楽しい勉強【サイエンス】

2016年5月 6日 (金)

住宅展示場でサイエンスカフェ@大阪

 先日、大阪・万博公園の住宅展示場にて開催された「サイエンスカフェ」に聴き手としてお声がけいただき、参加してきた。

Img_5085_2

 ゴールデンウイーク真っ最中の住宅展示場でサイエンスカフェ?
 アンパンマンショーじゃなくて??

 そのあまりに最先端な感じにくらっと来たが、
 広大理学部時代からお世話になっている寺田健太郎先生に声をかけていただいたので、二つ返事でお受けする。

 寺田先生が広大から大阪大学に移られて4年。
 送別会で「いつか大阪にもファシリに来てください」と言っていただいた。

 だけどほら、大阪には芸達者でキレキレの方が山ほどおられるであろう。
 幼少の頃から吉本新喜劇の英才教育を受けている。
 とても寺本はかなうまい。

 寺田先生はきっと研究にもアウトリーチにも邁進され
 素晴らしい大阪サイエンスカフェワールドを築きあげられるにちがいない。
 遠く広島からご活躍をお祈りしております・・・
 とさみしく思ったものだった。

 4年、
 研究にもアウトリーチにも邁進されているには違いないが
 どうも大阪のサイエンスカフェでは「先生一人しゃべり」が多いらしい。
 偉い先生にツッコミいれるなんて恐れ多いから〜と先生のお話を伺い、終了後にボッコボコに質問攻めにするというのが大阪スタイルのようだった。

 そして今回、万博公園abcハウジングでのサイエンスカフェ企画が走り出した時、広大から龍谷大学に移られた古本強先生との2本立て、さらに、広島から寺本をファシリテーターとして呼ぶ
 という提案を主催運営の方にされた。

 「やっと旅費お支払いできる企画ができました。来てください」
 
 うれしかったですね。
 それと同時に、「えらいこっちゃ・・・」と震えた。

 わざわざ、どこの馬の骨ともわからんファシリテーターを
 たっかい旅費はらって連れてきて、ほんでコレかい!
 という悪夢を見そうだった。

 寺田先生と古本先生のお話は何度か広島でも聞いている。
 内容や流れは事前に教えてもらえるが、打ち合わせなしのぶっつけ本番だ。

 どんなお客が来るんだ? どんな雰囲気なんだ??
 お客も大阪人、ヘタな大阪弁でも使おうものなら火だるまにされる・・・

 できる準備も特になく、ユーチューブで「サイエンスカフェ ファシリテーター」とかで検索してよそのサイエンスカフェを見たりなんかして。
 これはよくない準備である。
 茶会にしろなんにしろ、よくできた人のものを見ちゃうと、役立つどころかがっくり落ち込んで終わる。

 だけど、意外だった。
 ちゃんと対話かけあいをするファシリテーターがいるサイエンスカフェって案外少なかった。
 (動画に記録されてないだけかもしんないけど)
 北海道大学のサイエンスカフェで、大変おだやかにいい声で合いの手を入れる男性ファシリがおられて、なんというか深夜のAMラジオを聴いてるように心地よかった。いろんなスタイルがあるんだなぁ。

 「広大のサイエンスカフェはかなり特殊ですよ」と寺田先生が言っていた意味がわかってきた。

 なんだか、素直に、
 その場の空気に合わせて話をすればいいのかな
 そんなふうに力を抜くことだけを考えて、がちがちに緊張しながら新幹線に乗った。

 快晴の住宅展示場は家族連れで賑わっていた。
 長蛇の列が会場からはみ出しており、おいおいサイエンスカフェ待ちか!?
 と思ったらトミカのおもちゃプレゼント待ちの列だった。

 「寺本さん!」 懐かしい笑顔が迎えてくださった。
 4年ぶりにお目にかかる古本先生もお変わりなく、4年も経ったような気がしなかった。

 会場を確認し、ちょっとだけ内容を確認し、本番を迎える。
 プロのイベント運営スタッフのきびきび気持ちの良い準備進行、さすがだなぁ。

 寺田先生のお話は、相変わらず面白く、さらにわかりやすく熟達されていた。
 これはヘタなファシリテーターはいらないや。
 だけど、寺田先生の「寺本ツッコんでこいや」という期待に満ちた間合いを感じ、気持ちよく合いの手を入れることができた。

