自然に入れて。セロファンは何度もしわがよるとそこから破れて水が漏れる。余計なしわはないほうがいいでしょう?」
 
 今、セロファンのしわにまで心配りできる花屋さんがどれほど居るだろうか。
 そんな土台の支度なんか超地味な作業だ。
 それより華やかなデザイン、見たことのない新種の花々、それを誰よりもお洒落に素敵に束ねることにばかり気持ちは向いてるんじゃないか。

 花屋さんだけではない。どんな仕事にも言える。
 ぐらぐらの脚立の上で背伸びするような仕事をしていないだろうか。
 花屋じゃないわたしも日々の自分を省みた。
 基礎が大事、段取り8割、そんなことは当たり前でわかってると
 わかった気になって、はしょってなかったかな。
 あー
 自分も含め、今日のこの話を聞かせてやりたい人が五万といるなと思ったのだった。
 しかし花屋さんなら今日の話、なおさら染みただろうな。

Pro_2

 センターピースが完成し、レッスンは終了。

Kansei

 「僕たちの仕事は今の綺麗を作ることじゃない。
 贈られて持って帰ったその先、より長く美しく楽しんでもらえるために担保しなきゃいけない仕事がある。
 例えば、水揚げのいい花はずっと綺麗に長く楽しんでもらえる。
 花束の結束は輪ゴム使うと茎がつぶれて水が上がらなくなるからテープを使う。
 そんなことの積み重ね。
 それでこそ、贈る人の言葉にならないほんの少し先を
 花に束ねることができるんです」。

Igusa

 カッコつけないカッコよさ、
 気持ちが詰まってて自然、
 井草さんの体現する仕事を垣間見させていただきました。
 ほんとに楽しかった!
 ありがとうございました。

Dailyigsa

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楽しい勉強【フラワーアレンジメント「クリスマスデモンストレーション&レッスンイベント」前編】

 先日、フラワーアレンジメントの世界を、戸の隙間からのぞいてきた。
 その時の模様 → 楽しい勉強【フラワーアレンジメント・入門編】

 そしていよいよ、ドゥジエムさん主催、東京・代官山ヒルサイドテラスにお店を構える「フローリストイグサ」の井草隆氏を招いての「クリスマスデモンストレーション&レッスンイベント」に参加したのだった。

 ドゥジエムの山村さんは2年ほど前、プロ向けにおこなわれた花のレッスンで、講師として招かれていた井草さんと出会った。そのときの仕事の丁寧さに感動し、いつか必ず招きたかったのだという。
 井草さんの何がすごいと思った?と聞くと
 「細かいところを普通に全部やるところ」。まいっか、がないところ、だと。

 11月28日(土)、阪神トレーディング広島営業所(西区商工センターにある花の仲卸さん)。
 天井が高く美しいホワイトスペース。週に何度かはここに花の市がたつそうだ。

プログラムは
●クリスマスデモンストレーション&ワークショップ 13:30〜16:00
 テーマ:モミの香りで作るクリスマスセンターピース
 (オレゴン産の薫り高いモミを使用し、クリスマスまでご自宅で実際に楽しむ事の出来る、ベーシックでオーソドックスなスタイルのキャンドルアレンジメントを制作)
 
●クリスマスレッスン 19:00〜21:00
 テーマ:プロが作るクリスマスセンターピース
 (クリスマスまでお客様にしっかり楽しんで頂くためにセンターピースとして最低限必要な基礎の部分、早い時期から提案できるクリスマスセンターピース、お客様にそれをそう感じていただく為の提案する側の心の部分をレクチャー)

 この、「クリスマスデモンストレーション&ワークショップ」の参加者は、花屋さん(プロ)ではないが花が好きでご自宅にいつも花を飾る方々とのこと。
 わたしの仕事は、井草さん山村さんと参加者の方々の間に立ち、それは何か、それはなぜか、聞き出し理解の一助になるようにヒントを出す係だ。

 井草氏登場。
 今をときめく代官山のフローリスト、顧客は大使館公邸から芸能人の自宅、果てはびっくりするような大企業。さぞやキラキラしい方なのだろうと思いきや、非常にフラットな方だった。ぜんぜん気負った感じのない、さっぱりとクリアな方だった。

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 イベントに先立ち下準備開始。
 参加者がワークショップで自作するセンターピースの土台を作る。
 すぐにモミの枝をカットして挿せるように、バスケットにオアシス(吸水させて花止めに使うスポンジ材)を仕込んでセットしておくのだ。スタッフの皆さんが和気あいあいと準備をする中、まごまごしながらも手伝う。フローラルテープ切るぐらいならできる。猫よりまし。
 バスケットにセロファンを敷き、オアシスを詰め込む。
 オアシスはぎっしりみっちり美しく詰める。
 「生花のアレンジなら給水スペースがあったほうがいいけど、これはもう乾燥させてクリスマスを待つものだよね。乾くと動いちゃうから、ぎっしり詰める」

