住宅展示場でサイエンスカフェ@大阪
先日、大阪・万博公園の住宅展示場にて開催された「サイエンスカフェ」に聴き手としてお声がけいただき、参加してきた。
ゴールデンウイーク真っ最中の住宅展示場でサイエンスカフェ?
アンパンマンショーじゃなくて??
そのあまりに最先端な感じにくらっと来たが、
広大理学部時代からお世話になっている寺田健太郎先生に声をかけていただいたので、二つ返事でお受けする。
寺田先生が広大から大阪大学に移られて4年。
送別会で「いつか大阪にもファシリに来てください」と言っていただいた。
だけどほら、大阪には芸達者でキレキレの方が山ほどおられるであろう。
幼少の頃から吉本新喜劇の英才教育を受けている。
とても寺本はかなうまい。
寺田先生はきっと研究にもアウトリーチにも邁進され
素晴らしい大阪サイエンスカフェワールドを築きあげられるにちがいない。
遠く広島からご活躍をお祈りしております・・・
とさみしく思ったものだった。
4年、
研究にもアウトリーチにも邁進されているには違いないが
どうも大阪のサイエンスカフェでは「先生一人しゃべり」が多いらしい。
偉い先生にツッコミいれるなんて恐れ多いから〜と先生のお話を伺い、終了後にボッコボコに質問攻めにするというのが大阪スタイルのようだった。
そして今回、万博公園abcハウジングでのサイエンスカフェ企画が走り出した時、広大から龍谷大学に移られた古本強先生との2本立て、さらに、広島から寺本をファシリテーターとして呼ぶ
という提案を主催運営の方にされた。
「やっと旅費お支払いできる企画ができました。来てください」
うれしかったですね。
それと同時に、「えらいこっちゃ・・・」と震えた。
わざわざ、どこの馬の骨ともわからんファシリテーターを
たっかい旅費はらって連れてきて、ほんでコレかい!
という悪夢を見そうだった。
寺田先生と古本先生のお話は何度か広島でも聞いている。
内容や流れは事前に教えてもらえるが、打ち合わせなしのぶっつけ本番だ。
どんなお客が来るんだ? どんな雰囲気なんだ??
お客も大阪人、ヘタな大阪弁でも使おうものなら火だるまにされる・・・
できる準備も特になく、ユーチューブで「サイエンスカフェ ファシリテーター」とかで検索してよそのサイエンスカフェを見たりなんかして。
これはよくない準備である。
茶会にしろなんにしろ、よくできた人のものを見ちゃうと、役立つどころかがっくり落ち込んで終わる。
だけど、意外だった。
ちゃんと対話かけあいをするファシリテーターがいるサイエンスカフェって案外少なかった。
(動画に記録されてないだけかもしんないけど)
北海道大学のサイエンスカフェで、大変おだやかにいい声で合いの手を入れる男性ファシリがおられて、なんというか深夜のAMラジオを聴いてるように心地よかった。いろんなスタイルがあるんだなぁ。
「広大のサイエンスカフェはかなり特殊ですよ」と寺田先生が言っていた意味がわかってきた。
なんだか、素直に、
その場の空気に合わせて話をすればいいのかな
そんなふうに力を抜くことだけを考えて、がちがちに緊張しながら新幹線に乗った。
快晴の住宅展示場は家族連れで賑わっていた。
長蛇の列が会場からはみ出しており、おいおいサイエンスカフェ待ちか!?
と思ったらトミカのおもちゃプレゼント待ちの列だった。
「寺本さん!」 懐かしい笑顔が迎えてくださった。
4年ぶりにお目にかかる古本先生もお変わりなく、4年も経ったような気がしなかった。
会場を確認し、ちょっとだけ内容を確認し、本番を迎える。
プロのイベント運営スタッフのきびきび気持ちの良い準備進行、さすがだなぁ。
寺田先生のお話は、相変わらず面白く、さらにわかりやすく熟達されていた。
これはヘタなファシリテーターはいらないや。
だけど、寺田先生の「寺本ツッコんでこいや」という期待に満ちた間合いを感じ、気持ちよく合いの手を入れることができた。
参加者も熱心にメモを取り、笑い、頭をひねり、「知ることの面白さ」を堪能されたようだった。
午前終了、手焼きオムライスの屋台の列に並びながら先生方とお話しする。
前の子どもの手から風船がはなれて飛んで行く。
アコーディオンやギターの生演奏が通り過ぎ、青空の住宅展示場は夢のようだった。
午後の部、古本先生のお話が始まる頃には不思議と人がまばらとなるのが展示場時間だそうだ。
もったいない! こんなおもろい話、聞かないと損しまっせ!
観客ひとりだろうが、5000人だろうが、やることは同じ。
むしろたった一人の人生変えるような時間にしてやる、そう思いながら話を聞いた。
古本先生の最新の研究、「すわ、ノーベル賞か!?」という研究、その思いの強さと根気とおもしろさに脱帽した。すごいわ。
だから普通に話を聞いても十分面白いので、ファシリなんかおまけなんだけど、寺本がちゃちゃを入れると興に乗り、グルーブのようなものが生まれる感じがさすがだった。
無事に終了し、「寺田先生のラボがみたいー」ということになり大阪大学へ。
ああ!探偵ナイトスクープに出とった部屋じゃ〜!
最先端の分析機の仕組みについて説明する寺田先生。贅沢最先端サイエンストーク。
そのマシンの前で記念撮影。
その晩は、4年間のブランクというか、それぞれに流れていた時間を思う話をした。
研究者は、当たり前かもしれないけど、ずーーーーっとそのことを考えている。
論文を書くに至るまでに、これはおもろいか、どうしたらおもろなるのか
ずーーーーっと考える時間がゆっくりと育てていく。
こうして寺本がぼんやりおやつを食べてるときも、きっと先生方はずっとおもろいほうへ考えている。
まだまだ、これからですよ、という熱い研究者魂に触れたような気がした。
広大サイエンスカフェの司会者を長らくさせてもらってきた寺本だが、個人的にサイエンスカフェをしようと企む機会が何度かあった。
サイエンスバブだったり、「重力茶会」(重力波人類初検出記念)だったり、そのたびに「会場がないなあ」と思った。
大阪にはグランフロント大阪があって、仙台にはメディアテークがある。
大学と行政と民間がうまく力とお金を出し合って(るように見える)サイエンスと市民が行き来できる場が整っている。
いいなぁ、なんで広島大学はそれをしないんだろうか。
とか思いいろいろ偉い人たちにメールを出したりしてみたけれど、そうはなかなか問屋がおろさない。
そしてハッと気がついたら、寺本には科学のバックグラウンドがない。
科学をもっと楽しく!という強い動機がそもそもないのだった。
ちょっととまどってしまった。
そんな話を飲みながらしたら
「寺本さんはスナリでしょ、スナリにはなんにも特別な才能はないんです、ただ、なにかとなにかをうまく結びつけることだけ得意なんですって言ってたじゃないですか。そこに存在理由があるじゃないですか」
と喝を入れられた。
サイエンスカフェの司会を寺本に託された理由を思い出した。
お茶でも科学でも広告でも
自分に猛烈に動機があるとかそんなのは関係なく
ああもったいない、
こんなにおもしろいのに、こんなに素晴らしいのに
それを知らない人に伝えたい。
そういう「おせっかい」だけで駆動しているのであった。
「ああ、こんなにおもろいのになぁ」「なんでわかってもらわれへんのやろ」とお嘆きの方、
寺本のあつかましさをどうかご利用ください。
もっと世の中の役に立たなくちゃいけないね、
と帰りの新幹線でつくづく思ったのであった。
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