 参加者も熱心にメモを取り、笑い、頭をひねり、「知ることの面白さ」を堪能されたようだった。

 午前終了、手焼きオムライスの屋台の列に並びながら先生方とお話しする。
 前の子どもの手から風船がはなれて飛んで行く。
 アコーディオンやギターの生演奏が通り過ぎ、青空の住宅展示場は夢のようだった。

 午後の部、古本先生のお話が始まる頃には不思議と人がまばらとなるのが展示場時間だそうだ。
 もったいない! こんなおもろい話、聞かないと損しまっせ!
 観客ひとりだろうが、5000人だろうが、やることは同じ。
 むしろたった一人の人生変えるような時間にしてやる、そう思いながら話を聞いた。

 古本先生の最新の研究、「すわ、ノーベル賞か!?」という研究、その思いの強さと根気とおもしろさに脱帽した。すごいわ。
 だから普通に話を聞いても十分面白いので、ファシリなんかおまけなんだけど、寺本がちゃちゃを入れると興に乗り、グルーブのようなものが生まれる感じがさすがだった。


 無事に終了し、「寺田先生のラボがみたいー」ということになり大阪大学へ。


Img_5090


 ああ!探偵ナイトスクープに出とった部屋じゃ〜!
 最先端の分析機の仕組みについて説明する寺田先生。贅沢最先端サイエンストーク。

 そのマシンの前で記念撮影。

Img_5091

 その晩は、4年間のブランクというか、それぞれに流れていた時間を思う話をした。

 研究者は、当たり前かもしれないけど、ずーーーーっとそのことを考えている。
 論文を書くに至るまでに、これはおもろいか、どうしたらおもろなるのか
 ずーーーーっと考える時間がゆっくりと育てていく。
 こうして寺本がぼんやりおやつを食べてるときも、きっと先生方はずっとおもろいほうへ考えている。

 まだまだ、これからですよ、という熱い研究者魂に触れたような気がした。


 広大サイエンスカフェの司会者を長らくさせてもらってきた寺本だが、個人的にサイエンスカフェをしようと企む機会が何度かあった。
 サイエンスバブだったり、「重力茶会」(重力波人類初検出記念)だったり、そのたびに「会場がないなあ」と思った。

 大阪にはグランフロント大阪があって、仙台にはメディアテークがある。
 大学と行政と民間がうまく力とお金を出し合って(るように見える)サイエンスと市民が行き来できる場が整っている。

 いいなぁ、なんで広島大学はそれをしないんだろうか。
 とか思いいろいろ偉い人たちにメールを出したりしてみたけれど、そうはなかなか問屋がおろさない。

 そしてハッと気がついたら、寺本には科学のバックグラウンドがない。
 科学をもっと楽しく!という強い動機がそもそもないのだった。
 ちょっととまどってしまった。

 そんな話を飲みながらしたら
 「寺本さんはスナリでしょ、スナリにはなんにも特別な才能はないんです、ただ、なにかとなにかをうまく結びつけることだけ得意なんですって言ってたじゃないですか。そこに存在理由があるじゃないですか」
 と喝を入れられた。

サイエンスカフェの司会を寺本に託された理由を思い出した。

 お茶でも科学でも広告でも
 自分に猛烈に動機があるとかそんなのは関係なく
 ああもったいない、
 こんなにおもしろいのに、こんなに素晴らしいのに
 それを知らない人に伝えたい。
 そういう「おせっかい」だけで駆動しているのであった。

「ああ、こんなにおもろいのになぁ」「なんでわかってもらわれへんのやろ」とお嘆きの方、
 寺本のあつかましさをどうかご利用ください。

 もっと世の中の役に立たなくちゃいけないね、
 と帰りの新幹線でつくづく思ったのであった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年8月 4日 (月)

宇宙という書物は数学の言葉で書かれている。

広島大学理学研究科サイエンスカフェ「太陽系ができるまで〜100億年の物語」でした。

Bt_rrthccae60hl

昨年の12月、「星と元素と宮沢賢治」のときに、大阪大学の赤い彗星こと寺田健太郎先生が飛び入り参加、「宇宙の元素はどうやってできたのか」の話をされた。

その感想をツイッターでつぶやきあっていると
「私はいつかジョイントをやってみたい。宇宙のはじまりから太陽系ができるまで、、、間がかなりとぶけど」とつぶやかれたのが高橋徹先生。