 そしてバスケットとオアシスをフローラルテープで固定する。
 井草さんと山村さんはフローラルテープをどのようにとめるか、その流儀について話をしている。籠目の間に通すように縫うか、針金で環をつくって通すか。

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 キャンドルもホルダーを使わず、針金をつかう。U時に曲げた部分をキャンドルにテープで止め、先に“かえし”をつけてオアシスに深く差し込むのだ。
 
 びっくりした。
 お客にはわからない、隠れちゃう部分になんでこんなに手間をかけるのか。
 あの、なんでそんなに頑丈にするんですか。見えないとこなのに。
 
 「だってお客さんが持って帰って少なくともクリスマスまではどんなことがあっても保たせなくちゃいけないわけでしょ。車にどかっと積んでも、テーブルから落ちても大丈夫ってくらいに作っとかないと」
 至極当然、という口調で答えがかえってきた。
 山村さんが言っていた「細かいところを普通に全部やるところ」って、こういうところから全部なんだと知る。

 お客さまがぼちぼち来場。
 「あ、これを」
 井草さん自ら選曲した「Dairy IGUSA」イメージソング集CDが登場。会場に雰囲気のよい曲が流れ始める。ただ教えるだけでなく、来場者に楽しんでもらいたいという思いでそうやって準備をされる井草さんの姿勢に頭が下がる。

 まずはデモンストレーションからスタート。
 ドゥジエムの店頭から選んできた素晴らしい花で、美しい花束を束ねていく。
 テーブルに広げられた花材を迷いなく選び束ねていく。
 お客さまは興味津々「あれは何の葉かしら」
 すかさず「これはね、アーティチョークの葉なんですよ。今日はこれがあんまり綺麗なんでどうしても使いたかったんですよね」。
 なんといってもデモンストレーションの醍醐味は、作り手の思いがその場で聞けることにあると思う。

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 大きなアマリリスや真っ赤な薔薇、アーティチョークの葉やらを使ったゴージャスで大きな花束が完成。テーマは「イグサクリスマス」代官山のクリスマスをイメージして。それはそれは見事だった。

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 次は「イグサの定番グリーンブーケ・秋冬バージョン」。花をほぼ使わない、グリーンだけのアレンジだ。
 紅葉した様々な葉を使ったブーケ。「これはなんというかな、山を束ねるイメージかな」。
 「自然をイメージすることが大事だと思うんですよね」。

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 井草さんには娘さんがいらっしゃって、それこそ花の英才教育ができる環境にあるわけだけど、「今は母親と土手で摘んできた花を飾るのを楽しむくらいでいいと思う」それが花に対する姿勢の基本なんじゃないかと思う、と。
 花そのものでなく、それがどんな場所にどう咲いていて美しかったのか。風、日差し、におい、その時の気持ち。そんな純粋な記憶こそ、得難い財産だということだろう。

 続いて「春をイメージしたフレッシュなハーブを使ったグリーンのミニブーケ」。
 テーブルの上にはいろんな葉っぱが並ぶ。
 野菜売り場でも見たことありますよこれ、ミント、ゼラニウム、セージetc。春を香りで表現するのだという。
 山村さんは側でアシスト。井草さんが手を伸ばすであろう枝を、その直前に下葉を始末し整えておく。自分が束ねるとしたら、という感覚があるからの阿吽の呼吸。

 同じグリーンにもこんなに様々な色形香りがあるのだと驚きつつ、でき上がったブーケをまじまじと見てさらに驚く。葉の向き、重なり、色、計算し尽くされていて、まったく見飽きない。自然な草原のように見えてそこには宇宙が表現されていた。

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 手を動かす井草さんにいろいろと聞いてみる。
 代官山のお客様はやっぱり、お花を上手に買っていかれるんですか?

 きらびやかなように見えて案外成熟した街だから、お客様も目が肥えていて育てられる部分も多い。上手に暮らしに花を取り入れる方も多い。だからといって3000円のブーケをお願いされることももちろん多い。そしたらもうフルパワーでやる、と。

 「もう、小さなブーケほどきちんとしないといけないと思うんです。たとえば500エンのブーケを頼まれたら、もうそれは絶対よそに負けないものを作ろうと真剣になります。
 1万円2万円のブーケなら、もう花材の勢いでまとめれば成立する。しかし500エンでは成立しない。小さいものほどミスが目立つ。たった500エンなんか、リボンつきません、そういう考え方もあると思う。でも僕は500エンのブーケこそ集中してつくりたい」。