寺田先生「いいですね!いいですね! 実は私もそう思っていたところです!前半は高橋先生にビッグバン(素粒子、H,He,Liまでの元素合成)をお願いし、後半、私が銀河の化学進化(星の進化の元素合成リベンジ+大規模物質循環)〜太陽系の誕生まで100億年をカバーというのはすぐにでもできそうな企画ですね」

高橋先生「うっ、私はH,He,Liよりもはるか手前(核子もまだできてないころ)が本業としてのカバー範囲ですが、どうして宇宙にHがこんなに残ったのかなど、興味があるのでやってみようかなと思います」

寺田先生「了解です。高橋先生にHまで作っていただけると、あとは核融合と中性子捕獲反応でUまで作ります」

隅谷先生「神様の会話のようです・・・」

ということで日程調整に入り、今回の開催に至ったのでした。


告知をしてみてびっくり、定員の40名をはるかに越えて、120人あまりの方にお申し込みいただいた。
午後だけではとっても収容しきれないので、午前中に理学融合センターにてスピンオフサイエンスカフェを開催することになりました。

せっかくの機会なので、ファシリテーターを学生さんにやってもらおうということに。
そもそも理学部の院生さんですから、高校物理のテストを毎回3点で提出していた寺本とつくりがちがう。
科学の素養がある人の疑問とか質問ってどんなんだろう、と興味深く楽しみにしていました。

OさんもKさんも上手でした。寺本の出る幕なかった。会場からも活発に質問が出て、科学者と気軽に語り合える本来のサイエンスカフェに近かったんじゃないかと思いました。

寺田先生は途中、ホワイトボードに向かって数式をわーっと書き、答えを導き出していた。
科学者はああやってものを考えるんだなぁ。
スライドにもたっくさん数式がでてきた。しかしさっぱりわからない。

午後のファシリ(司会)をする寺本はあわてて寺田先生に言った。
先生、数式が難しくてさっぱりわかりません。
この模様とか、意味がわからん。
「え!これ? これは・・・と比例するっていう意味なんだけど・・・じゃあこれなら分かる?」
と = や ÷ という見慣れた記号に書き直してくれた。
まー それならなんとか・・・

「でもね、言葉で説明するより、数式が一目瞭然というか、あらゆることがこの数式で記述できるんですよ、それってとってもエレガントじゃないですか!」

ははぁ・・・エレガント・・・・イエス。

数学というよりも算数で挫折した寺本には、足し算割り算の数式ですらしんどいものがあるのだが、
「ほらね、Heの4がぺたぺたひっついていくっていう式ですよ。だから質量数4の倍数の元素が圧倒的に多いんです」
あ、なるほどー。毛嫌いして、理解しようと見てなかったんだなぁ。


午後からのサイエンスカフェは寺本が100億年をナビゲート。

高橋先生は、まるで物理演算されているかのようなパワーポイントのアニメーションを駆使し、どんな本を読んでも2秒で眠くなる素粒子の世界を、わかりやすく、イメージしやすく説明してくれました。

10のマイナス36乗秒とかいう非日常な世界。
「はいここから水素原子ができるまで38万年待ちます」・・・タイムスケールが・・・くらくらする。

そして「水兵リーベ」のリーくらいまでできた「ビッグバン元素合成」から、寺田先生にバトンタッチ。

Liより重い元素は星の中で作られる。だけど、星の質量でできる元素がほぼ決まってる。
F鉄より重い元素は「中性子捕獲反応」でできる。
100秒くらいの間に、パクパクパクパク〜〜〜っと中性子を食べて、ぼこぼこぼこぼこ〜〜と斜め45度に崩壊して新しい元素になる。
「つまり、出会い系サイトみたいなものでね、中性子がいっぱいあると出会いやすいわけです」
という寺田先生捨て身の比喩で理解も一挙に促進。

わたしたちの太陽系が満を持してできあがったのでした。おもしろかった。


それにしても。

「宇宙という書物は数学の言葉で書かれている」
と、ガリレオは言ったらしいけど、そうなんだなぁ。

反省会(打ち上げ)で、先生同士が好き勝手に興味ある研究の話するところが聞いてみたいです、と言ったら、
「それこそμだのΔだのψだの、記号数式だらけの会話ですよ」と高橋先生。

科学者の日常言語はそういう異世界語なんだ。サイエンスカフェでは、わかりやすい日本語に翻訳してしゃべってくれているんだ。

だけど、科学者自身が最も興味のある、これが不思議、これが面白い、というのは、ほんとはわかりやすい日本語には翻訳しがたいものなのかもしれない。
そこには、数学がわからないと迫れない。

翌日、息子とぽてぽて歩きながら話した。

「かーちゃんさー、算数だいきらいだったんだよ。計算は電卓ですりゃあいいじゃないかと思ってたんだよ。だけど、算数できないと、わからない美しさってのがあったんだ。
ちょびはさー、算数とくいなんだからさ、そういう美しさがわかるようになったらいいよね」

「ふーん、算数のうつくしさ・・・
 パパちゃんはそのうつくしさわかるの?」

「パパちゃんは美容師さんだから、ちがう美しさを知ってる。鋏や指先で美しさをつくりだしてる。
 かーちゃんは・・・」

「お茶でしょ、お茶がうつくしいんでしょ」

「あ、うん。そうだね。お茶の中に美しさを見てるかもしれないねぇ。
 科学者が見ている美しさ、かーちゃんも見てみたかったなぁ」

数学は美しい、というのはよく聞く。

なんのご縁か、
この11月に「サイエンスアゴラ」のシンポジウムで、数理科学者のお話の聞き手をさせていただくことになった。

にがて、とか、わからん、とか
逃げてないで勉強しろという、神様の宿題なんだろうと思う。


| | コメント (2)

2013年12月31日 (火)

人生にサイエンスがあれば

 今年ももうすぐ終わります。

 振り返ってみて、思い出されることはたくさんありますが、今年中に書いておきたかったので。

 11/16(土)の広島大学理学研究科サイエンスカフェ。
 「秋 〜くだものの科学〜」

 どのサイエンスカフェも分野も内容も違うから、門前の文系小僧は大変なんですけど、毎度とっても楽しみな仕事なのです。
 そのなかでも、この11月のサイエンスカフェはちょっと特別だった。

 Img_7693

 スピーカーの泉先生を囲んでのリハーサル。

Img_2569

「さて、柿とりんご、実がなるところは同じ部位か、ちがうか。ここ、調べて説明してね」

 生物専攻のTさんに無茶振り。「・・・調べときます・・・」(当日はTさんが参加できずSさんピンチヒッター。とっても上手に説明してくれました)

「ということで、Iさん、ベークライトの合成実験、説明しながらやってね」
「・・・・はい・・・・」
 今度は化学専攻のIさんに無茶振りだ。 本番まで1週間ちょっとだけどがんばれ。


 さて当日。

Img_2985

 白衣を着たIさんの手もと資料にはびっしりと書き込みがあった。たくさん考えて準備したのでしょう。




 理学融合センターから会場のマーメイドカフェへの移動中、泉先生に聞いておかなくてはいけないことがあった。

 「先生、あの、ご病気のこと、みなさんにお話ししますか」
 「はい、そうしたいと思います。」

 泉先生は、ちょうど1年ほど前、ご病気で倒れられたのだった。
 お見舞いに行った時のことをよく覚えている。(そのときの様子はこちら

 ベッドに横になったままの泉先生。それでもノートパソコンを開いて見せていろいろ話して聞かせてくれた。言葉にならずもどかしく、心拍が高ぶって側の機械からアラームが鳴った。


 「あのとき、寺田先生の娘さんがお見舞いに来てくれて、
  泉先生、また元気になってはやくサイエンスカフェやってくださいねって。
 今日サイエンスカフェやろうと思ったのは、彼女がそう言ってくれたからなんです。」