 お客さんは店の前のバス停で、受けとった花束をじーーーっと見るのだそうだ。そのとき、500円だからこんなものしかできないんだと思われたくない、と。

 ここからはお客さまも手を動かして、クリスマスセンターピースを制作。
 配られたモミの木はオレゴンからやってきた木だ。過伐採を避けるため、ワシントン州とオレゴン州と、毎年交互に伐採するんだそうだ。ということで今年はオレゴン産。オレゴンのモミは乾いてもあんまりぱらぱら散らないそうだ。

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 「枝は捨てるところがありません。付け根だって使う。こうやって葉の裏からハサミを入れれば、表から切り口が見えないでしょ。そしたらこれで無駄なくオアシスを隠せる」。

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 会場いっぱいに針葉樹のいい香りが広がる。ああ、クリスマスが来るんだなあ。
 皆思い思いにハサミを入れ、赤い実や松ぼっくりを飾っていく。
 井草さんも皆さんの手元を見ながらアドバイス。みんなの作品ができ上がる頃、すてきなリースも完成。

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 出来上がりに満足したお客さまは、それぞれ自分が作ったセンターピースを大事そうに抱え、車に乗り込んでいかれた。
 各家にひとつずつ、クリスマスを楽しみに待つ喜びが持ち帰られてゆく。

 ずっと見送っていた井草さん、
「いやぁ、こういう風景になるとは思わなかったな・・・」
 その表情はほんとうに、なによりも嬉しそうだった。

《後編につづく》

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2009年12月 9日 (水)

楽しい勉強【フラワーアレンジメント・入門編】

 さて以前「刺身のツマか水道管か」でも紹介したが、とあるフラワーアレンジメントのデモンストレーションを拝見したときのこと。花のプロ同士の華麗なる技の競演をほれぼれと拝見しながら、こう思ったのだった。
『流暢な司会者は確かにいらないだろう、しかしここにもう少しふたりの意識の流れを言葉にするよう促せる人がいたらどうだっただろうかと』

 そしたらその主催、ドゥジエムの山村さんから「じゃあおまえやってみろ」とご指名いただいた。(いや実際にはもっと丁寧にお声がけいただいたんですがね)
 
 山村さんが以前参加したプロ向けのレッスンで講師をされていた東京・代官山「フローリストイグサ」の井草隆氏を招いて、クリスマスデモンストレーション&レッスンイベントを開催するという。そのファシリテーター(司会進行理解促進素人代表ツッコミ役)を仰せつかったのだった。
 大変だ。花のことはなんにも知らないぞ。なにが分からないのかすら分からない。
 ということで、急遽ドゥジエムさんのレッスンに参加してみることにした。

 11月某日 14:00〜
 西観音にある素敵なお店、SERENDIPITY (MANOS GARDEN 隣り)にて。
 三々五々、生徒さんが集まってくる。本日の参加者は5名。そのうちわたしともう一名は今回が初めての参加だ。教材(花材)がそれぞれに手渡される。レッスンの進み具合、スキルによってそれぞれ用意された花が違う。
 皆さん手慣れた様子で花束をほどき、思い思いの場所で花にハサミを入れ、投げ込みはじめる。

 「あのー先生どうすれば・・・」
 「あーではとりあえず生けてみてください。ルールは、花の茎が水に浸かってること。それ以外は自由。はいどうぞ」

 えーーーー。自由にやってみろが一番難しいです先生・・・
 丸テーブルの上のガラスの花瓶の前で、おそるおそる花束を開く。
 

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 この花瓶にしては、茎が長すぎる。よって、切らなくてはいけない。
 あああ、こんなに長く育ったのに切っちゃってごめんよ、などと思いながら弱気にハサミを入れる。

 そもそもわたしは花屋さんで花を買うのが苦手だ。
 そのお店のセンスに甘えて、予算を伝え、アレンジや花束をつくってもらうのは大好きだけれど、それは主に人手に渡る。花のある豊かな暮しに憧れて花屋さんの店先に立つけれど、花々の美しさに圧倒されて選べない。もう舞い上がってしまうのだ。ああ、どれにしよう・・・こ、これかな、かろうじて選んだ花にさてどんなものを合わせてアレンジしたらよいのか。わからない。なのでつい1輪とか、ひょろっと買って帰って細長い瓶に入れ、ちょんちょん水切りして短くなって枯れるまで楽しむのが精一杯。
 そんな低スキルのわたしが、これだけの花材をどうまとめればよいのであろうか。
 
 と悩んでいてもしかたないので、2、3輪手に持って具合を見てみる。茶花(茶道の床に飾る花)の場合、先生は花器に入れる前に全部手元であわせて作ってみていたな。いやしかしこれだけ広口の浅い花瓶だと、なんらかの枝止めというか、組み立てていく土台がないと塩梅が悪いのではないか。
 ということで、丈が短く込み入ってるゼラニュームの葉をまず挿した。その隙間に適当に切った花を挿していく。あら、この残ったけもけもの細長いのはなんだ、えーいこのへんでいいかとつっこむ。
 出来上がりがこちら。