 そうでしたか・・・

 あれから1年。今日は泉先生の復帰戦だ。

 
 1455156_423562804433716_1911086271_

 ふさわしい好日。ちょっと泣きそうだったが、泣いてる場合じゃないこれから本番だ。


1374772_423562694433727_1069265897_

 それにしても今回は学生さんたちの活躍が目覚ましかった。

 実験器具の準備、段取り、スマートな動き。
 説明も上手にできた。実験もがんばった。

 みんなで赤と青の手袋をはめて手をつなぎ、「蜂にさされたら渋柿を塗るといい」という民間療法の科学的理由の説明をするシーンはとってもわかりやすかった。

 ここから、分野を越えた学生さんたち同士の集いにまで発展していった。サイエンスカフェの功名であります。

 来場者の方々からは活発に質問が出たし、リアクションも大きくて楽しそうだった。



 そして泉先生は病気だったと話さないとわからないくらいだった。

 高橋先生も 中田先生も 小林先生も復帰戦を見に来られた。
 「ぜんぜん大丈夫やったやん」と。みんなにこにこ見ていた。


 糖にあるアルデヒドってやつが危険なんですよね、という話から、
 「それを知っていながら自分が病気をしてしまいました。」と。

 入院中にお見舞いに来てくださった先生方とディスカッションしたこと。
 分野の違う先生たちと話すことがとても刺激的だったこと。
 リハビリとして看護士さんたちに講義をしていたこと。
 看護士さんたちに先生教えて、あれはどういうことなんですかと頼りにされたこと。
 待合室にあった雑誌をたまたま見て、そこに書いてあることがウソだと思ったことから、大学病院と共同で今論文書いているところです、と。

 「病気しなかったら、そんなことにはなっていませんでした。」

 生死をさまよっていたころから1年。泉先生の原動力はサイエンスだった。

 転んでもタダでは起きない、むしろ倍返しの科学者魂。

 今回はくだものの科学だけじゃなくて、人生の科学を学んだ気がします。
 ありがとうございました。

 物理、化学、生物、地球惑星、宇宙・・・まったく興味も縁もなかったわたしの人生が、こうしてサイエンスに寄り添うご縁をいただいた。
 だからといって科学的知識や造詣に深くなったわけじゃないけど、「知らない」んだということを知れた。新しい目が開いた。

 インチキ、デマ、誤解、まやかし、
 不安や無知の心のすき間に入ってくる闇を払えるように、人生にサイエンスが必要だと思う。

| | コメント (0)

2013年6月27日 (木)

『爆笑サイエンスカフェ⑧』【生きる科学力】

8
2013年6月13日(木)付中国新聞朝刊・文化面掲載
※中国新聞社に転載の許諾を得ています。

ーーーーーーーーーーーーーー
(下記は自分の中での最終版。掲載文章とは若干ちがいます)


『爆笑サイエンスカフェ⑧』 【生きる科学力】 寺本紫織

 足掛け5年もサイエンスカフェのファシリテーターをやっていれば、門前の小僧並みに少しは科学が語れるようになったのではと思われるかもしれない。それは華麗なる誤解であって、毎回未知の内容にびっくりしたり困惑したりの繰り返しだ。サイエンスはとんでもなく広くて深い。

 しかし、今までなんとなく敬遠していた科学の世界だったが、それは人生の損失だったかもと思うようになった。ええっ?知らなかった、へぇ〜実はこうなっていたのかと、ひとつ知れば新しい目が開いて、仕事の、暮しの、いろんな場面が今までと違って見えた。自分がこの歳で進化する、それは新鮮な歓びだった。

 普段の生活は、ボタンひとつ、クリックひとつで済む。そこにどんなサイエンスやテクノロジーがあるのか知らなくても、快適に暮らせる便利な世の中だ。だけど、とくに東日本大震災からこっち、科学と無縁で暮らすことができなくなったなぁと感じる。だれかよくわかる人に任せておけば大丈夫、な世界ではなくなった。専門知識を身につけるまで至らなくても、だれがまともなことを言っているのか、これはうさんくさいぞとか、“嗅ぎ分ける力”が必要だ。そういうのも科学的なセンスだろう。

 サイエンスに関係しない人生なんかない。理系文系を越えて、生きて行くのに欠かせない力だと思う。だったら、楽しみながら親しみたいですよね。
 ということで次回サイエンスカフェは「科学と芸術のカエル三昧〜新種発見、そして遺伝子音楽」スペシャル版ですよ。6月15日(土)中国新聞ホールにて開催。
 ぜひ、一度、お越しください! 
http://home.hiroshima-u.ac.jp/sciyugo/scicafe/
【おわり】

ーーーーーーーーーーーーーー


 この、第22回サイエンスカフェ「科学と芸術のカエル三昧〜新種発見、そして遺伝子音楽」話し手の三浦先生に

「毎回、楽しませて頂きました。
 途中から少し気になっていたのは、
 各先生方の紹介はよいのですが、
 このまま、緑地帯もファシリテーター寺本で終るのだろうか、
 という点でした。
 なにせ、寺本さんの緑地帯ですからね。

 でも、最後にご自身の思想がしっかり聞けてよかったです。
 ご苦労様でした。」

 とメールをいただいた。

 サイエンスカフェ、3ヶ月に1度ペースで、気がつけば5年もやってるんだなぁ。
 いろんな思いが走馬灯のように・・・
 
 寺本をおもしろがって、それは才能ですと認めてくれて、引き立ててくださった先生方のおかげで、「そうか」と自分自身が腑に落ちた。そして、瞬間的に、なんで?と思ったことをその場で出す瞬発力を磨こうと思った。
 
 おもしろがってもらえたらいいなぁ、と思う。
 ありがとうございました。

9


| | コメント (0)

2013年6月26日 (水)

『爆笑サイエンスカフェ⑦』【進化するカフェ】

7

2013年6月12日(水)付中国新聞朝刊・文化面掲載
※中国新聞社に転載の許諾を得ています。

ーーーーーーーーーーーーーー
(下記は自分の中での最終版。掲載文章とは若干ちがいます)


『爆笑サイエンスカフェ ⑦』 【進化するカフェ】  寺本紫織

 10人の科学者がいれば10の研究スタイルがある。なかでも素粒子物理学者の高橋徹先生はいつも冷静、かつ、客観的判断が際立っていた。

 サイエンスカフェ終了後は妙な高揚感があり万々歳なのだが、高橋先生は「来場者目線」で見逃さない。入念な下準備、見え方への心配り、今まで気付かなかった不具合が改善され、「出し物」としての完成度に磨きがかかってきた。

 さらに、ツイッターでの実況中継や、クリッカーという来場者の回答その場で集計システムの導入など、新し物好きな先生のおかげでどんどん進化している。

 「ヒッグスらしき素粒子発見」という大ニュースが飛び込んできた時のこと。いつもは冷静な高橋先生も血湧き肉踊った一人だった。「緊急カフェやりましょう!」
ということで広島市中区の「銀山ベース」さんご協力のもと電光石火の勢いで「サイエンスパブ」開催。肩寄せ合うように集まった人々が素粒子話で盛り上がった。

 さらに「ちっちゃいサイエンスカフェ」を西条「くぐり門珈琲」で開いた。あの高橋先生がなんと手ぶら。パソコンも資料もなし。珈琲のうまい店に科学者がふらっとやってきて、そこに居合わせた市民とざっくばらんな会話が始まる、そういう本来のサイエンスカフェみたいだ。
 
 筋なしでも会話はどんどんドライブし、参加者も次々と質問。素粒子の世界は超難解だ。すぐ人類の謎にぶちあたる。だけど、わからない雲の切れ間から「あ!なるほど!」が差し込む瞬間もあるのだ。

 高橋先生はとても楽しそうに、豊かな言葉で話し続けた。小さなテーブルを囲んだ人々が広げた想像力は熱を持った。サイエンスの対話を堪能した2時間となった。

| | コメント (0)

2013年6月25日 (火)

『爆笑サイエンスカフェ⑥』【科学はライブ!】 

6

2013年6月11日(火)付中国新聞朝刊・文化面掲載
※中国新聞社に転載の許諾を得ています。

ーーーーーーーーーーーーーー
(下記は自分の中での最終版。掲載文章とは若干ちがいます)


『爆笑サイエンスカフェ ⑥』 【科学はライブ!】 寺本紫織

 「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられるイグノーベル賞を2度も受賞した小林亮先生が「計算するアメーバの不思議」と題して話した第19回のときのこと。下見の際、床のケーブルや見え方に的確な指示を出す先生にスタッフは目を丸めた。「そんなん、ライブやってたら当たり前やん」そう、小林先生はギターを抱えた科学者なのだった。

 各地で何度もこのネタで話し、どこで観客の笑いを誘うか、まさに計算された講演はお手の物だったが、「今回はピン芸じゃないし、落語家が漫才やるようなもんやで」そうですねぇ・・・「まあ、なるようになるやろ、やってみよか」ということで本番。

 予定していた会場がアクシデントで急きょ大会議室に変更になったが、スタッフの適応力により、長机にパパッとテーブルクロスが掛けられ、たちまち心地よい雰囲気になった。多くの方が来場し、飲み物片手にくつろいでいる。さあ、楽しいサイエンスの時間ですよ。

 スライドを見ながら話し始めると、先生が寺本の言葉をよく聞いてくれているのに気がついた。いつもなら噛み砕いて説明するところを、ポイッと投げて寺本に拾わせた。二人の掛け合いがいい感じでリズムを刻みはじめた時、来場者の興味がぐっと前のめりになるのを感じた。