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 作品には人そのものが丸出しになってしまう気がする。
 なんか優柔不断でひょろひょろと寂しくて・・・見られるのが恥ずかしい。

 わたしと同じく今回初参加の彼女は、すぐ隣でおんなじ花材で投げ込みしていた。
「どうしたらいいのか・・・困っちゃいますよね」などといいつつも豪快にハサミを入れ、ばしばし挿していかれる。
 彼女の出来上がりはこちら。

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 同じ花材でどうしてここまでちがう雰囲気になるのであろうか。
 
 他の生徒さんもだいたい出来上がり、それぞれ先生に見てもらっている。
 「先生今日これ難しいわ〜」「あーでもいい感じですよ」
 どのような会話が交わされているのかとそっと聞き耳を立ててみる。

 「見る人はどこから入って来てどう見るのか、コンソールの上の空間はどうなのか・・・」
 上級者になると、ただその器に対して綺麗に生けるだけじゃなくて、その周りの空間や視線動線までも考慮するようになるのか。

 さて先生いよいよ初参加ふたりの花の前へ。
 同じ花材を使った彼女の花を見て「・・・生け花されてました?」
 「あ、昔、すこしだけ・・・」
 なるほどー。道理でハサミの入れ方に迷いがなかったわけだ。
 自分で生けた作品をまずデジカメで撮る。その後、一旦全部抜いて、先生が生け直す。

 「これが正解というわけじゃないんですけどね・・」
 迷いなく、すっ、すっと一輪ずつ挿していく。

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 そしてこれが手直し後。

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 「生け花は花や葉で流れを作っていきますね。でも家の花、アレンジはかたまり、色で見ていきます。そうしたら一輪枯れてもそれをとってちょいちょいと直せば、また成立させることができる」
 「ここにいる6人全員が綺麗、って思ってくれたらいいですけど、それはなかなか難しい、だけど、6人のうち何人が綺麗と思うか、多くの人が綺麗と思えるようにどうしたら作れるか、それを目指すんだと思います」

 なるほどー。
 さてわたしの番。
 「・・・・花って、人柄が出るって聞いたことがあったけど・・・ウソですね」
 それどういう意味ですかわたしの人柄をどうとらえてたんですか、質問攻めにしたかったがこらえる。

 「じゃあ直しますね」
 花を抜いて、
 「まず、水が濁ってますね。これだと花が長持ちしませんね」と水を替えにいかれる。
 ああー、迷い迷い抜いたりさしたりしたからだ。水のことなんか考えもしなかった。

 抜いて置いた束の上から順にすっと手に取り挿していく。
 「え?バラからいきなり挿すんですか?」
 「そういうわけじゃないんだけど・・・取りやすいものから。これは僕が花を選んでるからできることなんですよ。花を選んだ時点でもう出来上がりがイメージできてるから」

  出来上がりのイメージ。
 これはものを作る人の口から必ず聞く言葉だった。
 デザイナーも、頭の中にあるその出来上がりを、パソコンで再現するだけだと言っていた。目に見えないものを見て、それを目に見えるものにする力。

 わたしは出来上がりのイメージなんか全然浮かばなかった、というよりもイメージしようと試みなかったかもしれない。手に取った一本をどこに挿すかしか見てなかった。

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 「生けて直してを繰り返して、ああいうときはこうだったという経験を自分の中で蓄積していくんです。今日はこういう感じで花を入れたんだなという感覚を覚えておく。
 すると予想値ができてきて、自分の花を見つけることができる。こういう場所で他の人の花を見ることも勉強になりますね。そうやって、自分の中の好き嫌いをつくっていくんです」

 確かにわたしは自分が生けた花が好きか嫌いかよく分からなかった。ひとつひとつの鉄線やバラの美しさに目を奪われて、全体を見てなかったな。

 剣道歴30年のある科学者に教えてもらったことなのだが、剣道の修練に使われる言葉で「遠山の目付」というのがあるそうだ。遠くの山を見るのに、葉っぱ一枚一枚まで見ない。だけども、山が緑に見えるのは葉っぱを見ているから。こういう「目線」で、敵に対峙しなさい、というような考え方なんだそうだ。 「実際に敵に対すると、相手のまばたきや、竹刀の微妙な動き、足さばき、など、気になる事が一杯あります。どれかに注視すると、相手の「小手先」のフェイントに引っかかり易くなります」と。

 小手先にとらわれず全体を見ること。
 そして、出来上がりをイメージすること。
 そして、1回じゃぜんぜんわからないから、何度も生けてみること。

 そうやって、「あーきれい」と思える花が飾れるようになったら。いいなぁ。

 花の世界にちょっと触れた。もっと上手くなりたいと思いました。

○ ドゥジエムさんの花のレッスン 詳しくはこちら

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