 後日「ここでこうきてほしいなぁ、というところで必ず期待通りに絡んでもらえて、とても調子がよかったです。また次のカフェが楽しいライブになることを祈っています」とメールをいただいた。あまりに調子がよくて、とうとう小林先生とほんとのバンドを組むことになったのだが、それはまた別の話。

| | コメント (0)

2013年6月24日 (月)

『爆笑サイエンスカフェ⑤』【知りたいがスパーク】 

5
2013年6月8日(土)付中国新聞朝刊・文化面掲載
※中国新聞社に転載の許諾を得ています。

ーーーーーーーーーーーーーー
(下記は自分の中での最終版。掲載文章とは若干ちがいます)


『爆笑サイエンスカフェ⑤』 【知りたいがスパーク】  寺本紫織

 第17回「サイエンススコープ〜科学者が見ている世界」では異分野の科学者がリレーで話をした。
極小の素粒子から極大の宇宙までを2時間で旅する。どこまで話をして次の話者に渡すのか、6人の科学者が集って打ち合わせをした。

 広島大学理学研究科には6つの研究分野がある。聞けば、会議以外で他分野の教員と顔を合わせる機会はほとんどなかったが、サイエンスカフェに集うようになってある変化が生まれたという。

 今回もそれがスパークした。各先生は自分の研究分野以外は実は暗いと白状しながらも、ほかの科学者の話に触発されて疑問がむくむく広がり、新しい知見を得ようと興味の触手をぎゅぎゅ〜んと伸ばすのだ。ある先生はアイデアノートを引っ張り出し、違う角度から照らされて気付いたヒントをざざざーっと書き留めていた。こういうときの科学者の貪欲さ、超かっこいい。みんな夢中で話し、お宝ムダ話がいっぱいころがった。ああ、「サイエンスカフェマラソン」って感じでずーっと聞いていたい。絶対おもしろい。

 こんな会話もあった。「それにしても、全宇宙のたった5%しか解明されてないなんて、あと少しで全部わかる!と思っていた科学者はがっかりしたでしょうねぇ。私なら宿題やっと終わった!と思ってドリルがもう1冊残ってたりなんかしたら絶望しますけど」「原子を見つけただけで世界の謎がとけると思っていた時代から、科学なんてそれの繰り返しですよ」
うーん、科学の進歩ってのは「わからない」領域をひろげる歴史だったんだなぁ。「ハテナは、最高の歓びである!ですよ」と先生はにっこりと笑った。

| | コメント (0)

2013年6月23日 (日)

『爆笑サイエンスカフェ④』【前人未到をのぞく】

4
2013年6月7日(金)付中国新聞朝刊・文化面掲載
※中国新聞社に転載の許諾を得ています。

ーーーーーーーーーーーーーー
(下記は自分の中での最終版。掲載文章とは若干ちがいます)


『爆笑サイエンスカフェ ④』 【前人未到をのぞく】 寺本紫織

 サイエンスカフェの来場者は、科学への興味が強く知識も深い。と思ったら、中学校で習った理科さえすっかり忘れてる自分みたいな方も結構おられる。小学生から80歳過ぎまで実に様々。だから理解度もぜんぜん一様ではないが、できれば多くの方に「おもしろかった!」と帰っていただきたい。

 難しい部分を削った「お茶の間科学」も確かに楽しい。でも、その「難しい部分」こそ最先端科学の醍醐味。「なんかよくわからんけど凄い」という感動もあるのだ。

 それは、第11回「葉緑体にあいた穴」で古本強先生が世界初の成果を出した瞬間の話を聞いた時だった。「葉緑体の包膜に存在するピルビン酸輸送体分子」というさっぱりわからない話を「え、ATP知らん?そっからか・・・」と絶句しつつ、熱心に丁寧に順を追ってわかるように話してくれた。そんなん常識やということをホンマなんやろかと疑い、自分の考えを信じて10年。その実験結果が出たとき、歓喜のあまり叫びましたか?

 「いや、それまでの百ある実験の失敗の後だけに、まずこれはウソやろうと思いましたね。あと3回やってこの結果だったらホンマやと思おうと思って、2回目、やっぱりでた、3回目、大丈夫、4回目・・・・ぽろっと涙がひとすじ流れました。案外、静かなもんなんやなーって思いましたね」

 科学者のエネルギー源は「知りたいという欲求と、知ることで得られる感動、ワクワク感」だという。まだ誰も知らない世界を、初めて見たときのゾクゾクするような感覚、生きていてよかったと思うこと。科学者の語りに伴走するサイエンスカフェでは、そういうのを肌で感じることができる。

| | コメント (0)

2013年6月22日 (土)

『爆笑サイエンスカフェ③』【爆笑の化学変化】

3
2013年6月6日(木)付中国新聞朝刊・文化面掲載
※中国新聞社に転載の許諾を得ています。

ーーーーーーーーーーーーーー
(下記は自分の中での最終版。掲載文章とは若干ちがいます)


『爆笑サイエンスカフェ③』 【爆笑の化学変化】 寺本紫織

 サイエンスカフェのファシリテーターを引き受けたのはよいが、ファシリテーターって何?というところからのスタートだった。ファシリテーターとは理解促進者、つまり司会より一歩踏み込んだ役割を担うものらしい。

 これがなかなか難しい。

 そもそも科学者は、国内外の論文発表や講演会などで持ちネタを話すのは慣れている。資料や写真をスライドで示し、立て板に水で話されると、話の腰を折るのもなぁと、まるでテニスの観客のように首を左右に振って終わった回もあった。

 寺本をスカウトした寺田先生が第10回「地球誕生の秘密」について話した時のこと。ふんふんと調子よく聞いていたが、だんだん腑に落ちなくなってきて、疑問が口をついて出た。何を尋ねたか覚えてないが、ふつうの大人なら恥ずかしくて聞けないようなことだったと思う。あまりに唐突で虚を突かれた先生は絶句した。答えに困ってうーんとうなる科学者とのやりとりに、会場からどっと笑いが起こった。その瞬間「姿勢を正してえらい先生の話をありがたく聞く」という感じから「なにこれおもしろい」に雰囲気ががらっと変わったのだ。

 「寺本さんは科学者がなんぼのもんじゃいと思ってるでしょう、そこがいいんです。もっと突っ込んで聞いてこそですよ」と寺田先生は言った。めっそうもない。人生を捧げて研究に邁進する科学者には、本当に尊敬する。だけど、知りたい気持ちと伝えたい想いに上下の差はなく、いつも等しく向き合えると思う。だったら寺本はその間に立ち、ユーモアと好奇心で「難しくってわけわからん」に斬り込み、「へぇ〜、おもしろい!」に変えたいと思う。

| | コメント (0)

2013年6月21日 (金)

『爆笑サイエンスカフェ②』【スカウトされる】

2
2013年6月5日(水)付中国新聞朝刊・文化面掲載
※中国新聞社に転載の許諾を得ています。


ーーーーーーーー
(下記は自分の中での最終版。掲載文章とは若干ちがいます)


『爆笑サイエンスカフェ②』【スカウトされる】 寺本紫織

 数年前、広島大学の広報の仕事をしていた時のこと。何千人といる教員を学内外に順次紹介していく広報誌を発行することになった。

 その取材で、理学研究科のある先生と出会う。月の進化モデルの再考を促す重要な発見をしたとして、文部科学大臣表彰「科学技術賞」を受賞された寺田健太郎先生だ。最先端の研究についてインタビューした。

 今まで興味も接点もないはずのサイエンスの話が、それはそれは面白かった。へえ!すごい、先生それは一体何なんですか、どうしてなんですか、小学生のような好奇心を弾ませて聞いた。難しい言葉がわからなければ、それはつまり例えばですね、と言い換えてもらって理解できた。知らないことを知るってのはこんなにワクワクするものなのか。

 先生がサイエンスの魅力に心を奪われたのは、高校の物理の授業だったという。「ボールを投げたりリンゴが落ちたりってことと、太陽の周りを回る惑星や彗星が全く同じ物理法則で支配されているなんて、なんて美しいんだ!って感動したんです。宇宙空間でたまたま地球ができ、地球にだけ海が長時間存在し生命が栄えてきた。ね、不思議でしょう、だから太陽系の起源と進化の謎を解き明かしたいんです」と。

 知ることで感動し、それが人生の機動力になるんだねぇ、すごいなぁと思いながら、「あの先生、太陽系の中に銀河ってあるんでしたっけ?」と尋ねた。頭を抱えて椅子からずり落ちる先生が見えた。

 後日、この寺田先生からサイエンスカフェの司会をしてみないかとスカウトされたのだった。常識を疑うのが生業の科学者とはいえ、こんなの起用するなんて度胸あるよねと思った。 


| | コメント (0)